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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦車とは 欧州通常戦力削減条約にみる火砲の定義

2007-12-17 16:21:15 | 国際・政治

■第三回:火砲の定義

 戦車と軽戦車の定義、装甲車の装甲人員輸送車・装甲歩兵戦闘車・重装甲戦闘車への三類型について、二回に分けて記述したが、今回は火砲の定義について述べたい。

Img_6381  火砲は、大きく分けてカノン砲と榴弾砲があり、江畑謙介氏の「兵器の常識非常識 陸軍・海軍兵器編」(並木書房 1998)によれば、目標に向けて弾を発射するのに、間接照準方式(直接目標を見ずに砲の照準を行う方法)を使うのが榴弾砲、直接照準方式がカノン砲である。としている(P-55)。英語ではカノン砲はCANNON、榴弾砲はHOWITZERと記載して区別する。また、最近ではカノン砲を単純にGUNと呼称する場合がある。

Fh020013  しかしながら、目標が遠方からも望見出来る対要塞戦やジュネーブ条約に抵触する可能性がある市街地攪乱砲撃ならば別として、今日の砲撃は第一に対砲兵戦、第二に戦闘支援(攻撃準備射撃や攪乱射撃、突撃破砕射撃など)というように、基本的に直接照準が出来ない小型目標に対する任務が主柱となり、榴弾砲の中にも非常に砲身が長く、いわゆるカノン砲の特徴を備えた榴弾砲が多くなっている。これをGUN/HOWITZERと呼称する。

Fh030008  火砲の定義について、欧州通常戦力削減条約ではどのように定義しているのだろうか。第二条F項では、「火砲」とは、主に間接照準射撃により地上目標を攻撃することの出来る大口径のシステムをいう。この種の火砲システムは諸兵連合部隊に不可欠な間接照準火力支援を行う。としている。特にこの条約が締結された1990年には火砲の射程が増大し、基本的に間接照準射撃が砲兵の任務となっていたことがこれに反映されているとみることができよう。

Img_8257  大口径火砲システムとは、口径100㍉以上の榴弾砲、加農砲、加農砲と榴弾砲双方の特性を兼ね備えた火砲、迫撃砲及び多連装ロケットシステムである。この他、二次的なものとして間接照準射撃能力を有する将来の大口径照準射撃システムは全て、火砲の上限数の対象として数えられるものとする。ここでF項は終わり。自走砲と牽引砲の区分はこの条約には無いようだ。

Img_2471  口径100㍉以上の火砲に迫撃砲も含むため、例えば107㍉迫撃砲や、陸上自衛隊の主力重迫撃砲である120㍉迫撃砲RTもこの火砲の定義に含まれる。迫撃砲をこの火砲の上限に含めているのは、旧ソ連軍の240㍉迫撃砲などの大口径迫撃砲の存在が背景にあるといえる。なお、間接照準射撃能力を重ねて記載しているということは、直接照準で対戦車戦闘を主任務とする106㍉無反動砲は火砲の定義に含まれないことを暗に示しているようだ(欧州でほ保管装備として多数の無反動砲が装備されている。)

Img_1154  火砲には、牽引砲と自走砲が存在するが、自走砲は不整地突破能力に優れ、また砲塔装備型の自走砲は、その多くが装甲防御力を有していることから、対砲兵戦においてやや有利な点を有しているが、牽引砲の多くはヘリコプターにより空中機動が可能である。戦略機動能力も長距離の移動にはトランすポーターが必要な自走砲(ただし、近年は装輪式の自走砲もあり一概に必要とはいえない)に対して、中砲牽引車などを利用して戦略展開が可能な牽引砲にも有利な点は多い。

Img_8070  多連装ロケットシステムも火砲に含まれている。瞬間的に広域を面制圧できるロケット砲は、開発当初はその低い命中精度から、面制圧以外に用途は少なかったが、近年では風力測定や評定技術の改良により、無誘導のロケット弾によっても突撃破砕射撃などの砲兵任務が可能となっている。

 第4回は、これまでの三回の類型に含まれない装備について、記載したい。

HARUNA

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