ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

「沖 雅也 in 太陽にほえろ!'77」

2019-08-17 12:00:16 | 刑事ドラマ'70年代






 
スコッチ第1期、すなわち『太陽にほえろ!』スコッチ&ボン編の、中盤から終盤にかけてのスコッチ刑事(沖 雅也)です。

相変わらず眼光は鋭いんだけど、序盤に見られた刺すように冷たい感じや、怖いほどの凄みはなりを潜め、代わりに哀愁が漂う眼つきに変化してます。

台詞で語らずとも、眼の演技だけでキャラクターの微妙な変化を的確に表現出来る、沖雅也さんはとても優れた俳優さんでした。

スコッチがいるかいないかで、番組のクオリティーが明らかに違ってました。演技力だけじゃなく、一挙手一投足がいちいち格好良くて、そこにいるだけで画面が締まる。マイコン刑事(石原良純)とは正反対ですw

そういう意味じゃ山さん(露口 茂)と双璧を成す存在で、スコッチも山さんもいなくなった終盤の『太陽にほえろ!』がスカスカに感じちゃうのも、まあ当然と言えば当然かも知れません。

やっぱり、そういう人がいるかいないかだけで、番組のクオリティーが大きく違ってくる。役者さんの存在はホントに大きい。特に刑事ドラマは、それに最も左右され易いジャンルかも知れません。

最終話『さらば、スコッチ!』では、スコッチがサボテンを愛好するようになったキッカケが、かつての婚約者=敏子(夏 純子)からのプレゼントだったことも明かされました。

今の感覚で見ると、サボテンに話しかける独身男の図はやや「キモい」んだけどw、実はサボテンに別れた彼女を投影してたんだと解釈すれば……やっぱキモいかw

後の殉職編でも、サボテンはスコッチの「愛」を象徴する重要なアイテムとして登場しており、そこに死んだ敏子の魂が宿ってるみたいに解釈すれば、また違った感動が生まれるやも知れません。
 
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『太陽にほえろ!』#244

2019-08-17 00:00:08 | 刑事ドラマ'70年代









 
スコッチ刑事=滝 隆一(沖 雅也)、第1期におけるラスト・エピソードです。

『太陽にほえろ!』史上初となる、新米じゃない「中堅刑事」としての登場、そして熱血『太陽』イズムを真っ向から否定し、七曲署のチームワークを乱しまくる、言わばマンネリ打破のカンフル剤となる使命を背負ったキャラクター。スコッチ=沖雅也さんは、半年間でその役目を見事に果たされました。


☆第244話『さらば、スコッチ!』

(1977.3.25.OA/脚本=桃井 章/監督=小澤啓一)

冒頭で拳銃を持ったチンピラを殿下(小野寺 昭)と一緒に追い詰めたスコッチは、敵が撃つ前に拳銃を発砲し、無事に逮捕はしたものの、署長の西山警視(平田昭彦)にこっぴどく叱られます。

着任時に比べれば大人しくなったスコッチだけど、すぐに発砲しちゃう手癖は相変わらず。そんなの西部署や港署じゃ日常茶飯事なんだけどw、品行方正がモットーの七曲署は許してくれません。

堪忍袋の緒が切れそうな署長は、いよいよスコッチに転勤話を持ち掛けて来ます。七曲署みたいに毎週事件が起こらない、へんぴな所轄として知られる山田署の捜査課が、折しも欠員補充を要請中なのでした。

「ま、山田署あたりでノンビリやるのも、1つの生き方だと思うがな」

山田署の人たちに対して失礼かつ嫌味な言い草だけど、まぁ七曲署の署長は歴代こんなキャラなんですw

それにしてもスコッチは、藤堂チームにすっかり馴染んだように見えたのに、この発砲癖だけは克服出来ないもんなのか?

「傷痕だよ」

山さん(露口 茂)が、しばらく言及されなくて視聴者が忘れかけてた、スコッチの「トラウマ」をあらためて解説してくれました。

3年前、城北署にいたスコッチは先輩刑事と一緒に拳銃を持った犯人を追い詰めたんだけど、自分が発砲をためらったせいで先輩が撃たれ、殉職してしまった。(登場時は1年前って言ってたけどw、今回のストーリーに合わせて設定を変更したんでしょう)

そのトラウマから、スコッチは敵に拳銃を向けられると反射的に撃ってしまう。その癖がもう身体に染みついちゃってる。今回は特に、先輩の殿下と一緒にいるシチュエーションが、余計にそうさせたんでしょう。

「傷痕か……一生治らんのかね、奴の傷は」

殉職した先輩刑事の汚職疑惑を晴らした一件で、スコッチのトラウマは解消されたものと思ってたけど、そんな簡単なもんじゃなかったワケです。

その根っこにあるのは、人間不信。特に「追い詰められた犯罪者」に対する不信と警戒心は、長さん(下川辰平)が呟いたようにスコッチを一生苦しめるのかも知れません。

そんな折り、拳銃による殺人事件が発生します。被害者は暴力団・戸川組の幹部=関本で、撃ったのは戸川組が経営するスナックのバーテン=則夫(池田秀一)。どうやらその店のホステス=恵子(桂木梨恵)を巡るトラブルが原因らしい。

