goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

19DD(5000トン型護衛艦)は、はつゆき型護衛艦を代替できるか

2008-09-30 23:40:53 | 先端軍事テクノロジー

■19DD 満載排水量6800㌧

 5000トン型護衛艦は、同時多目標対応能力を有するFCS-3改と射程60kmとされるESSMを搭載しており、従来の汎用護衛艦と比べて高い防空能力を有しているとの事。艦名は、かつての防空艦にちなみ「あきづき」型となるのか、「あまつかぜ」型となるのか、防空巡洋艦の名を継いで「いすず」型となるのだろうか。

Img_7143  閑話休題、『むらさめ』型以降の汎用護衛艦は、ステルス性に配慮し、対空対潜ミサイルを次弾発射性能に優れているとされるVLS方式にて運用、満載排水量は遂に6000㌧を越え、8000㌧クラスの米海軍イージス艦と並んでも遜色無い艦容を誇っており、同型艦9隻から成る『むらさめ』型の就役により、ミサイル護衛艦『こんごう』型とともに、海上自衛隊の新時代を切り開いた印象がある。

Img_2456  『たかなみ』型は、『むらさめ』型に続いて5隻が建造され、主砲を3インチ砲から5インチ砲として改めた他、VLSの前甲板への集中配備、ヘリコプター格納庫の設計変更による運用の柔軟性の付与、さらに艦内の居住性なども向上させ、続く『ひゅうが』型ヘリコプター護衛艦とともに、あたらしい護衛隊群への地盤を固めつつある。

Img_2730  しかしながら、大型化、高性能化は必然的に価格の上昇を招くもので、『たかなみ』型の建造費用は650億円に達している。5000トン型護衛艦も満載排水量では6800㌧に達する大型艦であり、同種の各国水上艦と比べると価格は抑えられているものの、750億円から、今後の鋼材価格などの上昇を踏まえれば900億円程度まで価格が上昇する可能性も示唆されている。この価格の問題は大きく、限られた防衛予算では潜水艦などの調達を断念しなければ、年間1隻の建造が限界となっている。

Img_7579  現在、海上自衛隊では、『はつゆき』が艦齢26年、『さわかぜ』『しらゆき』『ゆうばり』が艦齢25年、『みねゆき』『さわゆき』『はまゆき』『ゆうべつ』が艦齢24年、『いそゆき』『はるゆき』が艦齢23年、と、艦齢24年を区切りとする護衛艦にあって、冷戦時代末期に建造した護衛艦が一斉に寿命を迎えつつあり、果たして、高性能・高価格である5000トン型護衛艦の建造が、退役する護衛艦を数的に補いつつ、防衛大綱の水準を維持できるかが微妙なところとなってきている。

Img_5634  対照的に、高性能・高価格から脱却し数を揃える事ができたのが、陸上自衛隊である。慢性的な装甲車不足が指摘されていた陸上自衛隊では、35㍉機関砲と対戦車ミサイルを武装とし熱線暗視装置により高度な夜間戦闘能力も有する89式装甲戦闘車を制式化したものの、世界最高峰の性能とともに、導入当時から近年まで世界で最も高価な装甲戦闘車という状況に陥り、量産数が激減、配備部隊も全国で数個中隊という状況となっていた。

Img_0802  そこで、陸上自衛隊では性能はある程度最小限のものに留め、火力は携帯火器に頼り、路外機動力も89式のような装軌式と比して劣る装輪式を採用した小型装甲車である軽装甲機動車を制式化した。最小限の96式装輪装甲車以外は、軽装甲機動車の調達に思い切って切り替え、その分大量調達を実現した。これにより、普通科部隊は北方からの脅威を最も受けていた北海道の数個普通科連隊を除き装甲化出来ないという状況を脱し、全国の師団、旅団をある程度装甲化することを達成した。

Img_2561  海上自衛隊は、汎用護衛艦の満載排水量について、70年代の『やまぐも』型2750㌧・『みねぐも』型の2800㌧から、『たかつき』型の3950㌧、80年代の『はつゆき』型では4000㌧、『あさぎり』型の4800㌧、そして『むらさめ』・『たかなみ』型では6000㌧台へと大型化を重ねてきたが、その分コストも増大している。対潜能力と対空能力など、どうしても価格に響く部分で削れない分野は多いものの、今後は、高性能・大型化から思い切って脱却し、満載排水量で5000㌧に収まるような、よりコンパクト化、低コスト化を重点として設計する必要もあるのではないか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする