ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『デカ☆黒川鈴木』2012

2019-08-08 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2012年の冬シーズン、日本テレビ系列の木曜深夜「木曜ミステリーシアター」枠で全13話が放映された、読売テレビ制作による40分枠の刑事ドラマ。滝田務雄さんの警察小説『田舎の刑事シリーズ』を原作とし、大宮エリーさんが全話の脚本を担当。

片田舎の小さな警察署を舞台に、板尾創路さんがクールな敏腕刑事=黒川鈴木を演じてます。その着想の面白さが全て、ではないでしょうか?

謎解きメインの刑事物なんて、舞台設定とキャラクター造形=世界観でしか個性を発揮しようが無い(それを除けばどれも同じ)ですから、そこでツボを外したら、もうアウト。

板尾さんがオチャラケ抜きで知性派デカを渋く演じる分、部下の白石刑事=田辺誠一さんが弾けたキャラで笑いの要素を引き受け、仲の悪い両者に挟まれ翻弄されるスタンダードな若手刑事=赤木を、当時売り出し中だった田中 圭くんが演じてます。

放映当時は三人の食い合わせがイマイチ良くない気がして初回しか観なかったんだけど、今あらためて第4話まで観てみると、じわじわ染み込んでくる可笑しみが結構クセになります。

田辺誠一さん演じる白石刑事がとにかくアホでw、渋くキメてる黒川に茶々を入れ、ペースをかき乱す役割なんだけど、警察官としてあまりに不真面目だしアホ過ぎて、当時は不快に感じたんですね。

だけど今となっては、田辺さんの卓越したコメディーセンスがこれほど存分に発揮された作品は珍しいし、決してでしゃばらない田中圭くんの名アシストぶりもさすがだし、何より板尾創路さんの敏腕刑事ぶりに違和感がまったく無いのが逆に笑えます。

良家のお嬢様なのに安月給の黒川と結婚し、きっつい毒を吐きながらもエコノミー生活に堪え忍ぶ妻=静江に扮した鶴田真由さんのコメディエンヌぶりも見もので、基本はありがちな謎解きストーリーでも決して退屈はしません。40分枠(正味30分)で展開も早いですからね。

交通課婦警に藤本 泉、署長に斉木しげるが扮するほか、毎回のゲストも釈由美子、熊切あさ美、中村ゆり、佐藤寛子、三津谷葉子、岩佐真悠子、高橋かおり、酒井若菜といった美女たちに、遠藤章造、中川礼二、木村祐一、ぼんちおさむ、品川 祐、山崎邦正といったお笑い畑の人らが悪役として絡む構図も楽しく、飽きが来ません。(吉本興業が制作協力に名を連ねてます)

こういうユニークな作りなら、謎解きドラマも決して悪くありません。テレビ番組は今や、より自由度の高い深夜枠の方が確実に面白いですね。

セクシーショットは、黒川いきつけの居酒屋で働くバイト娘に扮した、ファッションモデル出身でAKBオタクの岩崎名美さんです。
 
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『俺の空/刑事編』2011

2019-08-07 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2011年の秋シーズン、テレビ朝日系列の日曜深夜「日曜ナイトプレミア」枠で放映された全9話の刑事ドラマ。本宮ひろ志さんの同名漫画を実写化した作品です。制作はテレビ朝日&MMJ。

日本屈指の大財閥「安田グループ」の御曹司=安田一平(庄野崎 謙)が、一族の掟に従い1年間で「正義とは何か?」という自らの命題への答えを見つけるべく、警視庁京橋警察署刑事課にコネで配属され、総理大臣をも動かす安田グループの人脈と財力を駆使し、暴力団や政治家が絡む大事件を解決していく痛快アクション。