指名手配された則夫は19歳の未成年で、かつて彼を補導したことのある原町署の少年課刑事=北島敏子(夏 純子)が、応援として七曲署に派遣されて来ます。

則夫とは恋仲である恵子のアパートを張り込み中に、長さんから敏子を紹介されたスコッチは、愕然とします。それは別に、彼女がめっぽう美人だからじゃありません。

スコッチは、城北署の前には原町署に勤めており、敏子とは同僚だったのです。この若さで少なくとも3つの署を渡り歩いてるスコッチは、ジプシー刑事(三田村邦彦)も顔負けのジプシーぶりですw

とにかく一緒に恵子を張り込む事になったスコッチ&敏子ですが、元同僚の仲なのに2人はほとんど口を聞きません。珍しくスコッチの方が先に口を開き、則夫について尋ねます。

敏子は、則夫が関本を撃ったのは「事故」だと断言します。則夫は気の優しい少年で、自分の意志で人殺しをすることは有り得ない。そう信じる敏子は、彼を説得して自首させる為にやって来たのでした。

「甘いな。人は追い詰められたら何をするか分からない。たとえ事件前は気の優しい青年だったとしても、今の彼は一匹のケダモノだ」

「……変わったのね、隆一さん」

敏子は、スコッチのことをファーストネームで呼びました。そう、敏子はスコッチの、かつての恋人。いや、それどころか、将来を誓い合った婚約者だったのです。ボス(石原裕次郎)たちはその事実を知りません。

やがて恵子が外出し、二人が尾行すると、則夫が姿を現します。尾行に気づいた則夫がすぐに拳銃を取り出し、スコッチも反射的に銃を抜くのですが……

「やめて!」

敏子にしがみつかれた弾みで、スコッチは拳銃を暴発させてしまい、その弾丸は通行中のトラックに命中! フロントガラスを粉々にしちゃいます。

「やめて、お願い! 殺さないで!」

「いい加減にしろっ!!」

敏子を振り払って則夫を追うスコッチですが、逃げられてしまいます。

「何だねコレは藤堂くぅーんっ!!!」

ついに堪忍袋の緒を切らせた西山署長が、新聞を振り回しながら雄叫びを上げますw その新聞には「街中で刑事が発砲」「あやうくドライバーが巻き添えに」「無謀な逮捕劇」などと書かれており、そりゃ署長がハイパー激怒するのも無理ありませんw

署長はすぐさまスコッチを山田署に飛ばそうとしますが、ボスが何とか食い止めます。ここ半年、スコッチのフォローでボスは大忙し。内心では「頼むから山田署に行ってくれ」って、実は思ってるかも知れませんw

とりあえず、ボスのお陰でスコッチは捜査を続行。敏子が恵子に付き添い、スコッチはアパートを表で張り込みます。

部屋で恵子と二人きりになった敏子は、彼女が麻薬中毒者であることに気づきます。問い詰めると、恵子は戸川組の関本に騙されて麻薬を使うようになり、それを知った則夫が警察に相談しようとした為、関本に拳銃で消されそうになった。則夫はその時に抵抗し、揉み合ってる内に撃ってしまったらしい。

やはり、則夫の犯行は事故だった。敏子はそう確信し、スコッチには知らせずに、恵子と一緒に則夫と密会します。そして彼の口から、七曲署のマルボー担当刑事=高沢が事件に関与していた事実を聞き出します。

則夫は、恵子にクスリをやめさせようとして、高沢刑事に相談を持ち掛けたんだけど、その高沢が実は戸川組と内通してて、関本に知られてしまい、あの事件を招いてしまった。

そんな則夫の主張を、敏子は全面的に信じた上で、彼に銃口を向けられながら必死に自首を勧めます。

「関本を撃ったのは事故だったのよ。キミに人は殺せないわ。そうでしょ?」

心をこめた恵子の説得に、則夫は葛藤するんだけど、近づいて来たパトカーのサイレン音に逆上し、拳銃の引金を引いてしまう。発射された弾丸は敏子の腹部を貫くのでした。

「トコ! トコ! しっかりしろ!」

駆けつけたスコッチは、思わず婚約していた頃のあだ名で敏子を呼び、一緒にいたゴリさん(竜 雷太)を驚かせます。

虫の息で敏子は、高沢刑事の関与をスコッチに知らせるのでした。

「隆一さん……あの子はいい子よ……お願い、信じてあげて……あの子、騙されてたのよ」

ただちに敏子は病院に搬送され、スコッチが付き添います。

「どうして結婚しなかったんだ。3年前の事件か?」

原町署の署長から事情を聞いたボスが駆けつけ、問いかけますが、スコッチは言葉が出ません。ボスの言う通り、先輩刑事を死なせてしまった自分を許せなかったスコッチは、敏子を愛しながら一方的に別れを告げたのでした。

