■日本,情報収集能力不足響く
本日はノルウェーの次期主力戦車選定特集を掲載する予定でしたが、ウクライナ情勢が悪化した為に急遽この話題を考えてみる事とします。
ウクライナ危機はウクライナ有事へ、“ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻”がプーチン大統領21日の大統領令により開始されます。ただ、日本政府は情報収集に苦慮しているようで、共同通信は“政府、米ロ情報戦に苦慮-侵攻の有無、見極めきれず”という、アメリカの情報戦とロシアの情報戦の狭間にあり身動きが取れない様子を報道しました。
邦人救出作戦。ウクライナ有事となれば、ウクライナ国内の邦人保護を行う必要が生じ、特に民航機の運行が停止し邦人がウクライナ国内に取り残された場合には邦人輸送を実施しなければならない状況はあり得ます。ロシア軍が侵攻した場合でも日系住民への民族浄化までは考えられませんが、同じく邦人輸送を求められた昨年のアフガニスタンとは違う。
ウクライナ有事、昨年日本政府はアフガニスタンタリバン攻勢に際し、情報の見極めを誤った事で邦人保護への自衛隊派遣が後手に回りました、しかし幸いタリバンは邦人迫害を行っていません。一方でウクライナ有事では、軽歩兵主体のタリバンによる攻勢と異なり、多連装ロケットや戦車など重戦力が投入され、戦闘の規模が桁違いとなる懸念があります。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が事実上開始される、プーチン大統領がウクライナ領内へのロシア軍派遣を正式に命じた事で、従来の“国境周辺に大量のロシア軍が集結している”事を根拠として“推測として確実にロシア軍が侵攻する”という懸念から、“ロシアが大統領令によりウクライナへ侵攻する事を命じた事をテレビ演説”という段階となります。
プーチン大統領は21日、ウクライナ東部へのロシア軍進駐を命じた事を発表するテレビ演説を行いました。これはNHKはじめ各国メディアが報じています。プーチン大統領はウクライナ東部にある親ロシア系住民居住地域へ平和維持の名目でロシア軍を派遣すると述べた上で、ウクライナ東部二州においてウクライナ軍による停戦合意違反を非難しました。
ロシア政府はウクライナ東部のルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国をプーチン大統領による大統領令を以て国家承認した上で、この二つの地域をウクライナ領土と見なさないとして、過去にない表現を行いました。ロイター通信は22日に“ドネツクで戦車数両を含む軍用車列の移動を記者が確認した”と報道、前日まで戦車は確認しなかったとする。
国連安全保障理事会は21日、ウクライナ情勢に関する緊急会合を招集しました。この席上でアメリカのグリーンフィールド国連大使は、ロシアがウクライナ東部紛争停戦へ自ら結んだ“ミンスク合意”を引き裂いたと非難し、また、ロシア軍がウクライナへ平和維持軍の名目で進駐することを、馬鹿馬鹿しい主張、として非難し事態拡大を警告しています。
限定侵攻に着手、現在の状況では“首都キエフ攻略”“東部ハリコフ侵攻”“ウクライナ全土全面侵攻”“クリミア半島周辺アゾフ海周辺攻略”“ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻”など幾つかの可能性が示唆されていましたが、少なくともプーチン大統領の大統領令により、“ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻”が着手されることとなった。
安保理緊急会合において、ロシアのネベンジャ大使は、外交的解決に前向きであると主張した上で、ドンバス地域へ新しい流血を望まない方こそロシア軍を派遣するという、観方を変えればウクライナ軍が抵抗せねばウクライナ部分占領で戦闘は起きないとも受け取れる主張を行いました。これに対し国連のディカルロ事務次長は大規模紛争抑止を訴えます。
ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻、このシナリオが現実のものとなりましたが、日本時間22日1900時の時点でロシア軍が侵攻した確実な情報は確認されていません、しかし、ロシア軍はルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、そのウクライナ国境に隣接して展開している為、エンジンさえ始動させればウクライナ侵攻は可能となる現実が。
限定侵攻、しかし問題はロシア軍の軍事行動が、ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国のあるウクライナのドンバス地域限定侵攻に留まるのか、という問題です。こう述べる背景には、ロシア軍のウクライナ国境展開部隊は、ドンバス限定侵攻というだけでは説明のつかない大規模な部隊が広範に展開しており、事態拡大懸念はまだ残っているのです。
全ロシア軍の75%がウクライナ国境に集結している、分析ではほぼ可動部隊の大半が集結しているとも見て取れる状況があり、ウクライナ首都キエフへも、第二の都市であり軍事産業の集積しているハリコフへも、直接侵攻する事が可能であり、平和維持軍を支援する為に首都キエフを攻撃占領することも、可能性としては留意せねばならない状況がある。