しかし、そんな荒唐無稽なお話をドラマ化するなら、徹底して大真面目にバカをやらなきゃ駄目なんだけど、本作はちょっと中途半端だったように思います。

まず、深夜枠の番組=低予算ゆえか、安田グループの金持ち描写がショボい。主人公がヘリコプターで初出勤するファーストシーンからして、よく似た設定の『富豪刑事』が本物のヘリを使ってたのに対して、こちらは安っぽいCG処理。セットも衣裳も同様で、そこで圧倒的なスケール感が出せないと説得力がない。説得力がないとバカバカしさが笑いに繋がらない。

そして安田一平の婚約者である御前グループ総師=御前一十三(夏菜)にしても、地方検事となって一平を支援する武尊グループ次期総師=武尊善行(永井 大)にしても、わざと漫画そのまんまの「コスプレ」をしてウケを狙ったみたいだけど、単に浮いてるだけで豪快にスベっちゃってますw

ストーリーは警察幹部も絡む人身売買組織との対決というシリアスなもので、ちゃんと燃える展開もあるだけに、中途半端にフザケたりせず徹底して熱くやるべきでした。そうすればきっと笑えた筈ですw

それより何より残念だったのは、オーディションで2700人の応募者から選ばれたという、主役の新人俳優さんに全く魅力が感じられないこと。

オーディションはあえて「芸能経験ゼロの新人」を対象にしたそうで、演技が拙いのは仕方がない(もしかしたらそれもウケ狙い? だとしたらもっと下手な人を選ぶべきでした)にしても、大財閥の御曹司にはぜんぜん見えないし、眼を見張るようなイケメンでもないし、アクションも大して上手くないしで、言っちゃ悪いけど毎週チャンネルを合わせたくなる吸引力がまったく無い。

タレント人気に頼りきったドラマ作りがはびこる中、あえて無名の新人を抜擢したチャレンジ精神は素晴らしいと思うだけに、それで選ばれたのが(言っちゃ悪いけど)コレ?って思うとなおさら残念です。もしかすると出来レースだったのかも知れないけれど……

しかしその分、脇を固めるレギュラー陣には魅力的な俳優さんたちが揃いました。一平に恋心を抱く同僚刑事に国仲涼子、先輩刑事に松重 豊、泉谷しげる、課長に尾美としのり、マルボー担当刑事に遠藤憲一、フリージャーナリストに高知東生、一平の父親に大杉 漣、といった面々。

特に松重さんと遠藤さんの武闘派刑事ぶりが頼もしく魅力的で、安田一平抜きでこのお二人のバディ物にした方がよっぽど面白いかも?って、言っちゃ悪いけど思いました。

刑事ドラマがいよいよ謎解きゲーム一辺倒になりつつあった中、アクション路線の刑事物をやってくれること自体は本当にありがたく、だからこそもうちょっと何とかならんかな?っていう不満ばかりが眼につく、実に惜しい作品でした。
 
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『だから私は推しました』#01~#02

2019-08-06 00:00:06 | TVドラマ全般









 
2019年の夏シーズン、NHK土曜深夜の若者向け30分ドラマ「よるドラ」枠でスタートした全8話の新ドラマ。

日々「インスタ映え」するレストランでの食事やイケメン婚約者とのラブラブ画像をSNSにアップし、無理して「リア充」を演じてきたアラサーOLの愛(桜井ユキ)が、その婚約者に捨てられ、ヤケ酒を煽った挙げ句にスマホを紛失。

で、それを拾ってくれたアイドルオタクの「小豆さん」(細田善彦) に会いに行ったその場所は、地下アイドルグループ「サニーサイドアップ」のライブハウスだった!