「ツラかったろうな、彼女」

「…………」

そこに、恵子を連れて逃走した則夫が廃ビルに立て籠ったという知らせが入り、スコッチは行こうとしますが、ボスに引き止められます。

「彼女のそばにいてやれ。これは命令だ!」

しかし手術の甲斐なく、敏子の延命は「絶望的」と診断され、スコッチはかつて愛した……いや、今でも深く愛してる彼女の、最期の言葉を聞くことになります。

「……本当に悪い人間はいないって……私……今でもそう信じてる……お願い……あの子を信じて……許してあげて」

そう言い残して、敏子は息を引き取るのでした。

「トコ! トコ! ……起きてくれ……起きてくれ……」

あのスコッチが、涙を流します。七曲署に着任した当初は、血も涙も無いように見えた男の、熱い涙。

一方、廃ビルに立て籠った則夫は、恵子を人質にしてすっかり逆上。まさに「追い詰められたケダモノ」状態で、いつ引金を引いちゃうやら分かりません。

ボスはやむなく、ライフル狙撃の準備をゴリさんに命じますが、そこにスコッチが駆けつけます。

「待って下さい! 撃つのはちょっと待って下さい。私が話をします」

「話すって、ヤツを説得しようってのか?」

「はい。お願いします!」

「敏子さんはどうした?」

「命令は守りました。最後まで……」

「最後まで?」

スコッチは、かつて「俺の味方はコイツだけだ」と言ってた筈の愛銃=コルト・ローマンをボスに託し、ビルの中へと飛び込んで行きます。

先の場面で自分を撃とうとした刑事の乱入に、則夫はますます逆上しますが、スコッチは丸腰のまま、彼と向き合います。

「話を聞け! 彼女は死んだ」

「!?」

「彼女は死ぬ直前まで、お前を信じていた」

「信じてた?」

「そうだ。お前は悪いヤツじゃない、信じてあげてくれ……それが彼女の最期の言葉だ」

「嘘だ! いい加減なこと言うなっ!!」

スコッチは、ゆっくりと則夫に歩み寄ります。

「俺もお前を信じる。お前が本当は人を殺せるような人間じゃないと。そう信じる!」

「来るな! 来ると殺すぞっ!」

いくら脅しても歩みを止めないスコッチに、則夫は夢中で引金を引き、弾丸はスコッチの片腕に命中します。物陰に潜む刑事たちが咄嗟に拳銃を構えますが、スコッチがすぐさま牽制します。

「撃たないでくれっ!」

立ち上がり、なおも近づいて来るスコッチに、則夫は再び発砲! 今度は足を撃たれ、満身創痍になりながら、スコッチはまた立ち上がり、血を流しながら歩を進めます。

「則夫……俺は彼女の代わりに此処にいる。お前を信じて死んだ、彼女の代わりに此処にいるんだ」

「…………」

その鬼気迫る姿に、則夫はもはや硬直状態。外でライフルを構えるゴリさんも指が動きません。

「本当に悪い人間はいない……彼女にそう教えたのは俺だ。彼女はそれを、最後の最後まで信じて……死んでいった」

「…………」

「だから俺は、お前を信じる。さあ、拳銃をよこせ……よこせ」

「……許してくれ……許してくれ!」

ついに則夫は、その場で崩れるように膝をつきます。彼を本気で信じきった、スコッチの気持ち、敏子の魂が、彼を救ったのでした。

本当に悪い人間はいないと、かつて敏子に教えたのは、ほかならぬスコッチだったという事実。そんな底抜けに優しい男だからこそ、彼は先輩を死なせた自分がどうしても許せなかった。自分だけが幸せになるワケにいかなかった。だから敏子との婚約を破棄したんですね。

こうして事件は解決しましたが、スコッチが七曲署で引き起こした数々の問題は消しようもなく、山田署への転勤が正式に決まっちゃいました。署長にしてみれば都合のいい厄介払いであり、ゴリさんやボン(宮内 淳)は納得出来ません。

「ヤツはもう立ち直りました。七曲署の立派な一員ですよ!」

「そうですよ! 信じられないなぁ、ボスがこんな人事をあっさり受け入れたなんて」

「逆だよ、ボン」

「は?」

いつものようにタップリ間を取りながら、山さんが渋く言います。

「ボスは、スコッチが立ち直ったからこそ、この人事を受け入れたんだ。スコッチは、どこへ行っても刑事としてやって行ける。そう判断したんだよ」

実際、ボスは「イヤなら行かなくてもいいんだぞ」と、署長のメンツを無視して言ってたんだけどw、スコッチは「どこの署にいようと、刑事であることに変わりはありません」と、あえて転勤を受け入れたのでした。

そして別れの挨拶もせずに七曲署を去って行くスコッチの表情は、実に晴れやか。敏子の遺志を受け継ぎ、最後まで則夫を信じきったことで、彼は今度こそ本当にトラウマを克服したワケです。

「スコッチ……さよなら」

署の屋上にいるボスがそう呟いた後、とても明るいというか、軽やかなファンファーレが鳴り響いちゃうラストシーンには脱力しましたけどw、これは決して悲しい別れじゃないんだっていう、創り手の想いを反映させた選曲なんでしょう。

もうちょっとカッコいい曲は無かったの?とか、余韻が台無しやん!とか当時は思ったけれど、この垢抜けなさもまた『太陽にほえろ!』の魅力じゃないかと、今は思えます。根っこは青春ドラマですからね。

それにしても本当に素晴らしいエピソードです。殉職じゃなく転勤編なもんであまり注目されないけど、人間・滝隆一を描いたドラマとしては殉職編より遥かに良く出来たストーリーで、『太陽』屈指の名作じゃないかと私は思います。何回観ても感動しますから。

