■週報:世界の防衛,最新12論点
今回は陸軍関連12論点を紹介しますが、ロシア軍事圧力に曝される東欧諸国へアメリカの州兵制度が近代化へ寄与している話題から。
エストニア陸軍はM-270-MLRS多連装ロケットシステムの導入を発表しました、冷戦時代に開発され2010年代には欧州NATO各国において想定する戦車部隊の大規模侵攻は最早考えられないとされ、多くの国々で廃止され残るすべての国でも大半が廃止されている装備ですが、エストニア陸軍はロシアの脅威に直面しており、導入を決断したかたちです。
MLRSとして有名なM-270-MLRS多連装ロケットシステムは、エストニア軍では2022年内に導入を最終決定し2024年までに配備したいとしています。アメリカ陸軍が運用していた車両の譲渡を受ける計画で、その前段階として在欧米軍としてドイツにグラフェンワールに駐留するアメリカ陸軍第6砲兵連隊第1大隊より、教育支援を既に受けています。
エストニア陸軍は現役兵員6500名と小所帯で、一見MLRSは軍団支援火力であり、過度な装備と見られるかもしれませんが、ウクライナ情勢等を鑑みればロシア軍の軍事圧力は切実な問題であり、同じくバルト海沿岸地域ではリトアニア陸軍もMLRSの導入を検討しており、リトアニア陸軍の兵員規模は9600名となっています。両国はNATO加盟国です。
■ラトビアのUH-60導入支援
アメリカの州兵が東欧諸国とパートナーシップを締結して近代化を支援する方式という。
ラトビア軍はUH-60導入に先立ちミシガン州兵の支援を受けます。ラトビア軍はロシアからの軍事圧力を受け、国軍の近代化を進めていますが、UH-60多用途ヘリコプターは旧ソ連製Mi-17輸送ヘリコプターの後継として導入が決定されました。しかし、NATO加盟国であるラトビアもUH-60の運用能力はありません、そこでアメリカの協力を仰ぎました。
ミシガン州兵第147航空連隊第1大隊B中隊は、ラトビア空軍の操縦要員や整備要員を受け入れ、OJT方式にて10週間の訓練を実施中です。アメリカ国務省は政府間プログラムにより1993年よりラトビア軍支援を継続しており、ミシガン州兵との関係を継続しています。ラトビア軍は2022年にUH-60多用途ヘリコプター4機を導入する事となっています。
■クロアチアのブラッドレー
ブラッドレー装甲戦闘車のような車輛でも対戦車戦闘の重要な戦力となる。
クロアチア陸軍はブラッドレー装甲戦闘車導入に向けミネソタ州で訓練を受けているとのこと。これはロシア軍脅威増大を受け、クロアチア陸軍が84両のM-2A3OPSブラッドレー装甲戦闘車を導入する事となり、アメリカとクロアチアのSPP国家間パートナーシッププログラムを通じてミネソタ州兵の余剰車輛を再整備し受領することとなりました。
クロアチア軍の主力戦車は72両のM-84A4戦車ですが、運用する装甲車はユーゴスラビア製BVP-M-80装甲車128両で旧式化が進んでいます、TOW対戦車ミサイルの運用能力を持つブラッドレー装甲戦闘車は貴重な対戦車戦力ともなり得ることから期待されていて、クロアチア軍は最終的に130両のブラッドレーを導入し、機械化部隊を一新する構想です。
■アルプスのAW-169M
AW-169M多用途ヘリコプターはそこそこ費用は高いものですがUH-1の後継機に悩んだ日本からは羨ましい選択肢と云う。
オーストリア軍はアルプス地域用のAW-169M多用途ヘリコプター18機取得を正式決定しました。オーストリア軍は世界有数の高山地帯であるアルプス地域での防衛及び救難用に長らくUH-1H多用途ヘリコプターを運用していますが、旧式化と老朽化が顕著でした。後継機は必要とされるものの、予算面の折り合いがつかず中々合意には至っていません。
AW-169Mは人員10名を輸送可能で、より大型で15名乗りのAW-139ほどではありませんが8名乗りのA-109よりも多用途性は高く、双発で飛行性能は安定している。AW-169Mはイタリアのレオナルドヘリコプター社製、費用は3億ユーロで、今回の合意はオーストリアとイタリア政府の合意です。救難用に用いられますが機関銃架も取得する見込みです。
