医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

医療制度改革『厚生労働省試案』批判-その2

2005年10月22日 | 医療制度
医療制度改革『厚生労働省試案』批判‐その②

 後期高齢者だけの健康保険の創設
 
 新たな高齢者医療制度の創設に当って、後期高齢者については、(1)生理的能力が低下していることに起因する医療・受療行為の特性を考慮し、国民皆保険の枠組みを堅持しつつも、後期高齢者をそれ以外の集団と分けた上で、後期高齢者に相応しい負担の仕組みを採るとともに、(2)給付面においても、地域において医療サービスを介護サービスと連携して提供することにより生活の質(QOL)の向上を図ることが必要であることに着目して、独立した保険制度とする。
として、審議が重ねられてきました。
 その審議のなかで、『75歳をこえた後期高齢者の生理特性の変化』『高齢者に相応しいQOL(生活の質)が確保されるべき』等の発言、そして、『医療の適正化』『医療費の適正化』の発言が相次いで出されていました。
 要するに、後期高齢者の医療については、その生理特性の変化を理由に、医療・医療費を抑制することが議論されてきたのです。
 
 そうした議論に対して、唯一、日本医師会からの委員が、「『お年を取った方は、もうこの医療でいいのだ』というような決め方をされますと、その方の将来受けるべき権利を剥奪することになりかねません。そういう面から考えますと、はたして75歳のところで、『昨日までは74歳でよかったですね。今日から75歳ですから、あなたの医療を受ける権利は制約されます』という制度をつくることが、本当に国民にとって安心してくらせる制度なのかどうか」と、批判的な発言があっただけです。
 この点についての、『試案』のとりまとめは、『後期高齢者医療制度の創設に併せ、後期高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬体系を構築』となっています。表現は少し変化していますが、その意味するところは変わっていないと思われます。

  後期高齢者に保険料負担を強要

 その高齢者だけの健康保険制度は、医療費の1割(一定以上所得者3割)が自己負担とされ、後期高齢者の保険料は、その「医療給付費」の1割に設定され、国保および被用者保険からの支援が4割、公費負担が5割とされることになりました。
 後期高齢者に医療費の負担(1割もしくは3割)、さらに食事・居住費の負担を強要し、その保険料の設定や徴収方法、その他の負担などは、問題だらけの介護保険と同様の仕組みとなることが予測されます。
 すなわち、制度の発足当初は、低く保険料が設定されたとしても、医療費の増大などを理由に、その引き上げが続くことや、保険料の徴収は年金からの天引きとされ、食事・居住費などやその他の負担が求められるなど、介護保険が抱えているさまざまな問題と、同じ問題を抱えての出発となります。
 そして、その後期高齢者だけの健康保険の運営は、市町村の責任とされました。リスクの高い高齢者だけの健康保険であること、さらに、国民健康保険の財政破綻の経験などから、市長会などの地方団体から反発が出ています。
 

  前期高齢者にも保険料負担が
 
 前期高齢者は、『現在と同様に国保または被用者保険に加入することとし、各制度間の前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡を調整し、制度の安定性と公平性を確保する』としています。
 すなわち、前期高齢者の加入人数の多い国保の財政支援を、若い加入者の多い健保組合などから、医療費負担の不均衡調整という名で、大きな負担を求めるということなのです。このことの真のねらいは、国の財政負担を縮小し、また、国が負担すべき国保への財政負担を、削減するためであることは明らです。
 健康保険組合の全国組織である健保連は、新高齢者医療制度の創設によって、
老人保健法・退職者医療などへの拠出金が廃止され、負担が大幅に減少することを期待していたのですが、新高齢者医療への大きな負担や、経過的に残される退職者医療への拠出などから、逆に負担が増加することに異議を申し立てています。
 さらに大きな問題としては、そうした負担や支援を若年世代から受けること、後期高齢者が保険料負担をすることなどを理由に、すべての前期高齢者から、新制度の保険料を、年金から天引き徴収するとしていることです。

        2005.10.22 harayosi-2


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