ただしその感動は、初期スコッチのあまりに冷徹な姿が脳裏に焼き付いてるからこそで、2クールかけて描かれて来たドラマの到達点としての素晴らしさ。計算されたシリーズ構成の賜物ですよね。

中盤、スコッチのイメージアップを急ぎ過ぎたきらいはあるけど、それはテレビ番組としての責務だったでしょうし、後のジプシー刑事キャラ変の性急さとは比較にならないレベルです。

このレビューで第1期スコッチ編の素晴らしさが、皆さんにも伝わってくれていれば幸いです。

ところで、本作の3年後となる1980年に、スコッチは七曲署に帰って来ます。転勤先の山田署でも単独行動、命令無視を繰り返し、あわやクビになりそうなところを再びボスに拾われるワケです。

つまり、実はスコッチの問題行動に、過去のトラウマは全然関係なかった。単に困った人だったんですねw

北島敏子に扮した夏純子さんは、当時27歳。若松孝二監督によるデビュー作『犯された白衣』で早速ヌードを披露された後、日活の専属女優となり、同じ日活仲間の沖雅也さんとは'72年の映画『高校生無頼控』でもカップルを演じておられます。

刑事ドラマへのゲスト出演も『キイハンター』『東京バイパス指令』『非情のライセンス』『俺たちの勲章』『新宿警察』『夜明けの刑事』『明日の刑事』『華麗なる刑事』『新・二人の事件簿』『大空港』など多数。

純情派じゃない方の『はぐれ刑事』では沖雅也さん扮する影山刑事の相棒=風間刑事(平 幹二朗)の恋人役でレギュラー出演。道理で沖さんとは息ぴったりなワケです。
 
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『太陽にほえろ!』#242

2019-08-16 00:00:15 | 刑事ドラマ'70年代






 
☆第242話『すれ違った女』

(1977.3.11.OA/脚本=小川 英&高階秋成&鴨井達比古/監督=竹林 進)

信用金庫で2千万円の現金強奪事件発生! 犯人は1人。帽子とサングラスとロングコートで身を包み、拳銃で店員を脅し、「金をこの袋に入れろ」と書いたメモを見せた犯人は、一言も声を発しなかったと云う。

また、犯人は長身で厚化粧を施し、男性用オーデコロンの匂いがしたとの目撃証言もあり、藤堂チームの刑事たちは「女装した男」の犯行ではないかと睨みます。

そんな中、スコッチ(沖 雅也)だけが異を唱えます。初動捜査の際にスコッチは、男性用オーデコロンの匂いがする長身の若い女性とすれ違ったと言う。つまり犯人は「女装した男を装った女」ではないかと。

しかしスコッチが「すれ違った女」と、防犯カメラに写った犯人とは服装が違うし、そもそも女性が単独で銀行強盗をやらかすなんて、世界的にも例がない。

「だいたい、銀行強盗ほど割りに合わない犯罪は無いんだぞ? 危険は大きいし手掛かりは残るし金を使えば怪しまれるし、そんなものに女が手を出すとは……」

「あら、女ってそんなに計算高いと思ってるんですか?」

そう言って捜査会議に口を挟んだのは、女性週刊誌を手にしたアッコ(木村理恵)。その雑誌には、一文にもならない復讐に燃える、女が主人公の小説が掲載されてるのでした。

そこでスコッチが閃きます。

「外国の推理小説ですが、『ピンク・ミンク』という女怪盗のシリーズに、そっくりのストーリーがあります!」

つまり犯人は、その女怪盗の手口を模倣した女性なのか?

「いや、男がその小説を読んで裏の裏をかいたという事も考えられる」

刑事たちの意見が割れる中、駅のコインロッカーで犯行に使われた拳銃と衣装、そして奪われた現金がそのまま発見されます。拳銃には2年前に起きた殺人事件の容疑者=石岡の指紋が残っており、それが証拠となって逮捕された石岡は、どうやら今回の強盗とは無関係らしい。

石岡は2年前に、拳銃を公園に埋めたと供述しますが、その場所には2年前と違って植木が植えられていた。その植え込みは、近所のOLたちによる慈善グループ「緑の会」が植えたものらしい。犯人はその時に偶然拳銃を掘り出した、やはり女性なのか!?

やがて「緑の会」のメンバーに、スコッチがあの時すれ違った女=恵子(篠ひろ子)がいたことが判明します。

ところが恵子は、自分に強盗の容疑が向けられてる事や、当日に男性用オーデコロンをつけていた事をスコッチに指摘されても、全く動じません。

彼女の身辺を調べても怪しい部分は1つも無く、むしろ人並み以上に恵まれた境遇で、リスクを冒してまで強盗をやらかす動機が全く見えて来ません。

スコッチは例によって容赦なく恵子をマークしますが、彼女はそれを嫌がるどころか、自らスコッチを食事に誘ったりして、むしろ喜んで受け入れます。

それは多分、スコッチが小説に登場しそうなイケメン刑事だからで、ゴリさん(竜 雷太)や長さん(下川辰平)が相手なら対応が大きく違ったかも知れませんw

そうしてイケメン刑事との駆け引きを楽しむ恵子が、ただ一度だけ動揺したのは、高層階のレストランで食事を終えた時にスコッチが言った、この言葉を聞いた時だけ。

「あなたはここへ来て、一度もあの素晴らしい夜景を見なかった。なぜ?」

「えっ? だって……灯りが並んでるだけですもの」

一瞬、うつろな眼をした恵子を見て、スコッチは確信します。強盗犯は間違いなく彼女であること。そしてその犯行には、目的も動機も最初から無かったこと。

それだけに、何か決定的な証拠を掴まない限り、恵子を落とすことはまず不可能。だけど証拠は完璧に消されている……

スコッチは、賭けに出ます。恵子をドライブに誘い、車を海辺に停めて、彼女が模倣した推理小説『ピンク・ミンク』の話を持ち掛けます。小説の中では、真相に迫った敏腕刑事が最後に出し抜かれ、完敗します。