政府、米ロ情報戦に苦慮-侵攻の有無、見極めきれず。共同通信が報じた点についてですが、当たり前の事なのですが日本政府が情報収集能力の欠如を世界に自慢しても何も始まりません、情報取集が出来ない事を痛感したのならば、全世界規模の情報分析を行う情報機関を真面目に構築しなければなりません、情報が無ければ政治は判断が出来ないのですから。
情報機関は外務省国際情報統括官組織や防衛省情報本部に内閣情報調査室等がありますが、外務省国際情報統括官は欧州担当分析官として第四国際情報官室を置いていますが、この情報官室は欧州米州アフリカ中東の分析を僅か20名で行っており、情報統括官は非常勤分析員を数名程度補助に充てているといいますが規模が少なく独自情報網を構築できる規模ではありません。また防衛省情報本部も情報収集の大半は周辺地域だ。
情報機関の態勢を強化する必要がある、これは諜報員を雇えという安直なものではなく、例えば公開情報の分析に当る分析官が数百名を集めるだけで、公的機関発表よりも深い分析が可能となりますし、地域研究者を多数集め情勢分析を行う事も意味があります。重要なのは分析の偏差を考え、分析官の人数を集めるという事で、これが現状不充分なのです。
ドンバスへ限定侵攻への着手。アメリカは24日に米ロ外相会談を予定しており、この外相会談に続いてバイデン大統領との首脳会談を予定しています、これはロシア軍がウクライナへ侵攻しない限りという条件が付けられていたのですが、アメリカ政府の視座が今のところよく判別できず、アメリカ政府は静観しているとの印象を受けざるを得ないのが現状で。
史上かつてない規模の経済制裁、アメリカのバイデン大統領はロシア軍によるウクライナ侵攻が行われた場合には、最大規模の経済制裁を行うと警告し、アメリカ政府からはSWIFT国際銀行間通信協会除名や天然ガス欧州輸出停止など、過去にない規模の経済制裁を行う示唆も行っています。しかし、ドンバス限定侵攻への明確な対応は未だ示されていません。
アメリカ政府は、ドンバス地域へのロシア軍駐留は部分的に行われているとして侵攻には当たらない、という姿勢も示しており、米ロ外相会談についても今のところ中止の決定は行っていません。ドンバス限定侵攻ならば、ウクライナ侵攻には当たらないと傍観し次の危機を待つのか、何らかの措置を行うのか、ウクライナ危機は次の段階の入り口を潜った状況です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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本日はノルウェーの次期主力戦車選定特集を掲載する予定でしたが、ウクライナ情勢が悪化した為に急遽この話題を考えてみる事とします。
ウクライナ危機はウクライナ有事へ、“ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻”がプーチン大統領21日の大統領令により開始されます。ただ、日本政府は情報収集に苦慮しているようで、共同通信は“政府、米ロ情報戦に苦慮-侵攻の有無、見極めきれず”という、アメリカの情報戦とロシアの情報戦の狭間にあり身動きが取れない様子を報道しました。
邦人救出作戦。ウクライナ有事となれば、ウクライナ国内の邦人保護を行う必要が生じ、特に民航機の運行が停止し邦人がウクライナ国内に取り残された場合には邦人輸送を実施しなければならない状況はあり得ます。ロシア軍が侵攻した場合でも日系住民への民族浄化までは考えられませんが、同じく邦人輸送を求められた昨年のアフガニスタンとは違う。
ウクライナ有事、昨年日本政府はアフガニスタンタリバン攻勢に際し、情報の見極めを誤った事で邦人保護への自衛隊派遣が後手に回りました、しかし幸いタリバンは邦人迫害を行っていません。一方でウクライナ有事では、軽歩兵主体のタリバンによる攻勢と異なり、多連装ロケットや戦車など重戦力が投入され、戦闘の規模が桁違いとなる懸念があります。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が事実上開始される、プーチン大統領がウクライナ領内へのロシア軍派遣を正式に命じた事で、従来の“国境周辺に大量のロシア軍が集結している”事を根拠として“推測として確実にロシア軍が侵攻する”という懸念から、“ロシアが大統領令によりウクライナへ侵攻する事を命じた事をテレビ演説”という段階となります。
プーチン大統領は21日、ウクライナ東部へのロシア軍進駐を命じた事を発表するテレビ演説を行いました。これはNHKはじめ各国メディアが報じています。プーチン大統領はウクライナ東部にある親ロシア系住民居住地域へ平和維持の名目でロシア軍を派遣すると述べた上で、ウクライナ東部二州においてウクライナ軍による停戦合意違反を非難しました。
ロシア政府はウクライナ東部のルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国をプーチン大統領による大統領令を以て国家承認した上で、この二つの地域をウクライナ領土と見なさないとして、過去にない表現を行いました。ロイター通信は22日に“ドネツクで戦車数両を含む軍用車列の移動を記者が確認した”と報道、前日まで戦車は確認しなかったとする。