元気に唄い踊る5人の地下アイドルたちの中で、歌もダンスも明らかに下手くそなのに無理してるハナ(白石 聖)の一見みじめな姿を見た愛は、これまでの自分自身を重ねずにいられず、つい八つ当たりして野次を飛ばしちゃう。

だけど自分みたいにクサったりせず、不器用ながら懸命に前を向いてるハナの姿を見る内、自然と涙が出てきた愛は、ライブに通って全力でハナを応援していくことを誓います。

ゾンビ、そしてボーイズラブと、NHKらしからぬ題材をビビッドに扱ってきた「よるドラ」の第3弾は、大好評だったドラマ10『トクサツガガガ!』と同じく、深いオタク沼にハマった独身OLの奮闘記となりました。

ただし、ストレートなオタク応援歌でファンタジックとも言えた『トクサツガガガ!』とは趣が大きく異なり、ハナが相当タチの悪いストーカーにつきまとわれ、なのに守ってやろうともしない運営陣のいい加減さ等、キラキラした世界の裏側にある暗い現実も描いたシビアな作品になりそうです。

『トクサツガガガ!』の主人公(小芝風花)は周囲への「オタばれ」を恐れてはいたものの、ひたすら自分の好きな道を邁進する、ある意味たくましいスーパーヒロインでした。

それに対して本作の主人公=愛は、黒木華さんが『凪のお暇』で演じてる主人公と同じで、つい周りの空気に合わせて自分を偽ってしまう等身大の弱いヒロイン。こちらの方がより現実的、現代的と言えましょう。

そんな彼女が、自分とよく似た「ぽんこつ」アイドルのハナに元気と勇気をもらい、いかにもヤバそうなストーカー問題に立ち向かっていく。

しかも物語は、警察で刑事(澤部佑w)の取り調べを受ける愛の「自供」に沿って進んでいく、言わばミステリー仕立て。愛はどうやらストーカーを階段から突き落として重傷を負わせたらしく、なぜ彼女が、どういういきさつで犯行に至ってしまったのか?っていう「謎解き」で視聴者を引っ張る仕掛けになってます。

普通に考えれば、ハナに対する想いが両者ともエスカレートしてしまい、愛がそうしなければハナを守りきれなかった、っていういきさつになるんだけど、残りはまだ6話ありますから、多分そんな一筋縄じゃいかない事でしょう。

ハナがソロのアイドルじゃなく、5人グループの一員であることがポイントのような気がします。残りの4人(松田るか、松川星、田中珠里、天木じゅん)がただの脇役で終わるとは思えませんから。けど、あんまりドロドロした話にはなって欲しくないですよね。

単純に、愛が自分の人生を犠牲にしてでもハナを守りたかった、その結果であって欲しいです。そしたら多分、私は泣いちゃうと思います。ストーカー野郎はもう、死ねばいいw

いずれにせよ、そんな悲劇を招きかねない地下アイドルの運営やストーカー対策の現状など、放置されたまんまの現実問題に一石を投じる作品になることは間違いなさそうです。

事件の謎解きはともかくとして、愛とハナがどんな風に変わっていくか気になるので、これは最終回まで見届けることになりそうです。

主演の桜井ユキさんは2011年頃から活躍されてる女優さんで、多部ちゃんの映画『ピース オブ ケイク』('15) 等にも出演されてますが、連ドラの主演は本作が初。これで一気にブレイクされる事でしょう。

ヌード&濡れ場は '17年の主演映画『リミット・オブ・スリーピングビューティー』より。相手役は高橋一生さんです。
 
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『これは経費で落ちません!』#02

2019-08-05 00:00:06 | 多部未華子








 
第2話の森若さん(多部未華子)は、会社の広告塔として華々しく活躍する広報課のエリート社員=皆瀬さん(片瀬那奈)が、メディア出演時に大盤振る舞いする豪華衣裳や贅沢な差し入れ、さらに本来買う必要の無い高性能カメラ等に使った「経費」に物申すことになりました。

衣裳や差し入れの贅沢さは会社のイメージアップや現場の士気向上に役立ってはいるものの、撮影業者が使うカメラまで広報課が所有する必要はどこにもありません。

そこに疑問を抱いた折りも折り、皆瀬さんの夫が売れない映画監督であることを知ってしまった森若さんは、今回も「ウサギを追うな」という座右の銘に逆らって真相を追い、カメラも含め皆瀬さんが会社の経費で買った機材やレジャー用品の数々が、旦那の売れない映画のロケ現場で使われてることを突き止めちゃうのでした。森若さん、刑事になった方が出世するかも知れませんw