「小説の中で刑事が最後に言ったセリフは……キミはやっぱり泥棒だ。ボクの心まで盗んでいった……」

宮崎 駿さんは、この回を観て『カリオストロの城』の名台詞を思いついたとか思いつかなかったとか。

「それがキミの望みなのか? どうしても小説のように刑事を騙して逃げたいのか?」

そう囁きながらスコッチは、恵子の肩を抱き、ゆっくりと顔を近づけます。これがゴリさんなら即座にビンタを食らうところですがw、恵子は硬直して動けません。

やがて、二人の唇が重な……ろうとした瞬間、恵子は無意識に上着の襟をつまんで口元を隠すのでした。

「やっと出したな、この癖。何かに気を取られた時、キミには必ずこの癖が出る。写ってるんだよ、犯人のビデオ録画に。ハッキリと」

「…………やっぱり、小説みたいにはいかなかったのね」

ついに恵子は観念します。実は防犯ビデオにそんな癖は写っておらず、裁判では無罪になるかも知れないけどw、とにかく彼女は本心をスコッチに吐露するのでした。

「私、退屈だったんです。生きている気がしないくらい、退屈でたまらなかったんです」

退屈だった、なんて言うとゲーム感覚の犯罪みたいに聞こえるけど、彼女の場合は「虚しかった」と表現した方がしっくり来そうです。これも『太陽にほえろ!』における永遠のテーマ「大都会の孤独」の一編と言えましょう。

「でも、刑事さんに尾けられてる時は本当に楽しかった……退屈じゃなかったの。すごく楽しかった」

「…………」

彼女は盗んだ現金に全く手をつけず、わざと見つかるようコインロッカーに置いていた。むしろ彼女のお陰で2年前の殺人犯が逮捕され、ついでに信用金庫の汚職まで暴かれました。

まさにピンク・ミンク顔負けの大活躍をしたワケだけど、小説と違って現実は甘くありません。

例によって七曲署の屋上で物思いに耽るスコッチに、ボス(石原裕次郎)が声を掛けます。

「どうした? お前でも犯人を逮捕して辛くなる時があるのか」

「…………」

「しかしだ、誰かがそれをしなくちゃならんのだ」

『太陽にほえろ!』では珍しい、ちょっと色気のあるハードボイルド・ミステリーで、スコッチというキャラクター、そして沖雅也という俳優さん無くしては成立しなかったであろう名エピソード。

その相手役が篠ひろ子さんであることも、本作の魅力を倍増させてると思います。後にデューク(金田賢一)や喜多さん(寺尾 聰)の主役回で同路線のエピソードが創られますが、沖雅也&篠ひろ子カップルを超えるには少々ムリがありました。

篠ひろ子さんは当時29歳(クレジットは篠ヒロコ)。歌手から芸能活動をスタートし、女優として『時間ですよ』や『悪魔のようなあいつ』等のドラマで注目され、『俺たちの勲章』『華麗なる刑事』『特捜最前線』『明日の刑事』等の刑事ドラマにゲスト出演。『大都会/闘いの日々』と『誇りの報酬』ではレギュラーを務められました。

作家の伊集院静さんと結婚され、2000年代から芸能活動はされてない模様です。『ゆうひが丘の総理大臣』等の青春シリーズでも常連だったし、ゴリさんが出てた『金曜日の妻たちへ』やラガー(渡辺 徹)主演の『風の中のあいつ』、そして殿下(小野寺 昭)と夫婦役だった『毎度おさわがせします』等、『太陽』ファンにはお馴染みで、忘れられない女優さんの1人です。
 
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『太陽にほえろ!』#238

2019-08-15 00:00:30 | 刑事ドラマ'70年代







 
☆第238話『東京上空17時00分』

(1977.2.11.OA/脚本=小川 英&桜井一孝/監督=桜井一孝)

三千万円を強奪した指名手配犯=倉田(風間杜夫)が小島で発見&逮捕され、警察のヘリコプターでゴリさん(竜 雷太)が東京まで護送することに。

ところが、着陸予定地の目前でヘリが狙撃され、パイロットが重傷を負います。あわやヘリ墜落、ゴリさん絶体絶命!

ところが幸いにも、倉田がかつてヘリのパイロット志望者で実習経験があった為、彼の操縦によりヘリは無事に着陸。

それで一件落着かと思いきや、重傷のパイロットを救急車へ移動させてるスキに、倉田が再びヘリを離陸させた! 咄嗟に飛びついたゴリさんをぶら下げたままヘリは浮上、ゴリさん再び絶体絶命!

