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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省 防衛予算平成21年度概算要求の概要 を発表

2008-09-01 22:05:34 | 防衛・安全保障

■防衛予算概算要求

 福田内閣が辞職する意向のようだ。衆院選に向けての対応だろうか。グルジア情勢が、ロシアと上海協力機構の関係性に波及している中、日米中のトライアングル構造を背景に、親中政策を進めた福田政権に終止符が打たれるのは、時期的に考えさせられるものもあるようにも思う。さて、閑話休題、本日は防衛予算概算要求について掲載したい。

■防衛省改革

 防衛大臣を初めとする政治任用者、防衛省文官、自衛官の三者が審議し、防衛大臣による政策決定を補佐する防衛会議の新設。

Img_1034  一方で制度上形骸化している防衛参事官制度を廃止し、三名以内の防衛大臣補佐官制度を開始する。防衛装備品の透明性と競争性を確保するライフサイクルコスト管理室、一般輸入調達の専門部署である輸入調達課を防衛省装備施設本部に新設する。

 自衛隊情報保全隊として陸海空自衛隊の情報保全隊を統合。更に防衛省カウンターインテリジェンス委員会を新設し、情報の集約と共有化を図る。

 これらの防衛省改革を実施する為に、防衛省改革総括官、防衛省改革推進室を設置する。

■防衛力の質的向上

 F-15戦闘機の近代化改修に重点を置いている。予算措置として947億円を投じて22機の近代化改修を実施、38機のレーダー部品などを取得。

Img_198_7  4個飛行隊分のF-15改修型の装備化を急ぐ。加えて、集中して近代化改修を行うことで、60機分を年度毎に分割して調達した場合に比べ、部品費を1736億円から827億円に、改修費を902億円から882億円に圧縮し、結果929億円の圧縮に繋がると説明している。F-15は、近代化改修によりレーダー探知能力の向上、データリンクによる共同交戦能力の向上、新型ミサイルへの対応など、防衛力の質的向上に寄与する。

Img_6245  更にE-767早期警戒管制機のレーダー機能向上に71億円が投じられる。これはF-15近代化改修機とのデータリンク能力を向上刺せる、と説明されている。加えて、高運動ステルス機、いわゆる先進技術実証機「心神」の研究に104億円が計上されている。一方で、F-4戦闘機の後継となる新戦闘機F-Xは中期防衛力整備計画に7機の導入が計画されていたが、選定に時間を要している為21年度には着手しない。次期輸送機C-Xの開発も遅れているため、21年度には整備に着手しない、としている。

■国際貢献任務への対応

 国際平和協力活動のための装備品調達に178億円を要求。傷病者のヘリ機内での応急措置用の装備、野外での高度な医療活動を実施するための移動式医療システム、固定翼哨戒機の広域的な運用を実現する可搬式海上航空作戦指揮統制システム(MACCS)の整備が盛り込まれる。

Img_9291_1  加えて、(これは本文には明記されていないが、アフガニスタンへの派遣を多分に意図しているように思える)ヘリコプターエンジンの能力向上、輸送ヘリコプターの防弾板整備、IED(足跡爆発物)対処システムへの研究が盛り込まれている。また、アフリカのPKOセンターへの教官派遣協力準備への情報収集、コブラゴールド多国間演習への参加、国際平和協力演習の実施などが盛り込まれた。

Img_7346  加えて、NATO主催会議への参加、中国との実務レベルの交流などの防衛協力の推進や広報体制の充実なども明記されている。

 オスロプロセスのダブリン会議において採択されたクラスター弾規制への対応も盛り込まれた。まず、クラスター弾の処理方法の調査を実施し、さらにクラスター弾の後継として精密誘導能力を有する装備品の整備を予算概算要求に盛り込んだ。

■BMDに1279億円、インフルエンザ対策に44億円

 弾道弾防衛としてBMD対応イージス艦の改修継続、ペトリオットミサイルPAC-3の整備などなど。

Img_38_35  更にFPS-5レーダーの整備、ペトリオットミサイルPAC-3の維持整備隊製構築、効果的な部隊展開の保持とともに、システム能力の検証制度導入。イージスBMDシステムの訓練用ソフトウェアの導入などが要求。