■ベラルーシの新ロケット砲
ウラガンM自走ロケット砲は車体部分が安価に廉価版を採用した新型という。
ベラルーシ軍は新型のウラガンM自走ロケット砲の試験を実施した、BM-27ロケット砲としても知られるソ連製装備である。これは現在のウラガンロケット砲が車体部分のZil-135LMトラックが1970年代のもので、老朽化により山間部や不整地での陣地進入能力を欠いていた為で新たにMAZ-6317トラック軍用型の9P140MBトラックを転用している。
BM-27ロケット砲は大型の220mmロケット弾を投射し、射程は35kmに達する。この為Zil-135LMトラックは機動性を重視しており、BTR-60装甲車用エンジン2基を備えている他、核戦場においても運用を想定し車体部分にはNBC防護能力を有している。MAZ-6317トラックはベラルーシ製で、ベラルーシは特殊トラックとして2年間かけ改造している。
■最新T-90MS主力戦車
90式戦車に対してT-90戦車は新型が開発された後も進化が止まらない。
ロシア軍は最新のT-90MS戦車をEDEX兵器展に出展したとのこと。EDEX兵器展はエジプトのカイロにて2021年11月29日から12月2日まで開催された兵器見本市だ。エジプト軍は現在、アメリカ製M-1A1エイブラムス戦車を1130両と最新のM-1A2SEP-2を755両運用する中東最大のアメリカ戦車運用国であり、ロシア戦車への去就が注目される。
T-90MS戦車はT-90S戦車を原型としてエンジン出力を強化し電子機器の一新やアクティヴ式装甲の追加などを行った最新型戦車であり、ロシアの国営企業ロステック社は2020年までに中東と南米での評価試験を完了している、中東では摂氏50度までの環境に対応するよう空調が強化されており、砂漠の砂塵においても整備性と稼働率を高く維持可能という。
■ロシア極地戦用全地形車両
日本にも全地形車両というものの導入を真剣に考える必要があるとおもう。
ロシア軍は極地圏用Barnaul-T偵察システムを受領した。Barnaul-T偵察システムはMT-LBU多目的装甲車に搭載される高性能偵察システムで、北極圏ムルマンスクの第200独立自動車化狙撃旅団に配備された。この装備は近年ロシアが重視している北極圏での戦いに備えるものだ、北極海航路開通とともにロシアは北方からの軍事脅威へ備えている。
Barnaul-T偵察システムは40km圏内の目標を探索する装備で、寒冷地対策は完璧であり、北極圏の広大であるが人口希薄であるとともに冬季には安易に徒歩機動できない特性に併せ広範囲の偵察能力を持つ。索敵には伸縮式マスト上の偵察装置と無人航空機を用い、マスト上のセンサーは12秒間で全周を索敵し100までの目標を同時追尾する事が可能だ。
■スペインLAV6.0生産開始
LAV-6.0装輪装甲車はLAVも太くなったものだと痛感しますが一応自衛隊の次期装甲車候補として機動戦闘車派生の機動装甲車と競う予定でした。
スペイン陸軍のLAV-6.0装輪装甲車スペイン仕様VCR装甲車生産が開始されました。スペイン陸軍は旧式化した装輪装甲車や一部の装軌式装甲車をLAV-6.0装輪装甲車により置換える構想です。このLAV-6.0装輪装甲車はスイスのモワク社が開発した傑作装輪装甲車ピラーニャ装輪装甲車シリーズ第六世代型で製造はアメリカのGDELS社が担っています。
LAV-6.0装輪装甲車は陸上自衛隊の96式装輪装甲車後継候補にも選出されていますがGDELS社は期限内に試験車両を納入せず、防衛省が返金手続を進めている車輛でLAVシリーズとしては防御力を極めて重視した設計となっており、スペイン軍仕様のものはスペインのサンタバーバラシステムズ社が生産し、VCRドラゴン装甲車と命名されています。
