法律の周辺

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綱紀委員会の審査手続に対する不満について

2007-10-31 16:53:05 | Weblog
毎日jp オウム裁判:松下弁護士は「懲戒相当」議決 仙台弁護士会

 弁護士法第58条第1項には「何人も,弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは,その事由の説明を添えて,その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」とある。
今般懲戒相当とされた弁護士の「高裁による請求は不適法」との主張は,上記「何人も」の中に裁判所は含まれないというものであろうか。いろいろ意見はあるのだろうが,東京高裁の他にも懲戒請求者がある中,仙台弁護士会の綱紀委員会,東京高裁の懲戒請求は該高裁の事務局長個人の請求として受理したようだ。

記事には,概略,綱紀委員会の懲戒相当を受け,懲戒委員会が審査を行い処分内容を検討するとある。戒告か,2年以内の業務の停止か,退会命令か,除名かはさておき,懲戒そのものはもはや動かしようがないかのようにも読めるが,そうではない。同条第5項に「懲戒委員会は,第三項の審査により対象弁護士等につき懲戒することを相当と認めるときは,懲戒の処分の内容を明示して,その旨の議決をする。この場合において,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しなければならない。」とあるほか,第6項には「懲戒委員会は,第三項の審査により対象弁護士等につき懲戒しないことを相当と認めるときは,その旨の議決をする。この場合において,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしなければならない。」とある。

最後になったが,懲戒対象とされた弁護士は聴聞の不十分さ等々に言及し不満を述べておられる。なるほど,弁護士法第70条の7には「綱紀委員会は,調査又は審査に関し必要があるときは,対象弁護士等,懲戒請求者,関係人及び官公署その他に対して陳述,説明又は資料の提出を求めることができる。」とあるだけ。対象弁護士の側から主体的に釈明等を述べることは認められていない。


弁護士法の関連条文

(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条  弁護士及び弁護士法人は,この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し,所属弁護士会の秩序又は信用を害し,その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは,懲戒を受ける。
2  懲戒は,その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が,これを行う。
3  弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は,その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る。

(懲戒の種類)
第五十七条  弁護士に対する懲戒は,次の四種とする。
一  戒告 
二  二年以内の業務の停止
三  退会命令
四  除名 
2  弁護士法人に対する懲戒は,次の四種とする。
一  戒告 
二  二年以内の弁護士法人の業務の停止又はその法律事務所の業務の停止
三  退会命令(当該弁護士会の地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対するものに限る。)
四  除名(当該弁護士会の地域内に主たる法律事務所を有する弁護士法人に対するものに限る。)
3  弁護士会は,その地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して,前項第二号の懲戒を行う場合にあつては,その地域内にある法律事務所の業務の停止のみを行うことができる。
4  第二項又は前項の規定の適用に当たつては,日本弁護士連合会は,その地域内に当該弁護士法人の主たる法律事務所がある弁護士会とみなす。

(懲戒の請求,調査及び審査)
第五十八条  何人も,弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは,その事由の説明を添えて,その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。
2  弁護士会は,所属の弁護士又は弁護士法人について,懲戒の事由があると思料するとき又は前項の請求があつたときは,懲戒の手続に付し,綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない。
3  綱紀委員会は,前項の調査により対象弁護士等(懲戒の手続に付された弁護士又は弁護士法人をいう。以下同じ。)につき懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるときは,その旨の議決をする。この場合において,弁護士会は,当該議決に基づき,懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない。
4  綱紀委員会は,第二項の調査により,第一項の請求が不適法であると認めるとき若しくは対象弁護士等につき懲戒の手続を開始することができないものであると認めるとき,対象弁護士等につき懲戒の事由がないと認めるとき又は事案の軽重その他情状を考慮して懲戒すべきでないことが明らかであると認めるときは,懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決をする。この場合において,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしなければならない。
5  懲戒委員会は,第三項の審査により対象弁護士等につき懲戒することを相当と認めるときは,懲戒の処分の内容を明示して,その旨の議決をする。この場合において,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しなければならない。
6  懲戒委員会は,第三項の審査により対象弁護士等につき懲戒しないことを相当と認めるときは,その旨の議決をする。この場合において,弁護士会は,当該議決に基づき,対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしなければならない。

(懲戒を受けた者の審査請求に対する裁決)
第五十九条  日本弁護士連合会は,第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分について行政不服審査法 による審査請求があつたときは,日本弁護士連合会の懲戒委員会に事案の審査を求め,その議決に基づき,裁決をしなければならない。

