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「ひゅうが」配備横須賀か舞鶴か? 護衛艦「しらね」火災事故と「はるな」老朽化

2007-12-26 17:48:53 | 防衛・安全保障

■「ひゅうが」は「しらね」後継?「はるな」後継?

 12月14日に発生した横須賀基地を母港とする第1護衛隊群旗艦「しらね」の火災事故では、艦橋のCICが全焼するという重大な事故であったようだ。

Img_9953  12月14日夜、横須賀基地に停泊中の護衛艦「しらね」のCIC(戦闘指揮所)レーダー画面周辺より火災が発生、消火活動に当たった三曹と海士長がそれぞれ煙を吸うなどして軽傷、病院に搬送された。火災は出火から実に八時間を経て15日0500時頃に鎮火したとのことである。現在までの報道を見る限り、出火場所は火の気がないことから、電気系統がショートした為ではないか、とされている。横須賀基地では、1994年4月7日に潜水艦「はましお」が配電盤から火災を起こした、という事故以来の大規模艦艇火災事故となった。

Img_0011  ヘリコプター護衛艦「しらね」型は、各ウエポンシステムを統括する強力なコンピュータを搭載したシステム艦として設計されており、事実就役当初からの環太平洋合同演習などでは高い評価を受けているとされるが、1980年代からの水上戦闘艦艇は対艦ミサイル攻撃などにより上部構造物を破壊された場合、被害を局限化する構想からコンピュータを分散させる構造を採用している。しかし、「しらね」型はCIC部分に中央コンピュータを搭載した設計を行っている為、対艦ミサイルが上部構造物を直撃した場合、全艦機能麻痺に陥る可能性が海事専門家から幾度か指摘されている。

 今回の火災事故では、八時間に及ぶ火災鎮火までの過程で、CIC設備は全損したとされている。また、報道などをみると、消火の決め手となった多量の水を消火に用いた事でCIC下の区画も冠水状態になったとのことである。これにより、恐らくシステム艦としてのシステム中枢が破壊された可能性が生じる。また、規模は不明ながら、八時間に及ぶ延焼により、上部構造物そのものに対して、熱による変形などの可能性も考えられる。

Img_1177  「しらね」は1980年3月就役。「こんごう」型ミサイル護衛艦が就役するまでは海上自衛隊最大の護衛艦であり、ヘリコプター運用設備を有することから、観艦式では二番艦「くらま」とともに度々、総理大臣が乗艦した。艦齢は27年である。海上自衛隊の護衛艦隊は、横須賀の第1護衛隊群、佐世保の第2護衛隊群、舞鶴に第3護衛隊群、呉に第4護衛隊群が置かれ、機動打撃部隊としての性格を有している。その旗艦として、1980年3月就役の「しらね」が横須賀に、1981年3月就役の「くらま」が佐世保に、1973年2月就役の「はるな」が舞鶴に、1974年11月就役の「ひえい」が呉に配備され、任務にあたっている。

Img_7202  「はるな」「ひえい」は「はるな」が1986年3月~1987年10月、「ひえい」が1987年8月~1989年3月にかけ、艦齢延長特別改装(FRAM)が行われ、戦術データ処理システムの搭載や、水上レーダーなどの改修が行われたが、「しらね」「くらま」はFRAMを行っていない。しかし、「はるな」は1973年就役ということもあり、老朽化が進んでいることから16DDHとして建造が進められる新型護衛艦「ひゅうが」の就役とともに現役を退くこととなっている。

 ここで問題なのは、システム中枢艦でありながら、そのシステム中枢、場合によっては上部構造物に構造的損害を受けている可能性がある「しらね」の修理を行うか、という問題である。護衛艦は通常、24年が寿命とされてきた。これを「はるな」型はFRAMにより乗り越えてきているわけだが、艦齢27年の「しらね」の補修を行うことが長期的に見てどうか、ということである。

Img_6445_1  無論、思いのほか損害が軽かった、という場合も考えられるが、重かった場合はどうするか、「はるな」を「ひゅうが」型二番艦に代替させ、「しらね」を「ひゅうが」に置き換えるというのが、一つの考え方としてはあるかもしれない。しかし、ドックに入っての定期整備、護衛艦は蒸気タービン艦は三年に一度、ガスタービン艦は四年に一度、この定期整備を行うこととなっているが、「はるな」は前の定期整備から四年経っており、現役に残るのであれば、定期整備が必要となる。この点、「はるな」定期整備の費用と「しらね」補修の費用を比較することになるのだろうか。

Img_9106  聞くところでは、「ひゅうが」は横須賀配備となるようで、横須賀基地ではちょうと地方総監部前にて大型桟橋の工事が進められている。時期的に観て「ひゅうが」用の桟橋と考えるのが自然で、「しらね」が舞鶴の回されるのでは、という声を聞いた。「はるな」の部品を「しらね」に流用、という方法も考えられなくは無いが、「秋月」型駆逐艦の時代ではあるまいし、これは現実的に考えにくい。

 もう一つ、考えうる対応策は、「しらね」をこの機会に徹底して護衛艦隊旗艦用に近代化改修してしまうという案。護衛艦隊旗艦「さわかぜ」が1983年就役であるから、非常に非現実的ではあるが、広大なヘリコプター格納庫部分に司令官が搭乗する一機分の収容スペースを残し、旗艦設備に充ててしまう事。格納庫上に配置されたシースパロー発射機を撤去すれば、将来の大容量通信設備の増設にも対応できるのではないか、第七艦隊旗艦「ブルーリッジ」が1970年であることを考えると、こんな案もありなのかな、と。半ば冗談で書いてみました。

 で、「はるな」は広報用に呉基地あたりで記念艦。格納庫スペースだけを展示に使えば、建築基準法もクリアしやすいし、艦隊勤務が敬遠される今日この頃、広報は重要でっせ!・・・、無理?。

HARUNA

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