ここは明らかにノースタントで、竜雷太さんは恐らく命綱も無しで危険な撮影に挑んでらっしゃいます。現在のTVドラマじゃ周りが許してくれませんから、絶対に見られない捨て身のアクションです。

「着陸するんだ倉田! 馬鹿なマネはやめろ!」

「イヤだ! 俺は飛ぶんだ! このまま燃料が無くなるまで、どこまでも飛ぶんだっ!!」

何とか無事に乗り込んだゴリさんだけど、操縦する倉田はどうやら死ぬ気らしい。燃料は残りあと僅か、夕方5時には尽きてヘリは墜落してしまう。やっぱりゴリさん、絶体絶命!

後にボン(宮内 淳)を撃ち殺す犯人も倉田、スニーカー(山下真司)の妹を殺しちゃう犯人も倉田と、『太陽にほえろ!』の世界において倉田って名前の奴にはロクなのがいませんw 私の友人の倉田くんは変態でしたw

けど、この倉田が半年間潜伏してた小島の住民たちは、彼が犯罪者だとはとても思えないと、みんな口を揃えて言う。奪った三千万円も所持しておらず、その使い道=犯行の動機も謎のまま。

「汚ねえな、東京は……海も汚ねえ、街も汚ねえ、何もかも汚ねえ」

護送の途中、東京に近づいた時に呟いた、倉田の独り言。根は純情な男であるらしい彼に、いったい何があったのか?

着陸予定地でヘリを待ってた山さん(露口 茂)は、現場にいたある女性の姿を見た途端に倉田が動揺し、ヘリを離陸させたのを見逃しませんでした。なぜなら、山さんだからです。

そしてボンは、その女性が人気歌手の石井あかり(美原圭子)であることに気づいてました。なぜなら、女好きだからです。

石井あかりはテレビ局でヘリ狙撃のニュースをいち早く知り、現場に駆けつけていた。もしかすると倉田が三千万円を奪った動機、そして今ゴリさんを道連れに死のうとしてる理由も、彼女と関係あるのかも知れない。

そう睨んだ藤堂チームは、石井あかりの身辺を緊急捜査。結果、あかりの所属する芸能プロダクションの社長=斎村(蜷川幸雄)が、三千万円の借金を倉田の犯行直後に返済していたこと、そして倉田があかりとかつて恋仲で、彼女の成功と引き換えに自分は身を引いていたことも判明します。

「あかりは何も知らないんだよ、刑事さん。でも、俺が何もかも喋ったら、あかりはスターじゃいられなくなるんだ」

空の上で、倉田はようやく真相をゴリさんに明かします。三千万円あれば有名作曲家にあかりの新曲を創ってもらえるから、と斎村社長にそそのかされ、倉田は強盗を犯してしまった。それが世間にバレたら大スキャンダルとなり、あかりの歌手生命は終わってしまう。だから倉田を乗せたヘリが狙われ、それを察した倉田は自ら死のうとしてる。ゴリさんはとんだとばっちりですw

「倉田、彼女の放送の時間だ」

倉田は逃亡中、トランジスタラジオだけは手離さずに持ってました。あかりがレギュラーでDJを務める、夕方のラジオ番組を聴く為に。

「聴かないよ。せっかく決心したのに、彼女の声を聴いたらまた……」

ところが、ゴリさんが強引にスイッチを入れたラジオから聴こえて来たのは、あかりではなくボス(石原裕次郎)の声でした。

『倉田、死ぬのはよせ。石井あかりさんはもう全てを知ってしまった。解るか倉田? あかりさんは、石井あかりという名前も、スターの座も捨てたんだ。お前の為に全てを捨てたんだ』

「嘘だ! そんなこと嘘だ! そんな手に乗るもんか!」

『いま彼女は、最も海に近い大井の13号埋め立て地に向かってる。お前が無事に着水、あるいは着陸出来ることだけを祈ってだ。解るか倉田? あかりさんはな、お前の無事だけを祈ってる』

「…………」

『あかりさんは、お前の為に、もう一度やり直すと言ってる。今度こそ、本当の自分の力で、もう一度歌でやって行きたいと言ってる。倉田、彼女と一緒にやり直すんだ』

「…………」

涙を浮かべる倉田に、ゴリさんがゲキを飛ばします。

「大井13号埋め立て地だ。飛ぶんだ倉田! 飛んでしっかりと着地するんだ!」

ここで倉田はゴリさんと見つめ合い、力強く頷きます。

普通なら、そこは視聴者に見せないで、13号埋め立て地で待つ石井あかりや刑事たちの様子だけ見せて、倉田がどっちの道を選択するか?っていうスリルで引っ張るところなんだけど、それよりも彼の心情というか、生きる希望を取り戻した表情を見せることを優先するのが、青春ドラマ『太陽にほえろ!』たる所以なんですよね。

「刑事さん、見て! 来ます! こっちへ来ます!」

感激するあかりと一緒に空を見上げる、殿下(小野寺 昭)とスコッチ(沖 雅也)。

「あと5分遅れたら……」

「遅れたって時間の方が延びてくれるさ。これだけ皆で頑張ったんだからな」

いやいや、殿下、いくら頑張ってもそれだけは有り得ませんw けど、たった数時間で倉田と石井あかりの過去や芸能プロダクションの裏工作を調べ上げ、ラジオ番組をジャックしてメッセージまで流した藤堂チームの活躍は、頑張ったどころの話じゃありません。