(訴えの提起)
第六十一条  第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分についての審査請求を却下され若しくは棄却され,又は第六十条の規定により日本弁護士連合会から懲戒を受けた者は,東京高等裁判所にその取消しの訴えを提起することができる。
2  第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分に関しては,これについての日本弁護士連合会の裁決に対してのみ,取消しの訴えを提起することができる。

(除斥期間)
第六十三条  懲戒の事由があつたときから三年を経過したときは,懲戒の手続を開始することができない。

(懲戒請求者による異議の申出)
第六十四条  第五十八条第一項の規定により弁護士又は弁護士法人に対する懲戒の請求があつたにもかかわらず,弁護士会が対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしたとき又は相当の期間内に懲戒の手続を終えないときは,その請求をした者(以下「懲戒請求者」という。)は,日本弁護士連合会に異議を申し出ることができる。弁護士会がした懲戒の処分が不当に軽いと思料するときも,同様とする。
2  前項の規定による異議の申出(相当の期間内に懲戒の手続を終えないことについてのものを除く。)は,弁護士会による当該懲戒しない旨の決定に係る第六十四条の七第一項第二号の規定による通知又は当該懲戒の処分に係る第六十四条の六第二項の規定による通知を受けた日の翌日から起算して六十日以内にしなければならない。
3  異議の申出の書面を郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者による同条第二項 に規定する信書便で提出した場合における前項の異議の申出期間の計算については,送付に要した日数は,算入しない。

(日本弁護士連合会の綱紀委員会による異議の審査等)
第六十四条の二  日本弁護士連合会は,前条第一項の規定による異議の申出があり,当該事案が原弁護士会(懲戒請求者が懲戒の請求をした弁護士会をいう。以下同じ。)の懲戒委員会の審査に付されていないものであるときは,日本弁護士連合会の綱紀委員会に異議の審査を求めなければならない。
2  日本弁護士連合会の綱紀委員会は,原弁護士会が第五十八条第四項の規定により対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしたことについての異議の申出につき,前項の異議の審査により原弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるときは,その旨の議決をする。この場合において,日本弁護士連合会は,当該議決に基づき,原弁護士会がした対象弁護士等を懲戒しない旨の決定を取り消して,事案を原弁護士会に送付する。
3  前項の規定により事案の送付を受けた原弁護士会は,その懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない。この場合においては,第五十八条第五項及び第六項の規定を準用する。
4  日本弁護士連合会の綱紀委員会は,原弁護士会が相当の期間内に懲戒の手続を終えないことについての異議の申出につき,第一項の異議の審査によりその異議の申出に理由があると認めるときは,その旨の議決をする。この場合において,日本弁護士連合会は,当該議決に基づき,原弁護士会に対し,速やかに懲戒の手続を進め,対象弁護士等を懲戒し,又は懲戒しない旨の決定をするよう命じなければならない。
5  日本弁護士連合会の綱紀委員会は,異議の申出を不適法として却下し,又は理由がないとして棄却することを相当と認めるときは,その旨の議決をする。この場合において,日本弁護士連合会は,当該議決に基づき,異議の申出を却下し,又は棄却する決定をしなければならない。

(懲戒の処分の通知及び公告)
第六十四条の六  弁護士会又は日本弁護士連合会は,対象弁護士等を懲戒するときは,対象弁護士等に懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければならない。
2  弁護士会又は日本弁護士連合会は,対象弁護士等を懲戒したときは,速やかに,弁護士会にあつては懲戒請求者,懲戒の手続に付された弁護士法人の他の所属弁護士会及び日本弁護士連合会に,日本弁護士連合会にあつては懲戒請求者及び対象弁護士等の所属弁護士会に,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければならない。
3  日本弁護士連合会は,弁護士会又は日本弁護士連合会が対象弁護士等を懲戒したときは,遅滞なく,懲戒の処分の内容を官報をもつて公告しなければならない。

