北大路機関

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【日曜特集】かしま-はるな雪景色と練習艦隊舞鶴寄港【3】平和な時代の舞鶴(2008-02-17)

2022-02-27 20:05:17 | 海上自衛隊 催事
■平和な時代を懐かしむ
 護衛艦はるな、その前半生は核戦争も辞さない東西冷戦下の緊張に在りましたが後半生は冷戦後の平和な時代にありました。

 日本海の厳しい季節を印象付ける冬の舞鶴特集は、この第三回が最終回です。この第一回を掲載開始した際には、ウクライナとロシアの国境地域ではロシア軍の集結が開始されていましたが、極めて緊迫した状況ではあったものの、幾つかの可能性は残っていました。

 ロシア軍が撤収する可能性、若しくはウクライナ東部への限定侵攻に留まる可能性であり、首都キエフへの全面侵攻は、特に緒戦から一気に首都を攻撃する行動までは、有り得た可能性の中でも比較的低く、この数日間で世界は変わってしまったという印象が非常に強い。

 はるな。雪の護衛艦はるな、この情景というものを撮影しつつ、護衛艦はるな建造は東西冷戦の真っただ中、1973年、世界では第四次中東戦争が激戦し印パ戦争も緊張、国連からは中華民国が離脱し中華人民共和国国連加盟など、激動の時代を生きた護衛艦でした。

 雪の舞鶴、護衛艦はるな。一時代を代表する情景です。もっとも実は護衛艦はるな舞鶴時代というのは1998年から2009年の除籍までという期間でありまして、1973年に三菱重工長崎にて建造された自衛隊最初のヘリコプター搭載護衛艦は佐世保基地の時代が長かった。

 はるな、くらま。この佐世保時代はるな所属は第2護衛隊群第52護衛隊として、ヘリコプター搭載護衛艦2隻を基幹とする部隊の所属、HSS-2哨戒ヘリコプター6機を集中運用する部隊として機動的な対潜任務を展開していた、ヘリコプターが普及すると運用は換わる。

 はつゆき型護衛艦、雪の中で語るのは風情あるものですが、はつゆき型護衛艦はHSS-2ヘリコプターを搭載できますので、この新型護衛艦の量産が始まりますと、ヘリコプター搭載護衛艦は集中運用から護衛隊群の旗艦的位置づけへ転換してゆき、所属も転籍します。

 第二護衛隊群から第三護衛隊群へ。はるな所属は転換します、が当面は母港は舞鶴基地でした。背景には艦載機が大村航空基地に配備されていまして、この時代は司令部が大変でした。旗艦は佐世保にあるのですが、司令部は舞鶴にある、長崎県と京都府、距離が遠い。

 しまかぜ。第三護衛隊群司令部は、演習に際して先ず舞鶴基地にていちばん大きなミサイル護衛艦しまかぜ、必要な機材を持ち乗艦して出航、そこから日本海にて護衛艦はるな艦載機にて出向する、群訓練のその都度に引っ越しを何度も行う司令部、という状態でした。

 舞鶴航空基地が建設されますと、この舞鶴基地から指呼の距離の航空基地にヘリコプターを置けることとなりますので、母港も佐世保から舞鶴へ。舞鶴航空基地建設は革新政党の一部に反対はあったようですが舞鶴市内ではおおむね歓迎されていまして、そして。

 2003年由良川水害、大きな災害が京都北部を襲いました。この際にバスが氾濫した河川に取り残される緊急事態がありましたが、ちょうど近くに航空基地が、SH-60哨戒ヘリコプターによるピストン空輸を実施します。そしてこの水害の際には僥倖な出来事があった。

 由良側水害にはSH-60とともにS-61が災害派遣していまして、館山航空基地から訓練へ展開していた救難ヘリコプターが、救難員ともども舞鶴航空基地にいまして災害派遣へ加入派遣、たいへんな水害でしたがヘリコプターが孤立したバス乗客を救助しています。

 舞鶴航空基地はこうした歴史があるのですけれども、しかしもう一つ、はるな型護衛艦が運用された時代、建造当時は石油危機、現在のロシア軍ウクライナ侵攻により天然ガスの取引価格が急上昇していますが、1973年石油危機は大変なインフレを引き起こしています。

 自衛隊改編として1974年に第四護衛隊群が新編されていますが、この時代にはいまのロシア以上にソ連太平洋艦隊の軍事圧力が非常に大きく、日本防衛は海上防衛というよりも北海道へ直接侵攻が、高い蓋然性をもつ脅威として認識されていた、そんな時代があった。