 インフルエンザの大規模感染に対応するべく、まず、輸送機や輸送艦人員の感染防止装備、医療支援に際して必要な器材の導入、加えて、自衛隊の組織機能維持のための薬品やマスクの調達が盛り込まれている。

■第15旅団発足、第9師団の改編

 沖縄の第1混成団が第15旅団に改編される。人員は1800名から2100名に増強され、混成群が普通科連隊に改編され、偵察隊、施設中隊、通信隊、化学防護隊が新設される。

Img_0805  青森の第9師団は、装備を大幅に近代化するとともに戦車と火砲を大幅に削減し、普通科部隊を強化した編成に改編される。また、四国善通寺の第14旅団に第14飛行隊が新設される。徳島にヘリ部隊が配置されるという構想だ。この改編により、陸上自衛隊の機甲装備体系が新防衛大綱の水準に近付くこととなる。他方で、第14飛行隊の新設により、中部方面隊全体のヘリコプター数は若干増加することとなるのだろう。

■ゲリラコマンド対処・災害対処

 無人偵察機の導入などに1120億円、NBC攻撃に対処する予算として95億円が要求される。

Img_3454  新規に固定翼指揮の偵察用小型無人機(UAV)の導入が新規に要求される。また、ゲリラ対処用に車両搭載用リモートウェポンステーションの研究が新規も盛り込まれる(これは軽装甲機動車や96式装輪装甲車用の遠隔操作式銃塔などを意識しているのだろうか)。加えて、機動妨害システムの研究に着手することが求められている(恐らく、現行の管制地雷システムの有効運用を期したもの)。

 NBC対策に、天然痘ワクチンの導入、化学剤監視装置や化学防護車、遠隔地医療支援システムの装備、訓練などに95億円が要求される。

 大規模災害に備え883億円が要求される。救難捜索機としてUS-2救難飛行艇、人員輸送用にCH-47輸送ヘリコプターを整備し、災害対処能力として自衛隊統合防災演習の実施などを盛り込んだ。

■宇宙へ、海洋へ

 防衛政策局に宇宙政策検討体制の充実を盛り込み、加えて技術研究本部に宇宙技術計画室を設置。

 衛星を活用した統合防空システムに関するシュミュレーションの実施、宇宙開発利用に関する調査研究などを実施する。

 海洋基本計画への取り組みとして、防衛大学校に海洋法担当教授の増員、護衛艦、特別機動船(複合高速艇)、回転翼哨戒機の整備などを行い、海上保安庁との連携を強化する。

■RMAへの取り組み

 自衛隊のRMA分野への取り組みとして1274億円の予算が要求されている。

Img_3014  陸上自衛隊の新しい職種として、情報科を新設する。これは、普通科、特科、機甲科のような部隊職種に情報科を加えることであり、情報部門の人材を確保し、機能強化を行うことが狙いである。また、情報本部におけるアフリカ地域への情報能力の強化を行う。

 戦闘機搭載用の自衛隊デジタル通信システムの開発や、前述したIED対処システム構成要素の研究を新規研究として盛り込む。

 加えて、より高度な情報通信体制の構築として2013億円が要求され、特に中央指揮システムの換装が行われる。

■米軍再編関係

 米軍再編関係では、グアム移転事業、国内での再編関連措置が盛り込まれている。

Img_2475  海兵隊のグアム移転事業室の新設。普天間飛行場のキャンプシュワブへの移設、嘉手納飛行場以南の土地の返還、厚木航空基地より、米空母艦載機の岩国航空基地への移転、相模原総合補給処の一部返還、嘉手納飛行場所在の米軍機訓練の一部本土移転、地域振興策。また、キャンプ座間への中央即応集団司令部の移転、横田基地への航空自衛隊航空総隊司令部の移設、航空自衛隊車力分屯基地への米軍ミサイル防衛用レーダーの配置などが盛り込まれる。日米安全保障協議委員会の関係経費も予定通り盛り込まれる。