けど、普段から経理部とは対立しがちな自分をやっつける絶好のチャンスなのに、なぜ何も言わないの?と問う皆瀬さんに、森若さんはいつも通り淡々と答えます。

「そういったことは私の仕事ではありませんので」

森若さんはさらに、皆瀬さんのアシスタントを務める契約社員=室田さん(真魚)が、正社員になりたい一心で(いわば点数稼ぎの為に)自腹を切ってショールームの装飾をやってる事実も突き止めちゃう。

そういう雑費もちゃんと計上しないと問題に繋がる可能性があるんだけど、森若さんは彼女に経費の請求を促すだけで、それ以上のことは何も言わない。

そう、森若さんはただ、自分に与えられた職務を果たしてるだけ。前回は山田くん(重岡大毅)の不倫疑惑を晴らしてあげたけど、それも領収書の正当不当を判別するという自分の仕事をしたに過ぎないんですよね。

でも、それが結果的に社員たちを、引いては会社を救うことになってる。会社の為に働くのが社員なんだから、これほど真っ当なことはありません。

社員たちから持ち込まれる領収書を細かくチェックする経理の仕事が、小うるさいと疎まれがちな現実をどう思うのか、広報課による社内報のインタビューで問われた森若さんは、淡々とこう答えます。

「平気ではないです。嫌われるよりかは好かれたいです。でも、私は経理部員です。くまなく経費をチェックして、他部署から疎まれるのなら、それも私の仕事の内です。人から好かれるのが仕事ではないので」

思えば当たり前のことなんだけど、それを当たり前と割りきって実践出来てる人は少ないかも知れません。

森若さんを見てると気持ちがいいのは、どんなにキツい物言いをしようが、そこに自分が認められたいとか、相手よりも優位に立ちたいとかいう「我」が全く見えて来ないから。あくまで万事、会社の為なんですよね。さらに彼女は言います。

「ただ、人から好かれるのが仕事の人もいます。例えば会社の顔である広報課員は、天天コーポレーションの広告塔として、いい印象を持たれるのも仕事の内です。誰にでも出来る仕事ではありません、少なくとも私には絶対にムリです」

これは皆瀬さんや室田さんがそばで聞いてるのを意識して言ったのかどうか判らないけど、森若さんが絶対に嘘やおべんちゃらを言わないことをよく知ってる彼女らの心を動かしたみたいです。きっと彼女らは変わるでしょう。

「誰にも出来ない特別な仕事をする為に必要な経費もあります。だからこそ、その予算を無駄な物にではなく、少しでも効果的な物に使って欲しいと、私は思います。本当に正しいと胸を張れるものに、堂々と、会社の大事なお金を使って欲しいです」

そして最後に「自分にとって仕事とは?」という締めのコメントを求められ、森若さんが言ったセリフがこれ。

「仕事とは、きっちりと働いて責任を果たし、働いた分の給料を、適正に貰うことです」

あまりに当たり前のことを言うもんで一同が拍子抜けしちゃうんだけど、いやいや、実はそれこそが一番難しい事なのかも知れません。このドラマのメインテーマは、きっとそこにあるんでしょう。

『これは経費で落ちません!』っていう番組タイトルはやや好戦的に感じるけど、これは経理部が他の部署をギャフンと言わせるドラマじゃなくて、むしろ如何に会社を縁の下で支え、懸命に守ってくれてるかを描いたドラマ。

そして真っ当に働いてる人が(あまりに真っ当すぎて変人扱いされてたのが)やがて真っ当に評価され、たぶんプライベートでも幸せを掴んでいくサクセスストーリー。言わば『君に届け』の社会人バージョン。

と同時に、会社員として働くという事がどういう事なのかを、あらためて基本から問い直すドラマでもあり、全国の働く人たち、特にモチベーションを失いがちな人たちに観て欲しい作品ですよね。職場で撮ったふざけた動画をネットに流すようなおバカさん達には猫に小判だろうけど。