VCRドラゴン装甲車はアストゥリアスのトルビアに建設されたGDELS社とサンタバーバラ社の合弁会社GDELSサンタバーバラシステムズ社のトルビア工場が実施、製造車両は早ければ2022年内にスペイン陸軍への納入が開始される計画でスペイン軍は348両の取得を構想しています。またこれはスペイン国内に900名の正規雇用を生むともされています。
■自衛隊パトリアAMV試験
機動装甲車と比べますと右ハンドルと左ハンドルの違いがありまして若干フィンランド車の不利なようにも。
陸上自衛隊のパトリアAMV装輪装甲車試験が本格化し東富士演習場にてその様子が2021年12月より公道からも確認されているようです。この車輛は2020年12月16日に日本に向け出荷されているもので、陸上自衛隊は装備実験隊により各種試験等を実施した後、実地試験に臨んだものです。試験車両に砲塔はなく防盾付機関銃座は配置されている。
パトリアAMVのAMV-XPにあたる試験車両はフィンランドのパトリア社が開発した装甲車両で、ポーランド軍がロソマク装甲車として採用、アフガニスタンの治安支援作戦へ投入された際、IEDにより車輪を破壊された車輛に複数のRPGが撃ち込まれ装甲の最も薄い後部扉に向け多数機銃弾が集中射撃された際に車内被害が無かった防御力が知られている。
■インド軍新ロケット砲
命中精度よりも面制圧という要素が強い世界の戦場と云うものが未だあるのですね。
インド陸軍はピナカERロケット弾システムの試験を成功させたとのこと。これはインド防衛技術開発機構DRDOのARDEプネ兵器開発研究施設が担当し、共通弾薬に高威力の中射程のものと低威力の長射程のものを開発し、共通の多連装ロケット発射装置から運用、多種多様な口径のロケット弾を統合するという計画です。発射装置は24連装を想定する。
ピナカERロケット弾システムはmark1の射程は40kmとされ長射程型のmark2射程が60km、誘導装置を備えた事実上のミサイル型は射程が90kmとなっています。発射システムはチェコのタトラ社製トラックに搭載されている。インド陸軍では山間部での国境防衛に威力を発揮するとしており、インド軍では接近拒否弾薬とも位置付けられています。
■インドがスプルートを検討
SDM-1スプルートというのは薄い装甲の車体に敵を撃破できる戦車砲を積んだという2.5世代戦車の軽量版ににている。
インド陸軍は山岳用軽戦車としてロシア製SDM-1スプルートを検討している、ロシアのタス通信が報道しました。SDM-1スプルートはロシア軍が空挺対戦車自走砲として開発したもので、非常に軽量ですが2A46戦車砲を搭載、これはT-72戦車やT-90戦車と同型砲であり、戦車並という表現ではなく主力戦車と同じ打撃力を備えた対戦車車輛となっている。
SDM-1スプルートが提案される背景には、インド軍は中国との対峙が続く国境地域において運用可能となる軽戦車計画を2021年4月より正式に開始しています。この情報提案書RFIは6月に締め切られており、これに適合したものがSDM-1スプルートと云う事なのでしょう。計画は重量25tまで、主砲で主力戦車に対抗可能という厳しい要求がありました。
■インドのアグニPミサイル
アグニP弾道ミサイルは使用されれば核戦争の引き金となり得るものでまだまだ世界は平和からは程遠い。
インド軍は新型のアグニP弾道ミサイルの発射試験を成功させたとのこと。これは2021年12月18日にオリッサ州アブドゥルカラム島のミサイル発射試験施設にて実施され、アグニPとしては二回目の試験という。この試験ではミサイルの軌道試験と再突入試験が実施され、インド軍では最新の核兵器運搬手段として、充分な成果が得られたとされている。
アグニP弾道ミサイルはアグニ1の後継に位置付けられ、射程5000km程度の核弾頭ミサイルで、中国のDF-21D及びDF-26B弾道ミサイルに対抗する事が主眼とされ、北京首都圏への核攻撃能力を維持する。またインド軍はアグニシリーズを通常弾頭型クラスター弾頭を有する対艦弾道弾に転用し、2035年には6隻となる中国空母への抑止として期待する。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は陸軍関連12論点を紹介しますが、ロシア軍事圧力に曝される東欧諸国へアメリカの州兵制度が近代化へ寄与している話題から。