ラストシーンは「太陽にほえろ!メインテーマ」をバックに飛来し、颯爽と着陸するヘリと、放送局のタワー前でそれを眺めながら、時間を確認するボスの高級腕時計=ロレックスがやたら印象に残りますw

ヘリが狙撃されてから約2時間というタイムリミットに向け、空と陸とで同時進行する必死の捜査、スリルとサスペンス、そして人間ドラマ。

長年チーフ助監督を務めて来られた桜井一孝さんが、自ら脚本を書かれた入魂の監督デビュー作であり、通常の4倍近い製作費を掛けた勝負作。当時の『太陽にほえろ!』の勢いと熱気がビンビン伝わって来ます。

メインゲストの風間杜夫さんは、当時28歳。子役から俳優人生を歩まれ、にっかつロマンポルノを経て数多くの映画、ドラマ、舞台に出演。1982年の映画『蒲田行進曲』で全国的に認知され、一躍人気俳優となられました。

刑事ドラマへのゲスト出演も多数。『太陽にほえろ!』は第168話、第207話に続く3度目の登場でした。

悪徳社長(劇中ではマネージャーと自称)に扮した蜷川幸雄さんは、当時41歳。元々は俳優さんで、やはり刑事ドラマにも多数ゲスト出演されており、『太陽~』は第131話に続く2度目のご登場。

確か杉村春子さんだったかと記憶しますが、大物女優さんに「尊敬出来なくなるから俳優業は辞めて欲しい」ってw、冗談混じりに懇願されたそうで、ご自身も演技者には向いてないことを自覚され、やがて演出業に専念。舞台演出家として「世界の蜷川幸雄」と呼ばれる存在になられました。

そして人気歌手「石井あかり」に扮した美原圭子さん(年齢不詳)は、小椋寛子の芸名で『飛び出せ!青春』にレギュラー出演されてた女優さん。

歌手に転向し、本作は「美原圭子」に改名して間もなくのゲスト出演。劇中で唄われた『ひとひらの雪』は、当時クラウンレコードよりリリースされてたご自身の持ち歌です。
 
 
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『太陽にほえろ!』#237

2019-08-14 00:00:11 | 刑事ドラマ'70年代






 
☆第237話『あやまち』(1977.2.4.OA/脚本=長野 洋/監督=竹林 進)

崖下で男の死体が発見され、その上の道路に車の急ブレーキ痕が残っていた為、藤堂チームは被害者が車に跳ねられて崖下に転落したと推測し、轢き逃げ事件として捜査を開始。

車の持ち主はアッサリ判明したものの、それが七曲署捜査第四係(マルボー担当)の刑事=水沢(谷 隼人)との結婚を間近に控えた婚約者=友子(紀 比呂子)だったもんで、披露宴に出席する予定のボス(石原裕次郎)が驚いた!

車は車検に出したままで、事故当夜は運転してないと友子は言う。整備工場の担当者も同様の証言をするんだけど、何やら嘘の臭いがする。

刑事たちの追及により、友子は男を跳ねたことを認めるんだけど、どう見ても軽傷だった為、その場で5万円を渡し、示談で済ませたと主張します。

しかし、それが本当なら、友子が車検を装い、工場の担当者に口裏を合わせてもらう、すなわち偽装工作をしてまで事故を隠そうとしたのは、かえって不自然じゃないか?と刑事たちは考えます。

友子には、リスクを承知の上でどうしても隠したい、何か重大な秘密がある……ボスは、厭な予感を覚えます。

友子の婚約者である水沢刑事は、七曲署の宿敵=竜神会を壊滅に追いやれるかも知れない捜査の正念場にあり、あと数日でその証拠が掴める所まで来てるらしい。そして友子は、整備工場の担当者に「3日間だけ口裏を合わせて欲しい」と頼んでいた……!

もう誤魔化せないことを悟った水沢は、ボスに真実を告白します。男を車で跳ねたのは水沢であり、警察官である彼の将来を守る為に、友子は自ら身代わりを買って出た。

けれども、その場の示談で事が片付いたのは本当で、事故が原因で被害者が転落死したのは絶対に有り得ない、という水沢の主張を、ボスは信じます。

「しかし、それでもお前は過ちを犯した。お前の最初の処置が正しければ、あの男は死なずに済んだかも知れん」

「…………」

水沢は、取り調べに当たったスコッチ(沖 雅也)に、本音を吐露します。

「俺は、竜神会を叩き潰すまでは、どうしても刑事を辞めたくなかった。この手であいつらを叩きのめすまでは、どうしても辞めたくなかったんだ!」

スコッチと水沢はタメ口で話しており、たぶん警察学校で同期生だったみたいな裏設定があるんでしょう。(沖さんと谷さんが共に『キイハンター』でレギュラーを務めた仲であることを反映させた?)