国連安全保障理事会は21日、ウクライナ情勢に関する緊急会合を招集しました。この席上でアメリカのグリーンフィールド国連大使は、ロシアがウクライナ東部紛争停戦へ自ら結んだ“ミンスク合意”を引き裂いたと非難し、また、ロシア軍がウクライナへ平和維持軍の名目で進駐することを、馬鹿馬鹿しい主張、として非難し事態拡大を警告しています。
限定侵攻に着手、現在の状況では“首都キエフ攻略”“東部ハリコフ侵攻”“ウクライナ全土全面侵攻”“クリミア半島周辺アゾフ海周辺攻略”“ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻”など幾つかの可能性が示唆されていましたが、少なくともプーチン大統領の大統領令により、“ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻”が着手されることとなった。
安保理緊急会合において、ロシアのネベンジャ大使は、外交的解決に前向きであると主張した上で、ドンバス地域へ新しい流血を望まない方こそロシア軍を派遣するという、観方を変えればウクライナ軍が抵抗せねばウクライナ部分占領で戦闘は起きないとも受け取れる主張を行いました。これに対し国連のディカルロ事務次長は大規模紛争抑止を訴えます。
ウクライナ東部ロシア系住民居住区限定侵攻、このシナリオが現実のものとなりましたが、日本時間22日1900時の時点でロシア軍が侵攻した確実な情報は確認されていません、しかし、ロシア軍はルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、そのウクライナ国境に隣接して展開している為、エンジンさえ始動させればウクライナ侵攻は可能となる現実が。
限定侵攻、しかし問題はロシア軍の軍事行動が、ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国のあるウクライナのドンバス地域限定侵攻に留まるのか、という問題です。こう述べる背景には、ロシア軍のウクライナ国境展開部隊は、ドンバス限定侵攻というだけでは説明のつかない大規模な部隊が広範に展開しており、事態拡大懸念はまだ残っているのです。
全ロシア軍の75%がウクライナ国境に集結している、分析ではほぼ可動部隊の大半が集結しているとも見て取れる状況があり、ウクライナ首都キエフへも、第二の都市であり軍事産業の集積しているハリコフへも、直接侵攻する事が可能であり、平和維持軍を支援する為に首都キエフを攻撃占領することも、可能性としては留意せねばならない状況がある。
政府、米ロ情報戦に苦慮-侵攻の有無、見極めきれず。共同通信が報じた点についてですが、当たり前の事なのですが日本政府が情報収集能力の欠如を世界に自慢しても何も始まりません、情報取集が出来ない事を痛感したのならば、全世界規模の情報分析を行う情報機関を真面目に構築しなければなりません、情報が無ければ政治は判断が出来ないのですから。
情報機関は外務省国際情報統括官組織や防衛省情報本部に内閣情報調査室等がありますが、外務省国際情報統括官は欧州担当分析官として第四国際情報官室を置いていますが、この情報官室は欧州米州アフリカ中東の分析を僅か20名で行っており、情報統括官は非常勤分析員を数名程度補助に充てているといいますが規模が少なく独自情報網を構築できる規模ではありません。また防衛省情報本部も情報収集の大半は周辺地域だ。
情報機関の態勢を強化する必要がある、これは諜報員を雇えという安直なものではなく、例えば公開情報の分析に当る分析官が数百名を集めるだけで、公的機関発表よりも深い分析が可能となりますし、地域研究者を多数集め情勢分析を行う事も意味があります。重要なのは分析の偏差を考え、分析官の人数を集めるという事で、これが現状不充分なのです。
ドンバスへ限定侵攻への着手。アメリカは24日に米ロ外相会談を予定しており、この外相会談に続いてバイデン大統領との首脳会談を予定しています、これはロシア軍がウクライナへ侵攻しない限りという条件が付けられていたのですが、アメリカ政府の視座が今のところよく判別できず、アメリカ政府は静観しているとの印象を受けざるを得ないのが現状で。
史上かつてない規模の経済制裁、アメリカのバイデン大統領はロシア軍によるウクライナ侵攻が行われた場合には、最大規模の経済制裁を行うと警告し、アメリカ政府からはSWIFT国際銀行間通信協会除名や天然ガス欧州輸出停止など、過去にない規模の経済制裁を行う示唆も行っています。しかし、ドンバス限定侵攻への明確な対応は未だ示されていません。
アメリカ政府は、ドンバス地域へのロシア軍駐留は部分的に行われているとして侵攻には当たらない、という姿勢も示しており、米ロ外相会談についても今のところ中止の決定は行っていません。ドンバス限定侵攻ならば、ウクライナ侵攻には当たらないと傍観し次の危機を待つのか、何らかの措置を行うのか、ウクライナ危機は次の段階の入り口を潜った状況です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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