■環境対策・教育

 基地周辺対策経費として、環境整備に846億円、住宅防音に350億円。在日米軍駐留経費負担に1947億円が計上。防衛施設用の借料、訓練などの補償経費として1291億円が計上。

 人材強化として自衛官補制度の導入、障害を受けた隊員の社会復帰を支援する職業能力対策センターの設置などが行われる。また、託児所などの設備整備の強化など。

 防衛研究所の研究部第7研究室の設置を行い、加えて欧州安全保障研究機関との交流やNATO国防大学国防関係学校長会議への参加などを行う。防衛大学校の米国士官学校への長期留学の各銃を行う。防衛医科大学校の22年度の独立行政法人化の準備も行う。

■装備調達の合理化

 短期集中調達による装備調達コストの低減を実施する。

Img_1862  F-15の近代化改修を22機分行うことで929億円の節減、護衛艦二隻分の装備品を一括発注することで119億円の節減、護衛艦用垂直発射アスロックの三ヵ年分を短期集中調達することで60億円の節減が可能、としている。敷設艦を商船規格にて建造することで106億円の節減。加えて、各種救急車などの車両の共通化や装備品のライフサイクルコスト抑制を考慮した部品の採用などが挙げられた。これらの努力により平成23年度までに18年度と比較して15%のコスト低減の達成を期する。また、可能な限りの業務の民間委託、自衛隊生徒体制の見直しや自衛官定数を計画に沿って767名削減し、人件費などを縮減する。

■主要装備品

 陸海空自衛隊の主要な装備品調達について、数量を列挙する。

Img_7324  まず航空機関連。陸上自衛隊は、OH-1観測ヘリ×3(68億円)、UH-60JA多用途ヘリ×2(70億円)、AH-64D戦闘ヘリコプター×0、CH-47JA輸送ヘリ×4(269億円)、新練習ヘリ×1(4億円)。海上自衛隊は、P-1哨戒機×0、SH-60K哨戒ヘリ×5(281億円)、US-2飛行艇×1(120億円)、T-5練習機×5(13億円)、回転翼練習機×3(29億円)。航空自衛隊はF-15近代化改修(947億円)、F-2戦闘機のJDAM運用能力付与×12(16億円)、E-2C早期警戒機の改善×1(4億円)、E-767早期警戒管制機のレーダー機能向上×1(71億円)。

Img_7664  艦船について。護衛艦(新汎用護衛艦)×2(1515億円)、潜水艦×0、掃海艇×1(154億円)、敷設艦×1(290億円)、むらさめ型護衛艦のSAM改修×1(8億円)。誘導弾関係。03式中SAM×2中隊(390億円)、91式携SAMB×41(20億円)、96式多目的誘導弾システム×1(20億円)、中距離多目的誘導弾×20(74億円)、01式軽MAT×67(38億円)。空自は、ペトリオット維持(170億円)、JDAM整備(2億円)。

Img_67_82  陸上自衛隊の主要装備。89式小銃×0(一括取得による)。対人狙撃銃×159(2億円)、5.56㍉機銃MINIMI×405(9億円)、12.7㍉重機関銃×80(5億円)、81㍉迫撃砲×12(2億円)、120㍉重迫撃砲×4(2億円)、99式自走榴弾砲×8(76億円)、90式戦車×8(66億円)、軽装甲機動車×180(55億円)、96式装輪装甲車×16(23億円)、87式偵察警戒車×4(10億円)、化学防護車×4(8億円)、車両や通信及び施設器材等に952億円。加えて、航空自衛隊が基地警備用に軽装甲機動車を23(8億円)。

■技術研究本部研究開発

 注目すべきは、近接防空用のレーザーシステムの研究、車両用リモートウェポンステーションの開発、そして続く先進技術実証機の開発に関するものであろうか。

 自衛隊デジタル通信システムに35億円、03式中距離地対空誘導弾改の開発に26億円、先進技術実証機の研究に104億円、高出力レーザーシステム構成要素の研究に19億円、車両搭載用リモートウェポンシステムステーションの開発への研究に12億円、機動妨害システムの研究に8億円、IED対処システム構成要素の研究に4億円が要求されている。

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