■DDH-143 SHIRANE
ヘリコプター搭載護衛艦しらね、本艦は、しらね型護衛艦のネームシップとして1980年に就役した護衛艦で、満載排水量は7200㌧、全長159㍍の船体は、前部に二門の5インチ単装砲、中央部に艦橋と航空機格納庫を有し、後部は長大な飛行甲板、艦底には大出力低周波ソーナーOQS-101を搭載、という構造。
しらね型護衛艦は、はるな型護衛艦とともに3機のヘリコプターを運用するヘリコプター搭載護衛艦として整備され、特にシーレーン防衛を第一任務として装備体系を整備してきた海上自衛隊にとって、対潜哨戒に大きな威力を発揮するヘリコプターを運用する母艦は、“はるな”“ひえい”“しらね”“くらま”という四隻のヘリコプター搭載護衛艦全てが四個ある護衛隊群の旗艦という位置づけを担っている。
そして、横須賀基地に配属された、しらね、は隣接するアメリカ海軍横須賀施設に前方展開している第七艦隊旗艦ブルーリッジとの姉妹艦関係にあり、ヘリコプター護衛艦しらね、は、横須賀第1護衛隊群旗艦であると同時に、いわば海上自衛隊の旗艦的な存在という位置づけを有する。
この護衛艦しらね受難となったのは火災事故であった。2007年12月14日2220時頃、横須賀基地の吉倉桟橋に停泊していた護衛艦しらね艦内で火災が発生、夜間は施錠されるCIC(戦闘指揮所)内部の民生品保温庫から出火し、火災は八時間に渡り延焼、ハロンガス消火では対処出来ない火勢であったことから放水による消火を決断、結果、火災と放水によりCIC区画の電子機器が全損し、修繕費は一時は最大200億円と見積もられ、除籍も検討された。
しかしながら、除籍護衛艦からCIC区画の電子装備移植を受けることで50億円程度にて現役復帰が可能であるとされ、今年三月に修理の為、横須賀基地を出港、横浜磯子のIHIマリンユナイテッド横浜工場に入渠した。写真は、磯子海釣公園から撮影。しらね艦橋周辺を中心に上部構造物全体に足場が組まれている。
上部構造物は、見た限り大きな変更や損傷は無い。戦闘効率性を高めるべくCICとセントラルコンピュータに集中させたシステム艦として建造された本艦であるが、この部分が損傷を受けると艦全体の機能が麻痺してしまうという可能性が指摘されていた。なお、本艦は損傷区画の修理を行うと共にある程度の艦齢延長工事も併せて実施する予定である。
IHIマリンユナイテッド横浜工場では、新ヘリコプター護衛艦ひゅうが、が建造されている造船所として知られるが、撮影に展開した0830時の時点では、ヘリコプター護衛艦ひゅうが、は公試を行うべく出港していたようだ。さて、高額の税金を必要とする“しらね”修理には、賛否両論があるが、費用対効果だけでは是非を問えない命題が多くあることもまた事実であり、本艦の修理は、その典型的な事例と考える次第だ。
HARUNA
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