そんな真摯なメッセージを、極上のエンターテイメントに仕立てみせた第一級品のドラマであり、その基本姿勢が崩れない限り、これから多少の中だるみや脱線があろうとも今季ナンバーワンの座は揺るがない、と私は思います。

そして女優・多部未華子の真骨頂が見られるドラマとしても久々&会心のヒットで、前回は「声と台詞回し」の魅力について書きましたが、今回はあの『デカワンコ』以来となる多部ちゃんの、これまたトップレベルと言える「顔芸」が堪能できるレアな回となりました。

感情表現を苦手とする主人公がテレビ等に出演する羽目になり、取ってつけたような硬い笑顔で場を凍らせるみたいなシーンは『サザエさん』等でもよく見られるコメディーの定番であり、それを今あえて(しかもNHKで)堂々とやれたのは、ひとえに「多部ちゃんなら絶対にスベらない」という確固たる自信がスタッフにあったからだろうと思います。

そう、多部ちゃんの顔芸は絶対にスベらない。なぜなら「見る人を怖がらせる笑顔」を完璧に表現できるだけの顔面スキルもさることながら、それで人を笑わせようなんていう下心を、彼女はいっさい持ってないから。

私は表情豊かな女優さんが大好きで、森若さんの後輩社員=佐々木さんを演じる伊藤沙莉さんもその1人。多部ちゃん&沙莉ちゃんの顔面演技が堪能できるだけでもう満足で、そのツーショット場面では多部ちゃんの表情に注目したあと、沙莉ちゃんの表情を観る為にまたリプレイしなくちゃいけないから大変ですw

そんなお二人の上に吹越満さん、平山浩行さんという芸達者なベテランが揃う経理部に、欠員補充で入って来るらしい新入社員をいったい誰が演じるのか、メチャクチャ楽しみです。(大根乳首男じゃないことを祈るばかり)

そんなワケで、今回のセクシーショットは伊藤沙莉さん。『トランジットガールズ』『ラストコップ』『ひよっこ』『恋のツキ』等、そんなに幅広く連ドラを観てるワケじゃない私が、ここ数年で頻繁にお見かけする実力派若手女優さん。コメディをこなせる彼女は確実に息長く活躍されていくだろうと思います。
 

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『太陽にほえろ!』#236

2019-08-04 00:00:08 | 刑事ドラマ'70年代







 
☆第236話『砂の城』(1977.1.28.OA/脚本=柏倉敏行&小川 英/監督=竹林 進)

広田というジャーナリストが自宅マンションで撲殺され、事件当夜に被害者の部屋から出ていく姿を目撃された、縫製工場に勤める独り暮らしの女性=西条景子(倉野章子)に、スコッチ(沖 雅也)が任意同行を求めます。

具体的なアリバイが無く、当夜のことはよく憶えてないと言う景子に、疑惑の眼を向けるスコッチ。

「西条さん。独り暮らしの人間には、夜は長いもんだ。夕べの何時に何処にいたか、よく憶えてる筈ですがね」

ところが、被害者が犯人と揉み合った際に付着したと思われる、爪に残った血液と、景子の血液型が一致しない。真犯人は別にいると見て間違いないんだけど、スコッチは納得しません。

「例え犯人じゃないとしても、彼女は嘘をついてる」

殺された広田は建設業界に精通するジャーナリストで、汚職をネタに複数の人間を脅迫し、金銭を要求していました。

↑ このパターン、ほんと多いですよねw サスペンス系のドラマにおける、殺人事件の被害者が殺された理由トップ3には確実に入るでしょう。

それはともかく、景子も何らかの理由で広田に強請られていたと仮定すれば、彼女がマンションを訪ねたことを隠すのは当たり前じゃないか?というゴリさん(竜 雷太)の指摘に、スコッチは反論します。