「3日だよ……あと3日ありゃ、それが出来たんだ。俺にとっては初めての大仕事だった。竜神会を叩き潰すことが、それが……」

そう言って泣き崩れる水沢の姿を見て、スコッチが立ち上がります。単独で竜神会の事務所に乗り込み、組員どもを全員1人残らずフルボッコにするのでしたw

この展開には少々面食らいました。別件での手入れを装い、水沢の捜査を支援する手掛かりを探るのがスコッチの目的だったんだけど、傍目には腹いせで殴り込みに行ったようにしか見えませんw

そもそも、スコッチってそんなに熱い男だっけ?って、イメージのギャップを感じちゃうんですよね。せめて、同期生なら同期生で、スコッチと水沢の固い友情関係を示唆するような、過去のエピソードがあれば良かったのにって思うけど、まぁ今回はスコッチの主役編じゃないですから、そこまで時間を割いて掘り下げるのもヘンかも知れません。

これも恐らく、前回に続くスコッチ&沖雅也イメージアップ・キャンペーンの一環なんですよね。他番組との掛け持ち出演で、しばらく出番が少なかったことの埋め合わせ、でもあったかも知れません。

そんなワケで私はちょっと戸惑いましたが、久しぶりに沖さんのシャープな立ち回りが見られたのは嬉しかったです。

さて、捜査は急転直下。被害者は、事故を目撃した第三者に撲殺された可能性が濃厚となり、数日前に彼と口論していた男に容疑が絞られます。

証拠も掴み、ゴリさん(竜 雷太)、殿下(小野寺 昭)、ボン(宮内 淳)が逮捕に赴くんだけど、この犯人が土木工事現場の肉体労働者で、メチャクチャ強い!

3人がかりで「ジーパン刑事のテーマ」まるまる1曲分も壮絶な格闘が続いて、ボンなんか合計10回ぐらい弾き飛ばされてるんですよねw(実際に数えたら6回でしたw)

番組後期になるとアクション描写はもっと淡白になり、2~3発のパンチでアッサリ済んじゃうのが当たり前になるんだけど、この時代はまだまだ力が入ってました。やっぱり、刑事ドラマは動いてナンボですよ!

こうして事件は解決しましたが、軽傷だったとは言え事故を隠蔽しようとした水沢の罪は消えません。今の自分に幸せになる資格は無いと考えた水沢は、警察官を辞めた上に婚約も解消し、独りで故郷へと帰る決意を固めます。

しかし、そうさせない為に身代わりを演じた挙げ句、一方的に別れを告げられた友子はたまったもんじゃありません。

「私達、そんなにいけない事したんでしょうか? もう、幸せを掴む資格さえ無いんでしょうか?」

正直に怒りと疑問をぶつける友子に、ボスは言います。

「私に言えることは1つだけです。彼に時間を与えてやって下さい」

「時間?」

「たとえ小さな過ちでも、否応なしに1人の人間の死と関わりを持ってしまった……妻子ある1人の男が殺された、その責任の何分の一かは自分にある……彼はそう考えたんです」

「…………」

「彼が誠実な警察官であればあるほど、辞めた後も心の痛手は大きく残るんです。その為に東京を去る彼の苦しみ、心の痛手を、あなたに解って欲しい」

「…………」

「立ち直る日まで、待ってやって欲しいんです。半年後か1年後か、あるいは2年になるか3年になるか、それは私には分かりません。しかし、彼がもう一度、自分の幸せを考える日が必ず来ます」

「……私も、彼と一緒に苦しみます。その日が来るのを待ちます。たとえ何年でも……」

もう水沢の顔なんか見たくないと言ってた友子が、強い覚悟を持って、東京から旅立つ水沢を見送りに行く姿を、ボスはホームの柱に隠れてこっそり見物しますw

そしてスコッチの捜査により竜神会を叩く証拠も出揃い、藤堂チーム=捜査一係と四係の合同による手入れが決行されるのでした。(結局、竜神会は潰せなかったみたいだけど)

……どんな事情があろうとも、警察官なら絶対に犯しちゃならない過ちがある。

事故が起こったのは視界の悪い深夜で、跳ねられた被害者はグデングデンに酔っぱらってて、しかもちょっと腰を打った程度の軽傷だった。その後で彼が殺されてさえいなければ、5万円の損失だけで済んでたんですよね。

それでも、駄目なものは駄目。ちょっと説教臭いと言えなくもないけど、『太陽にほえろ!』という番組の良心というか、岡田チーフプロデューサーの生真面目さが全面に出たエピソードですよね。

水沢刑事を演じたのは、沖さんに劣らぬイケメンぶりの谷 隼人さん、当時30歳。私の世代だと『キイハンター』よりも『明日の刑事』や『熱中時代/刑事編』における刑事役や、ボン(ハンソク先生)のライバル=小寺先生を演じた『あさひが丘の大統領』等が印象深いです。『太陽にほえろ!』は第507話にもゲスト出演。奥さんは第9話のゲストだった松岡きっこさん。

そして今回のヒロイン=紀 比呂子さんは、当時26歳。スチュワーデス物語の草分け的ドラマ『アテンションプリーズ』主演で人気を博し、『時間ですよ』シリーズ等にもレギュラー出演。

刑事ドラマは他に『非情のライセンス』『Gメン'75』『大空港』『七人の刑事』『鉄道公安官』『特捜最前線』等にもゲスト出演、『太陽にほえろ!』は後に第360話でもボンと共演されてます。

いかにも岡田プロデューサー好みのw、清楚かつ知的な美人女優さんですが、1982年の結婚を機に、きっぱり芸能界を引退されてます。
 
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