エストニア陸軍はM-270-MLRS多連装ロケットシステムの導入を発表しました、冷戦時代に開発され2010年代には欧州NATO各国において想定する戦車部隊の大規模侵攻は最早考えられないとされ、多くの国々で廃止され残るすべての国でも大半が廃止されている装備ですが、エストニア陸軍はロシアの脅威に直面しており、導入を決断したかたちです。
MLRSとして有名なM-270-MLRS多連装ロケットシステムは、エストニア軍では2022年内に導入を最終決定し2024年までに配備したいとしています。アメリカ陸軍が運用していた車両の譲渡を受ける計画で、その前段階として在欧米軍としてドイツにグラフェンワールに駐留するアメリカ陸軍第6砲兵連隊第1大隊より、教育支援を既に受けています。
エストニア陸軍は現役兵員6500名と小所帯で、一見MLRSは軍団支援火力であり、過度な装備と見られるかもしれませんが、ウクライナ情勢等を鑑みればロシア軍の軍事圧力は切実な問題であり、同じくバルト海沿岸地域ではリトアニア陸軍もMLRSの導入を検討しており、リトアニア陸軍の兵員規模は9600名となっています。両国はNATO加盟国です。
■ラトビアのUH-60導入支援
アメリカの州兵が東欧諸国とパートナーシップを締結して近代化を支援する方式という。
ラトビア軍はUH-60導入に先立ちミシガン州兵の支援を受けます。ラトビア軍はロシアからの軍事圧力を受け、国軍の近代化を進めていますが、UH-60多用途ヘリコプターは旧ソ連製Mi-17輸送ヘリコプターの後継として導入が決定されました。しかし、NATO加盟国であるラトビアもUH-60の運用能力はありません、そこでアメリカの協力を仰ぎました。
ミシガン州兵第147航空連隊第1大隊B中隊は、ラトビア空軍の操縦要員や整備要員を受け入れ、OJT方式にて10週間の訓練を実施中です。アメリカ国務省は政府間プログラムにより1993年よりラトビア軍支援を継続しており、ミシガン州兵との関係を継続しています。ラトビア軍は2022年にUH-60多用途ヘリコプター4機を導入する事となっています。
■クロアチアのブラッドレー
ブラッドレー装甲戦闘車のような車輛でも対戦車戦闘の重要な戦力となる。
クロアチア陸軍はブラッドレー装甲戦闘車導入に向けミネソタ州で訓練を受けているとのこと。これはロシア軍脅威増大を受け、クロアチア陸軍が84両のM-2A3OPSブラッドレー装甲戦闘車を導入する事となり、アメリカとクロアチアのSPP国家間パートナーシッププログラムを通じてミネソタ州兵の余剰車輛を再整備し受領することとなりました。
クロアチア軍の主力戦車は72両のM-84A4戦車ですが、運用する装甲車はユーゴスラビア製BVP-M-80装甲車128両で旧式化が進んでいます、TOW対戦車ミサイルの運用能力を持つブラッドレー装甲戦闘車は貴重な対戦車戦力ともなり得ることから期待されていて、クロアチア軍は最終的に130両のブラッドレーを導入し、機械化部隊を一新する構想です。
■アルプスのAW-169M
AW-169M多用途ヘリコプターはそこそこ費用は高いものですがUH-1の後継機に悩んだ日本からは羨ましい選択肢と云う。
オーストリア軍はアルプス地域用のAW-169M多用途ヘリコプター18機取得を正式決定しました。オーストリア軍は世界有数の高山地帯であるアルプス地域での防衛及び救難用に長らくUH-1H多用途ヘリコプターを運用していますが、旧式化と老朽化が顕著でした。後継機は必要とされるものの、予算面の折り合いがつかず中々合意には至っていません。
AW-169Mは人員10名を輸送可能で、より大型で15名乗りのAW-139ほどではありませんが8名乗りのA-109よりも多用途性は高く、双発で飛行性能は安定している。AW-169Mはイタリアのレオナルドヘリコプター社製、費用は3億ユーロで、今回の合意はオーストリアとイタリア政府の合意です。救難用に用いられますが機関銃架も取得する見込みです。
