北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

USS DDG-85 McCampbell (ARLEIGH BURKE CLASS)

2008-09-27 23:25:20 | 在日米軍

■更に11隻を追加建造

 満載排水量で14000㌧に達するズムウォルト級駆逐艦、3000㌧未満の船体に50ノット以上の速力と投射能力を内包させたフリーダム級,インディペンデンス級沿海域戦闘艦がコスト高騰となり、事実上建造中のものを除き整備計画はキャンセルというかたちとなった。

Img_8820  特にズムウォルト級駆逐艦は、米議会予算局の見積で建造単価が50億ドルに達するとみられ、当初見積もりの32億ドルでも高すぎるとされた中で、建造の中止は致し方ないと見られている。代案として、無難なアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の11隻追加建造が決定することとなった。アーレイバーク級は62隻が就役もしくは建造中であり、更に11隻が発注されれば73隻の一大勢力を構成することと成る。

Img_8822  写真はDDG85マッキャンベル、イージス艦であるアーレイバーク級にヘリコプター格納庫を追加設計したフライトⅡAに属する一隻で、満載排水量9200㌧、全長155.3㍍、ガスタービン四基二軸によるCOGAG方式を採用しており、出力は105000馬力で最高速力は31ノット。アーレイバーク級はもともと、ヘリコプター運用能力を欠いていることが構造上の難点とされており、フライトⅡAよりヘリコプター2機の格納庫を配置している。乗員は366名。

Img_8826  フライトⅡAは、コスト低減の為に搭載艇を安価な複合艇に改め、ハープーン四連装発射器、曳航式パッシヴソーナー(TASS)、20㍉CIWSをコスト低減の為に省き、極力安価な艦を目指している。しかしながら、ヘリコプター二機をV字型に配置し、その中間部分にミサイルを内蔵した垂直発射器(VLS)を配置するなど、やや無理があるようにも思える。

Img_8829  駆逐艦としては破格の大きさを誇るアーレイバーク級ミサイル駆逐艦であるが、イージスシステムはそれ以上に大きく、艦内の余裕や居住性、将来の発展性には限界があると指摘もされていた。もともとが、アーレイバーク級は冷戦時代に津波のようなソ連航空部隊の波状攻撃から艦隊を防護する目的で建造された、いわば冷戦時代の一種の応急艦ともいえた。

Img_8836  この点、ズムウォルト級以降は、スプルーアンス級のような余裕のある設計を採用し、将来的な改修と近代化に対応させることで、より長い期間を運用出来るべく考えられていたのだが、他方でコスト高騰とともに、原油価格の高騰が将来のライフサイクルコストにも影響を与えることとなった。冷戦後は、フロムザシー戦略に基づき、戦力投射こそが次世代の要求と考え、これに沿った装備を各国が模索、米海軍も同様の流れにむけ研鑽していたが、実際には太平洋正面では対潜任務の重要性が再認識されつつある。この点、アーレイバーク級以降の水上艦に関する再検討の機会を改めて受けたとも言え、同様の道筋を同じ太平洋において歩むだろう日本にとっても、今後の米海軍水上艦体系の進展に興味が持たれるのではないか。

HARUNA

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コメント (2)
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