「それだけの事だったら、とうに彼女は崩れてます。彼女の嘘の中には、もっと強い何かが……」

広い東京の片隅で、小さなアパートに独りで暮らし、つがいの小鳥を大切に飼っている景子。同じように、サボテンが唯一の家族だったりする孤独なスコッチだからこそ、彼女が何かを必死に守ろうとしてることを直感したのでしょう。

ボス(石原裕次郎)は、景子のプライバシーを決して侵さない、という条件付きで、スコッチの捜査続行を許可します。

「大丈夫かよ、あいつ?」

↑ っていうゴリさんの不安を、我々視聴者も共有せずにいられませんw 何しろ登場時のスコッチは、相手が一般女性であろうがいっさい容赦しない非情な男でした。

やがて、景子が建設会社で課長を勤める川村(横光克彦)という男と交際してることが判明します。その川村も血液型は犯人と一致せず、確かなアリバイもあるんだけど、それでも今回の事件と川村は何か関係があると、スコッチは直感します。

もし、川村が広田に何らかの理由で強請られ、その交渉を景子に代行させていたとすれば、辻褄が合う。つまり、景子は恋人をかばう為に嘘をついてる、という仮説に、三度の飯より女性が大好きなボン(宮内 淳)が嬉しそうに頷きますw

「何となくホッとしたんです。あんなに慎ましく生きてる女性が実は悪女だなんて、やっぱり思いたくないですから」

そんなボンに苦笑しながら、スコッチは言います。

「悪女じゃないから、よけい厄介なんだ」

景子が必死に守ろうとしてるのが川村との関係であるとすれば、彼女は絶対に真実を明かさない。なぜならその真実は、川村が広田に強請られていた理由に直結し、彼の犯罪を暴いてしまう事になりかねないから。

捜査が行き詰まる中、景子が何者かの車に跳ねられそうになります。

景子が命を狙われた、すなわち彼女は事件当夜に犯人を目撃していると睨んだスコッチは、ボスの命令を無視して本領を発揮し、彼女を徹底的に追及します。が、それでも景子は頑なに口を閉ざします。

スコッチは更に、川村が会社の金を200万円も使い込み、それをネタに広田から強請られてた事実を突き止め、そんな大金が必要になった理由が女絡みのトラブルだった事まで暴いちゃいます。川村はそれで景子にまで、なけなしの貯金を貢がせてる。

景子の前で事実を暴露され、うろたえ、絶望し、いよいよ本性を表した川村は、あっさりと彼女を突き放すのでした。

「俺だってお前どころじゃない、自分のことで手一杯だ!」

後に警視庁特命捜査課の紅林刑事となり、国会議員にもなる男とはとても思えない言い草ですw

「あなたのせいよ! こんな事になったのもみんなあなたのせいよ!!」

景子は、川村ではなくスコッチを責め立てます。どうやら彼女は、自分が川村に利用されてることを以前から承知の上で、彼を愛してたみたいです。

「この東京で……独りで暮らしてる女の気持ちが解りますか? 毎日毎日、砂を噛むような暮らし……」

スコッチは、ただ黙って景子の恨み言を聞きます。

「あの人は、私に優しかった……例えうわべだけでも、優しかった……あの人の為なら、お金なんか惜しくなかった」

刑事部屋でも、ゴリさんが「あいつは情が無さすぎる!」とスコッチを批判しますが、彼とずっと一緒にいたボンがフォローします。

「滝さんは言ってました。あの二人の愛は、砂で造った城みたいなもんだって。いくら大切でも、どうせ崩れるんだから、早く崩れた方がいいって」

景子のプライバシーには踏み込まないよう、スコッチはスコッチなりに我慢してたんだけど、彼女が命を狙われてしまう事態に至り、あえて「砂の城」を崩す悪役を買って出たワケです。

「東京での独り暮らし……西条景子の砂を噛むような暮らしが、誰よりもあの人にはよく分かってるんです。彼女を傷つけたくないと一番思ってるのは、本当は滝さんだと僕は思います」