■ベラルーシの新ロケット砲
ウラガンM自走ロケット砲は車体部分が安価に廉価版を採用した新型という。
ベラルーシ軍は新型のウラガンM自走ロケット砲の試験を実施した、BM-27ロケット砲としても知られるソ連製装備である。これは現在のウラガンロケット砲が車体部分のZil-135LMトラックが1970年代のもので、老朽化により山間部や不整地での陣地進入能力を欠いていた為で新たにMAZ-6317トラック軍用型の9P140MBトラックを転用している。
BM-27ロケット砲は大型の220mmロケット弾を投射し、射程は35kmに達する。この為Zil-135LMトラックは機動性を重視しており、BTR-60装甲車用エンジン2基を備えている他、核戦場においても運用を想定し車体部分にはNBC防護能力を有している。MAZ-6317トラックはベラルーシ製で、ベラルーシは特殊トラックとして2年間かけ改造している。
■最新T-90MS主力戦車
90式戦車に対してT-90戦車は新型が開発された後も進化が止まらない。
ロシア軍は最新のT-90MS戦車をEDEX兵器展に出展したとのこと。EDEX兵器展はエジプトのカイロにて2021年11月29日から12月2日まで開催された兵器見本市だ。エジプト軍は現在、アメリカ製M-1A1エイブラムス戦車を1130両と最新のM-1A2SEP-2を755両運用する中東最大のアメリカ戦車運用国であり、ロシア戦車への去就が注目される。
T-90MS戦車はT-90S戦車を原型としてエンジン出力を強化し電子機器の一新やアクティヴ式装甲の追加などを行った最新型戦車であり、ロシアの国営企業ロステック社は2020年までに中東と南米での評価試験を完了している、中東では摂氏50度までの環境に対応するよう空調が強化されており、砂漠の砂塵においても整備性と稼働率を高く維持可能という。
■ロシア極地戦用全地形車両
日本にも全地形車両というものの導入を真剣に考える必要があるとおもう。
ロシア軍は極地圏用Barnaul-T偵察システムを受領した。Barnaul-T偵察システムはMT-LBU多目的装甲車に搭載される高性能偵察システムで、北極圏ムルマンスクの第200独立自動車化狙撃旅団に配備された。この装備は近年ロシアが重視している北極圏での戦いに備えるものだ、北極海航路開通とともにロシアは北方からの軍事脅威へ備えている。
Barnaul-T偵察システムは40km圏内の目標を探索する装備で、寒冷地対策は完璧であり、北極圏の広大であるが人口希薄であるとともに冬季には安易に徒歩機動できない特性に併せ広範囲の偵察能力を持つ。索敵には伸縮式マスト上の偵察装置と無人航空機を用い、マスト上のセンサーは12秒間で全周を索敵し100までの目標を同時追尾する事が可能だ。
■スペインLAV6.0生産開始
LAV-6.0装輪装甲車はLAVも太くなったものだと痛感しますが一応自衛隊の次期装甲車候補として機動戦闘車派生の機動装甲車と競う予定でした。
スペイン陸軍のLAV-6.0装輪装甲車スペイン仕様VCR装甲車生産が開始されました。スペイン陸軍は旧式化した装輪装甲車や一部の装軌式装甲車をLAV-6.0装輪装甲車により置換える構想です。このLAV-6.0装輪装甲車はスイスのモワク社が開発した傑作装輪装甲車ピラーニャ装輪装甲車シリーズ第六世代型で製造はアメリカのGDELS社が担っています。
LAV-6.0装輪装甲車は陸上自衛隊の96式装輪装甲車後継候補にも選出されていますがGDELS社は期限内に試験車両を納入せず、防衛省が返金手続を進めている車輛でLAVシリーズとしては防御力を極めて重視した設計となっており、スペイン軍仕様のものはスペインのサンタバーバラシステムズ社が生産し、VCRドラゴン装甲車と命名されています。