 DDH,海上自衛隊は潜水艦への対処に特化した、こう一時代を説明する動きがありましたが、ソ連太平洋艦隊の膨大な巡洋艦保有数を考えますと、水上打撃部隊により対抗しようと考えた場合、艦対艦ミサイルが当時はハープーンも開発中で対応するものがありません。

 スタンダードSM-1ミサイルは誘導方法によっては対艦ミサイルとして転用できることは発見されていましたが、ミサイルはスウェーデンのほうがアメリカより進んでいたほどでしたので、日本が入手できるミサイルとなりますと、国産でもしなければ無かったという。

 潜水艦、海上自衛隊はソ連の北海道侵攻に際して1970年代には、北海道と本州を結ぶ増援部隊の護衛、そして日本のシーレーンへの防衛を重視し、その上でソ連艦隊への攻撃は潜水艦、またわずかですが魚雷艇によるゲリラ的な戦闘が構想されていた、厳しい状況が。

 ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、これらにF-35B戦闘機を搭載しようという2020年代に、しかも艦隊防空のイージス艦は、こんごう型、あたご型、まや型と数が揃いまして、汎用護衛艦も、むらさめ型、たかなみ型、あきづき型、あさひ型、相応に強力な陣容に。

 冷戦時代と比較するならば、潜水艦と魚雷艇という厳しい戦いから、日本に対してロシア軍が軍事行動を行った場合に相応な代価を払わせられますし、ロシア軍が今回ウクライナへ250発の巡航ミサイルを撃ちましたが、一個護衛隊群で何とか耐えられる水準にある。

 防衛力は強化されたものですか、一方で、ロシア軍が隣国に意味不明の、核開発や民族浄化という、そんな事を聞いた事も無いしロシアではやっている印象はあるが攻められた側にはやりそうな行政の雰囲気が無い、状況で侵攻されるなど、ちょっと想像ができません。

 ロシアの脅威、まさかこの写真を撮影した当時は、ロシアの脅威再来なんてものは考えられなかったもので、いや撮影した前年にロシアはNATOのオブザーバー国を離脱、東欧ミサイル防衛配備計画への反発が背景にありましたが、一時的なものだと理解していました。

 ウクライナ侵攻、2021年末から高まった脅威は2022年2月にウクライナ危機からウクライナ有事としてロシア軍が侵攻しています、今後、昨年までの日ロ関係に戻るには相当な時間が必要でしょう。舞鶴ではロシア艦を何度か見学する機会があったのですけれども。

 厳しい時代が来るのか。現代は2020年から2022年の今日に至るもCOVID-19という厳しい状況下にあり、非日常という点では撮影に雪中を歩みました当時とはずいぶん違うのですけれども、軍事、安全保障という面では、冷戦時代の緊張が戻ってきたという印象です。

 ロシアは資源大国である為、日本はロシアから天然ガスを殆ど輸入しないものの欧州は依存度が高い為、ロシアから輸入できない天然ガスを輸入しようとするならば日本と同じ中東の天然ガスを奪い合い燃料費が高騰し得る、また、ウクライナとロシアは穀物輸出国だ。

 日本経済にも影響が大きくなります、もっとも、日本が防衛力整備に膨大な予算を必要とするようになったのは、日本経済の世界における地位が多極化、円安で平和を日本が買いたたけない為という説明をしますが、同時にこの戦争は民主主義の値段も上がる事を示す。

 円安で平和を日本が買いたたけない、故に防衛費を高めなければ、日本国家が平和主義なので“平和在れ”と願うだけで周辺国が日本との経済関係を重視し云々、という平和がかたちだけでも保たれる時代は、中国の経済成長で過去のものとなった構図なのですが。

 民主主義、いや自己実現の為の人間の自由、こうしたものが21世紀の今日に改めて問われ、空気の様に有るとおもったものが、維持する為に経済上の苦境などを耐えなければならない時代が来る、この写真を撮影した時代は色々ありましたが、安心な平和の時代でしたね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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キエフ攻防戦!対ロシア経済制裁へSWIFT除名で欧州合意と国連今世紀初ESS緊急総会招集

2022-02-27 18:10:01 | 防衛・安全保障
■ウクライナ有事-四日目
 三日目となりましたウクライナの現状は日本の現状と成り得たという切迫感と焦燥感が在ります。

 ロシア軍ウクライナ侵攻は、荒唐無稽な口実により一国を全面攻撃するという恐るべき蛮行です。そしてウクライナへ突き付けられた口実は、固有名詞と地名を入れ替えれば、北海道へも新潟へも当て嵌まるものであり、対岸の火事ではなく防がなければならない人道危機と平和への罪そのものです。ロシアが口実とした人道危機がロシアにより起こされた。