(懲戒の手続に関する通知)
第六十四条の七  弁護士会は,その懲戒の手続に関し,次の各号に掲げる場合には,速やかに,対象弁護士等,懲戒請求者,懲戒の手続に付された弁護士法人の他の所属弁護士会及び日本弁護士連合会に,当該各号に定める事項を書面により通知しなければならない。一  綱紀委員会に事案の調査をさせたとき又は懲戒委員会に事案の審査を求めたとき その旨及び事案の内容
二  対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしたとき その旨及びその理由
三  懲戒委員会又はその部会が,同一の事由について刑事訴訟が係属していることにより懲戒の手続を中止したとき又はその手続を再開したとき その旨
四  懲戒の手続に付された弁護士が死亡したこと又は弁護士でなくなつたことにより懲戒の手続が終了したとき その旨及びその理由
2  日本弁護士連合会は,その懲戒の手続に関し,次の各号に掲げる場合には,速やかに,対象弁護士等,懲戒請求者及び対象弁護士等の所属弁護士会に,当該各号に定める事項を書面により通知しなければならない。
一  綱紀委員会に事案の調査をさせたとき又は懲戒委員会に事案の審査を求めたとき その旨及び事案の内容
二  対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をしたとき その旨及びその理由
三  綱紀委員会に異議の審査を求めたとき,綱紀審査会に綱紀審査を求めたとき又は懲戒委員会に異議の審査を求めたとき その旨
四  第六十四条の二第二項又は第六十四条の四第二項の規定により原弁護士会に事案を送付したとき その旨及びその理由
五  原弁護士会に対し,速やかに懲戒の手続を進め,対象弁護士等を懲戒し,又は懲戒しない旨の決定をするよう命じたとき その旨及びその理由
六  異議の申出を却下し,又は棄却する決定をしたとき その旨及びその理由
七  綱紀審査の申出を却下し,又は棄却する決定をしたとき その旨及びその理由
八  懲戒委員会又はその部会が,同一の事由について刑事訴訟が係属していることにより懲戒の手続を中止したとき又はその手続を再開したとき その旨
九  懲戒の手続に付された弁護士が死亡したこと又は弁護士でなくなつたことにより懲戒の手続が終了したとき その旨及びその理由

(綱紀委員会の設置)
第七十条  各弁護士会及び日本弁護士連合会にそれぞれ綱紀委員会を置く。
2  弁護士会の綱紀委員会は,第五十八条第二項及び第七十一条の六第二項の調査その他その置かれた弁護士会所属の弁護士及び弁護士法人の綱紀保持に関する事項をつかさどる。
3  日本弁護士連合会の綱紀委員会は,第六十条第二項及び第七十一条の六第二項の調査並びに第六十四条の二第一項の異議の審査その他弁護士及び弁護士法人の綱紀保持に関する事項をつかさどる。

(綱紀委員会の組織)
第七十条の二  綱紀委員会は,四人以上であつてその置かれた弁護士会又は日本弁護士連合会の会則で定める数の委員をもつて組織する。

(綱紀委員会の委員)
第七十条の三  弁護士会の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ弁護士会の会長が委嘱する。この場合においては,第六十六条の二第一項後段の規定を準用する。
2  日本弁護士連合会の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ日本弁護士連合会の会長が委嘱する。この場合においては,第六十六条の二第二項後段の規定を準用する。
3  綱紀委員会の委員の任期は,二年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
4  綱紀委員会の委員は,刑法 その他の罰則の適用については,法令により公務に従事する職員とみなす。

(綱紀委員会の委員長)
第七十条の四  綱紀委員会に委員長を置き,委員の互選によりこれを定める。
2  委員長は,会務を総理する。
3  委員長に事故のあるときは,あらかじめ綱紀委員会の定める順序により,他の委員が委員長の職務を行う。
4  前条第四項の規定は,委員長に準用する。

(綱紀委員会の予備委員)
第七十条の五  綱紀委員会に,四人以上であつてその置かれた弁護士会又は日本弁護士連合会の会則で定める数の予備委員を置く。
2  委員に事故のあるとき又は委員が欠けたときは,弁護士会の会長又は日本弁護士連合会の会長は,その委員と同じ資格を有する予備委員の中からその代理をする者を指名する。
3  第七十条の三の規定は,予備委員に準用する。

(綱紀委員会の部会)
第七十条の六  綱紀委員会は,事案の調査又は審査をするため,必要に応じ,部会を置くことができる。
2  部会は,委員長が指名する弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者である委員各一人以上をもつて組織する。
3  部会に部会長を置き,部会を組織する委員の互選によりこれを定める。
4  部会長に事故のあるときは,あらかじめ部会の定める順序により,他の委員が部会長の職務を行う。
5  綱紀委員会は,その定めるところにより,部会が調査又は審査をした事案については,部会の議決をもつて委員会の議決とすることができる。

(綱紀委員会による陳述の要求等)
第七十条の七  綱紀委員会は,調査又は審査に関し必要があるときは,対象弁護士等,懲戒請求者,関係人及び官公署その他に対して陳述,説明又は資料の提出を求めることができる。

(綱紀委員会の議決書)
第七十条の八  綱紀委員会は,議決をしたときは,速やかに,理由を付した議決書を作成しなければならない。

(綱紀委員会の部会に関する準用規定)
第七十条の九  前二条の規定は,綱紀委員会の部会に準用する。

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