VCRドラゴン装甲車はアストゥリアスのトルビアに建設されたGDELS社とサンタバーバラ社の合弁会社GDELSサンタバーバラシステムズ社のトルビア工場が実施、製造車両は早ければ2022年内にスペイン陸軍への納入が開始される計画でスペイン軍は348両の取得を構想しています。またこれはスペイン国内に900名の正規雇用を生むともされています。
■自衛隊パトリアAMV試験
機動装甲車と比べますと右ハンドルと左ハンドルの違いがありまして若干フィンランド車の不利なようにも。
陸上自衛隊のパトリアAMV装輪装甲車試験が本格化し東富士演習場にてその様子が2021年12月より公道からも確認されているようです。この車輛は2020年12月16日に日本に向け出荷されているもので、陸上自衛隊は装備実験隊により各種試験等を実施した後、実地試験に臨んだものです。試験車両に砲塔はなく防盾付機関銃座は配置されている。
パトリアAMVのAMV-XPにあたる試験車両はフィンランドのパトリア社が開発した装甲車両で、ポーランド軍がロソマク装甲車として採用、アフガニスタンの治安支援作戦へ投入された際、IEDにより車輪を破壊された車輛に複数のRPGが撃ち込まれ装甲の最も薄い後部扉に向け多数機銃弾が集中射撃された際に車内被害が無かった防御力が知られている。
■インド軍新ロケット砲
命中精度よりも面制圧という要素が強い世界の戦場と云うものが未だあるのですね。
インド陸軍はピナカERロケット弾システムの試験を成功させたとのこと。これはインド防衛技術開発機構DRDOのARDEプネ兵器開発研究施設が担当し、共通弾薬に高威力の中射程のものと低威力の長射程のものを開発し、共通の多連装ロケット発射装置から運用、多種多様な口径のロケット弾を統合するという計画です。発射装置は24連装を想定する。
ピナカERロケット弾システムはmark1の射程は40kmとされ長射程型のmark2射程が60km、誘導装置を備えた事実上のミサイル型は射程が90kmとなっています。発射システムはチェコのタトラ社製トラックに搭載されている。インド陸軍では山間部での国境防衛に威力を発揮するとしており、インド軍では接近拒否弾薬とも位置付けられています。
■インドがスプルートを検討
SDM-1スプルートというのは薄い装甲の車体に敵を撃破できる戦車砲を積んだという2.5世代戦車の軽量版ににている。
インド陸軍は山岳用軽戦車としてロシア製SDM-1スプルートを検討している、ロシアのタス通信が報道しました。SDM-1スプルートはロシア軍が空挺対戦車自走砲として開発したもので、非常に軽量ですが2A46戦車砲を搭載、これはT-72戦車やT-90戦車と同型砲であり、戦車並という表現ではなく主力戦車と同じ打撃力を備えた対戦車車輛となっている。
SDM-1スプルートが提案される背景には、インド軍は中国との対峙が続く国境地域において運用可能となる軽戦車計画を2021年4月より正式に開始しています。この情報提案書RFIは6月に締め切られており、これに適合したものがSDM-1スプルートと云う事なのでしょう。計画は重量25tまで、主砲で主力戦車に対抗可能という厳しい要求がありました。
■インドのアグニPミサイル
アグニP弾道ミサイルは使用されれば核戦争の引き金となり得るものでまだまだ世界は平和からは程遠い。
インド軍は新型のアグニP弾道ミサイルの発射試験を成功させたとのこと。これは2021年12月18日にオリッサ州アブドゥルカラム島のミサイル発射試験施設にて実施され、アグニPとしては二回目の試験という。この試験ではミサイルの軌道試験と再突入試験が実施され、インド軍では最新の核兵器運搬手段として、充分な成果が得られたとされている。
アグニP弾道ミサイルはアグニ1の後継に位置付けられ、射程5000km程度の核弾頭ミサイルで、中国のDF-21D及びDF-26B弾道ミサイルに対抗する事が主眼とされ、北京首都圏への核攻撃能力を維持する。またインド軍はアグニシリーズを通常弾頭型クラスター弾頭を有する対艦弾道弾に転用し、2035年には6隻となる中国空母への抑止として期待する。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)