 ESS緊急総会“平和の為の結集決議”、国連はロシアの拒否権行使により機能不随となった安全保障理事会に代わり、21世紀初となるESS緊急総会“平和の為の結集決議”を28日にも招集する方向で調整を進めています。国連総会決議は国連憲章に基づく軍事制裁などを強いる拘束力はありませんが、規範性があり、また国際慣習法として部分的に機能する。

 ESS緊急総会“平和の為の結集決議”は核戦争瀬戸際まで進んだスエズ危機に際して、今回と同様に国連安全保障理事会が超大国の拒否権行使により機能不随となった為、国連の本来任務“国際の平和と安全”の実現の為に安保理の任務を総会が代行するという位置づけであり、スエズ危機では国連軍の代替として第一回国連防護軍派遣が決定しました。

 SWIFT国際銀行間通信協会からのロシア銀行除名、この最強の経済制裁と呼ばれる措置の実施へ大車輪で転換しました。世界1万1000金融機関が加盟するSWIFTから除名された場合にはロシアは欧州始め各国から銀行国際決済が不可能となり、大量の天然ガスなどの資源を有するロシアは不安定な暗号通貨や現金決済等を行わねば輸出も出来なくなります。

 SWIFT除名は、ロシアに対し非常に大きな経済制裁となる一方、ロシア政府の反発による資源輸出停止など報復措置が大きい事から、特に天然ガスにエネルギー依存度を高める欧州諸国では慎重な反論がありました、ところがロシアのウクライナ侵攻が東部だけでなく首都侵攻という、想定外の戦闘拡大を前に欧州各国がアメリカ呼び掛けに応じた構図です。

 SWIFT除名の動きが強まる中、ロシア軍は27日0100時頃、ウクライナ東部ハリコフに付設された天然ガスパイプライン爆破を実行、ロシアから欧州への天然ガスパイプラインはウクライナ領内を通るものだけ絵も複数あり、これがロシアからの天然ガス輸出停止を意味するものではありませんが、天然ガス取引価格が現在高騰しており、更なる拡大となる。

 トルコ政府へウクライナ政府がボスポラス海峡封鎖を要請、これはウクライナのゼレンスキー大統領がトルコ政府とトルコのエルドアン大統領に謝意を表明する事で明るみに出ました、ボスポラス海峡は黒海と地中海を結ぶ最狭部800mの海峡で、ここを封鎖された場合、ロシア黒海艦隊は孤立する事となります。軍事的に封鎖は難しい事ではありません。

 ボスポラス海峡は、しかしモントルー条約により通過可能な軍艦へ制限が加えられており、この範囲内であれば航行は可能です。一方、トルコ政府は国連海洋法条約に定めた国際海峡ではなく、モントルー条約によりトルコが管理する海峡という立場を一貫しており、これは露土戦争によりロシア等と結ばれた不平等条約への反省という過去の外交関係がある。

 ロシア軍は黒海において船舶攻撃を実施した際、日本船など紛争への第三国への船舶誤射が次第に増加しており、これをもって海峡封鎖が行われる可能性は未知数ですが、当初想定よりもロシア軍侵攻は遅滞しており、今後ウクライナ軍の遅滞戦闘が成功した場合、思いもしない方向から対ロシア強硬措置という可能性が示唆された点は注目すべきでしょう。

 防衛装備品供与、アメリカは追加で3億5000万ドル分の対戦車ミサイルなど追加供与する発表を行いました。ジャベリンミサイルが追加される。ロシア軍戦車はアフガニートアクティヴ防護装置等対戦車ミサイルへの備えを強化していると考えられてきましたが、これまでキエフ攻防戦の戦況を見ますと、ジャベリンミサイルは驚くほどの威力を示している。

 ドイツ政府が新しい動きが、携帯地対空ミサイル500基をウクライナへ供与するとドイツ政府が発表しました。スティンガーミサイルと思われます。前線防空へ切迫する程に重要な装備です。そしてドイツ政府はこれまで、鉄帽5000個供与など装備品供与には冷淡な姿勢を示してきましたが、ここに来てロシア軍へ強力な装備品を提供することとなりました。

 防衛装備品供与、ウクライナの空港はロシア軍地対空ミサイルや制空権喪失により機能不随となっていますが、ポーランドやルーマニアとの陸上国境は維持されており、また両国はNATO加盟国である事からアメリカ軍はじめ装備品供与に利用可能です。今後この両国へ核兵器等による恫喝が考えられますが、この場合は一段階上の対立構造となるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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