だけど、スコッチを恨む景子はますます貝のように口を閉ざし、とても証言してくれそうにはありません。それでもスコッチは、彼女のアパートを徹夜で張り込みます。なぜなら、再び真犯人が彼女を狙って来る恐れがあるから。

案の定、犯人が送りつけて来た爆弾を、自ら命を張って処理するスコッチ。そんな姿を見て、景子はようやく心を開き始めるのでした。

「どうして、私を守ろうと? 私はずっと、あの人を憎んでいたのに……」

「憎まれるように、そういう風にしか出来ない人なんです。滝さんって、本当はすごく優しいのに」

ボンのフォローも功を奏し、覚悟を決めた景子の証言によって真犯人が逮捕され、一件落着。それを報告しに来たスコッチに、景子は初めて心からの笑顔を見せます。

「私、もう一度やり直します。今度こそ寂しさに負けないで、生きてゆきます。自分にも人にも嘘をつかないで」

そう言って元気に出勤する景子の後ろ姿を見送り、スコッチも笑顔を浮かべます。

今こそ難物スコッチと親睦を深めるチャンスだと思ったのか、車でやって来たボスが「送ってやるよ」と声を掛けますが、スコッチは「いえ、今日は非番ですから。1人にして下さい」とあっさり却下w

「ここんとこ放ったらかしだったんで、今日はゆっくり話をしたいんです。サボテンと」

こいつ、やっぱりただのサイコ野郎じゃないのか?と思いながらw、スコッチの去りゆく後ろ姿を見送り、彼を七曲署に引っ張った事をまたもや後悔するボスなのでしたw(おわり)


第225話『疑惑』でトラウマの克服が描かれて以来、かなり久しぶりのスコッチ主役回となった本作は、彼の心優しい側面がやたら強調して描かれた印象があります。ちゃんと観てればフツーに解るような事でも、いちいちボンが台詞で解説しちゃうんですよねw

それは登場時のスコッチがあまりに非情で、かつ沖雅也さんの演技が極めてリアルだった為、スコッチと沖さんに嫌悪感を抱く視聴者が予想以上に多くなっちゃった事に対する、番組サイドからの「本当は違うんだよ」っていうメッセージだったんだと思います。

現在でさえ、ドラマ上の役柄と俳優さんご本人のキャラを混同しちゃう視聴者は多いですから、40年以上も前(!)ともなれば尚更でしょう。私自身(当時小学生)もそうだったし。

ましてこの時期の『太陽にほえろ!』は視聴率が常時30%を超える絶頂期で、ハンパじゃない影響力があり、沖さんに対する誤解や風当たりも相当なものがあった筈で、説明過多は承知の上でフォローしておく必要があったんでしょう。

先にレビューしたデューク(金田賢一)編の『加奈子』にもそういう意味合いがあったと思うし、ジプシー(三田村邦彦)に至っては登場した次の回で早くもフォローされてましたw そうして懇切丁寧に視聴者と向き合わなきゃいけないのが、高視聴率番組のツラい所かも知れません。

逆に言えば、これほど念入りにフォローしなくちゃいけない位に、登場時のスコッチは本当に怖かったワケです。万人に愛されたテキサス(勝野 洋)の後釜にそんなキャラをぶつけた『太陽』は、やっぱり凄い!とあらためて思います。

ヒロインを演じた倉野章子さんは、当時29歳。文学座の所属で、地味ながら確かな演技力が重宝され、『太陽にほえろ!』には番組初期から、後のオーストラリアロケ編も含め実に8回!もゲスト出演されてます。

どちらかと言えば時代劇の出演が多く、『太陽』以外の刑事ドラマは『Gメン'75』へのゲスト出演が1回あった程度。よっぽど『太陽』とは相性が良かったんですねw

後に同じ文学座の角野卓造さんと結婚。女優活動は一旦休業されるも、'95年から舞台を中心に活動を再開されてます。画像のヌードは、'74年のモノクロ映画『戒厳令』(吉田喜重 監督)より。美しいですよね。
 
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