法律の周辺

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外国政府に対する民事裁判権の免除に係る判例変更について

2006-07-21 14:33:59 | Weblog
商取引巡る訴訟,外国政府相手も可能・78年ぶり判例変更 NIKKEI NET

 「国家主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,民事裁判から免除されない」とのこと。
記事にある大審院判例(S3.12.28)とは,中華民国代理公使振出しの約束手形に基づく手形請求事件につき,中華民国に主権免除を認めた事案であった。

 日本の民事裁判権が外国に対し例外的に及ぶ場合については,これまで,条約に特別な規定があるような場合のほか,外国が自発的に日本の裁判権に服する意思を明示して応訴するような場合があげられるのが通例であった。
これとの関係では,外国に応訴意思があるかを照会する手続を定めた通達があったが,これは先般廃止された。穿った見方をすれば,外国といえど,絶対免除から制限免除,という流れはあったわけだ。

確かに,純然たる商取引に係る訴訟であるにもかかわらず,主権を有する外国政府であるとの一事をもって,我が国の民事裁判権が一切及ばないというのは理不尽極まりない話し。外国政府相手の取引は,ある意味,一番危ない,といったことにもなりかねない。


民事訴訟法の関連条文

(趣旨)
第一条  民事訴訟に関する手続については,他の法令に定めるもののほか,この法律の定めるところによる。

(裁判所及び当事者の責務)
第二条  裁判所は,民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め,当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

(最高裁判所規則)
第三条  この法律に定めるもののほか,民事訴訟に関する手続に関し必要な事項は,最高裁判所規則で定める。

(普通裁判籍による管轄)
第四条  訴えは,被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2  人の普通裁判籍は,住所により,日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により,日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3  大使,公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは,その者の普通裁判籍は,最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
4  法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は,その主たる事務所又は営業所により,事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5  外国の社団又は財団の普通裁判籍は,前項の規定にかかわらず,日本における主たる事務所又は営業所により,日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
6  国の普通裁判籍は,訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条  次の各号に掲げる訴えは,それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一  財産権上の訴え
     義務履行地
二  手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え
     手形又は小切手の支払地
三  船員に対する財産権上の訴え
     船舶の船籍の所在地
四  日本国内に住所(法人にあっては,事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
     請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
五  事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの
     当該事務所又は営業所の所在地
六  船舶所有者その他船舶を利用する者に対する船舶又は航海に関する訴え
     船舶の船籍の所在地
七  船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
     船舶の所在地
八  会社その他の社団又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
     社団又は財団の普通裁判籍の所在地
イ 会社その他の社団からの社員若しくは社員であった者に対する訴え,社員からの社員若しくは社員であった者に対する訴え又は社員であった者からの社員に対する訴えで,社員としての資格に基づくもの
ロ 社団又は財団からの役員又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
ハ 会社からの発起人若しくは発起人であった者又は検査役若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人又は検査役としての資格に基づくもの
ニ 会社その他の社団の債権者からの社員又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
九  不法行為に関する訴え
     不法行為があった地
十  船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
     損害を受けた船舶が最初に到達した地
十一  海難救助に関する訴え
     海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地
十二  不動産に関する訴え
     不動産の所在地
十三  登記又は登録に関する訴え
     登記又は登録をすべき地
十四  相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
     相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地
十五  相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの(相続財産の全部又は一部が同号に定める地を管轄する裁判所の管轄区域内にあるときに限る。)
     同号に定める地

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