法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

「宮崎市ピンクちらし等の配布行為等の防止に関する条例」について

2005-07-19 22:32:00 | Weblog
 たまにレンタル・ビデオ店に行くが,多くの場合,AV(アダルトビデオ)は奥まったブースに置かれているように思う。
私は,成人した大人がAVを観ること自体は問題ないと思っている。何を嗜好するかは個人の問題。周囲がとやかく言う筋合いのものではない。もちろん,「見たくない物を見ない自由」というのも同じように尊重されるべきだ。配偶者や同居するパートナーの間で,このあたりの意見が分かれる場合は,深刻な問題に発展する場合もあろう。因みに,私は,アダルトビデオは借りない。わざわざ書く必要もないことだが ^^; 。
問題だなぁ,と思うのは,面白半分に幼稚園ないし小学生の小さな子どもが件の領域に出入りすることである。これは困ったことだ。責任者には,このようなことのないよう,キチンとした対応を望みたいものだ。

 先日,第一法規『法令解説資料総覧』No.281に掲載されている橋口一也氏(宮崎市市民部生活課主幹兼交通安全係長)の「宮崎市ピンクちらし等の配布行為等の防止に関する条例」に関する解説が偶々目にとまり,興味深く読ませていただいた。
確かに,郵便受けに無断で放り込まれる,いわゆる「ピンクちらし」の類は由々しき問題だ。個人の生活領域に無断で入り込むのに等しいし,教育上の悪影響も看過できない。
宮崎市の条例制定には敬意を表したい。因みに,我が県都秋田市には,今のところ,この種の条例は制定されていないようだ。

 条例を一覧しての感想を3つほど。

1 宮崎市の当該条例の第1条は目的に係るもの。次のとおり規定している。

(目的)
第1条 この条例は、公共の場所において氾濫している人を不快にさせ、又は人に嫌悪を覚えさせることにより迷惑をかけるピンクちらし等を配布する行為等(以下「ピンクちらし配布行為等」という。)を防止し、もって、市民の安心できる快適な生活環境を保持するとともに、心身ともに健全な青少年の育成を図り、及び観光その他の地域間の交流を促進し、市の活性化に寄与することを目的とする

目的は,法・条例解釈の拠り所となる重要なところ。
「観光その他の地域間の交流を促進」は,観光立県の中核都市である宮崎市の面目躍如,といったところだろう。
ただ,「ピンクちらし配布行為等の防止」→「市民の安心できる快適な生活環境の保持」「心身ともに健全な青少年の育成」はもちろん問題ないのだが,「ピンクちらし配布行為等の防止」→「観光その他の地域間の交流を促進し、市の活性化に寄与する」という流れは,少々強引な感じがするのだが,どうなのだろうか。条例制定&施行に伴う副次的効果としての「市の活性化」,というのであれば分かるのだが。ちょっとチグハグな感じは否めない。ピンクちらし配布行為の防止と市の活性化・・・。あまり考えたこともなかったが。

2 条例の第2条は,定義規定である。宮崎市が条例制定の際,参考にしたとされる「福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例」の定義規定と並べてみる。

宮崎市条例

(定義)
第2条 この条例において「ピンクちらし等」とは、性的好奇心をそそる、衣服を脱いだ人の姿態、水着姿、制服姿等の写真若しくは絵又は人の性的好奇心に応じて人に接する役務の提供を表す文言を掲載し、かつ、電話番号等の連絡先を記載したはり紙、ビラ、パンフレットその他これらに類する文書図画をいう。
2 この条例において「電気通信事業者等」とは、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第5号に規定する電気通信事業者、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第7条第1項に規定する鉄道事業者及び道路運送法(昭和26年法律第183号)第9条第1項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者をいう。

福岡市条例

(定義)
第2条 この条例において「ピンクちらし等」とは,次の各号のいずれかに該当する内容及び電話番号等の連絡先を記載したはり紙,はり札,立看板,ビラ,パンフレットその他これらに類する文書図画であって,人の性的好奇心に応じて人に接触する役務の提供を表し,又は推測させるものをいう。
(1) 性的好奇心をそそる,衣服を脱いだ人の姿,水着姿,制服姿等の写真又は絵
(2) 性的好奇心をそそる文言

似ているが,違う。
例えば,「a 性的好奇心をそそる,b 衣服を脱いだ人の姿の写真で,c 電話番号の記載のあるビラ」だけでは,福岡市条例の「ピンクちらし等」に該当するかは俄には判断できない。「人の性的好奇心に応じて人に接触する役務の提供を表し,又は推測させるもの」かハッキリしないからだ。福岡市の場合は,「推測させる」の解釈がどのようにおこなわれるかがポイントになる。
一方,宮崎市条例の場合は,前記abcを充足する物が「ピンクちらし等」に該当するのは明らかだ。宮崎市の場合,写真又は絵については,「人に接する役務の提供を表すもの」という要件は外されている。この点は,運用を誤れば,処罰の範囲が拡大しないとは言い切れないところ。まぁ,ちょっと考えにくいけれど。

3 条例の第6条は市民の責務に係るもの。次のとおり規定している。

(市民の責務)
第6条 市民は、自主的にピンクちらし配布行為等の防止に努めるとともに、市の実施する施策に協力するよう努めなければならない。

これは,正直,疑問を禁じ得ない。もちろん,努力規定ではあろう。しかし,他人のするピンクちらし配布行為等の防止を「市民の責務」のタイトルのもとに規定するのはどうだろうか・・・。

最後になったが,「宮崎市ピンクちらし等の配布行為等の防止に関する条例」,6月1日から施行されている。

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養育費・婚姻費用の算定について

2005-07-19 15:40:22 | Weblog
 『判例タイムズ』1179号に「養育費・婚姻費用算定の実務 -大阪家庭裁判所における実務-」(P35~41)というレポートが掲載されている。大阪家庭裁判所岸和田支部判事の濱谷由紀氏,大阪家庭裁判所判事中村昭子氏によるもの。
2年前,『判例タイムズ』1111号に掲載された,東京・大阪養育費等研究会編「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」(P285~315)が家裁実務に与えたインパクトは極めて大きかったように思われる。
今般のレポートは,a 前記算定方式による審理の実務,b 前記算定方式を活用した審理における論点についての検討結果,を合わせ,報告するもの。算定方式・算定表の活用にあたっては,是非とも一読しておきたい資料である。

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