現時点での会社法に関する最良の資料は,「会社法案」「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」「会社法制の現代化に関する要綱」である。以下は,私的なメモ。
1 株主総会
株主総会は,会社法案においても,株式会社の必要的機関とされている。
会社の所有者は出資者たる株主である。とすれば,少なくとも,会社の基本的事項に関する意思決定は株主によって行われなければならない。結局,その会社がどのような機関設計をするかにかかわらず,株主を構成員とする株主総会は必ず置くことになる。
もっとも,会社法下では,現行以上に様々な規模・態様の株式会社の存在が考えられる。そこで,会社法案は,様々な場面で,類型ごとに異なる規律を用意している。株主総会についても然りである。
会社法案が株主総会について設定したメルクマールは,「取締役会設置会社(会社法案第2条第7号)か否か」である。
商法及び会社法案における,株主総会の権限に関する基本的な規定は,以下のとおり。
商法第230条ノ10 総会ハ本法又ハ定款ニ定ムル事項ニ限リ決議ヲ為スコトヲ得
会社法案第295条 株主総会は,この法律に規定する事項及び株式会社の組織,運営,管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず,取締役会設置会社においては,株主総会は,この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り,決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について,取締役,執行役,取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは,その効力を有しない。
商法は,昭和25年の取締役会制度の導入にあたり,上記のように株主総会の権限を縮小した。
会社法案では,株主総会は,原則,万能の機関であり,取締役会設置会社においては権限が制限される,という規定ぶりになっている。この点,先ずは押さえておきたい。
2 株主提案権
株主提案権は,総会会日の8週間前までに書面ないし電磁的方法で請求しなければならないが,この行使期限は定款で緩和(ex 「4週間まで」)できることとなった(会社法案第303条第2項。以下,法案とする)。行使機会の拡大という意味で,株主の利益になる改正である。
3 株主総会の招集地
現在,株主総会の招集地は,定款に別段の定めがある場合を除き,本店の所在地又は隣接地となっている(商法第233条)。会社法案では,この招集地に関する制限が廃止された。株主の総会参加の便宜等を考えての改正であろう。
招集地が,株主の議決権行使を困難ならしめるような地である場合は,取締役の対第三者責任(同第429条),株主総会の決議不存在確認の訴え(同第830条)の問題にもなるように思われる。
4 総会検査役
ア 総会検査役制度は,株主総会の招集手続及び決議方法につき調査させるため,総会に先立ち,検査役選任を裁判所に請求できるという制度である。会社法案では,請求権者に会社が加えられた(法案第306条第1項)。重要議題に係る総会,混乱が予想される総会での利用が考えられる。
イ 裁判所は,検査役の報告を受け,必要があると認めるときは,総会招集命令あるいは株主に対する調査内容の通知命令の全部又は一部を命じなければならないとされた(同第307条)。
総会招集命令については,時間・コストの面での問題が指摘されていた。調査内容の通知命令は,より簡易な方法で調査結果を株主に開示しようというものだ。これを契機に,株主から株主総会の招集請求がなされることがあろう(同第297条)。総会の決議取消の訴えの提起もありうる(同第831条第1条第1号)。
なお,業務財産調査検査役制度についても,同様の改正が行われた(同第358条,同第359条)。
5 書面投票・電子投票
ア 書面投票制度が義務づけられる株式会社は,大会社(法案第2条第6号)という条件が外され,単に「議決権を有する株主数が1,000人以上の会社」とされた(同第298条第2項)。
なるほど,株主の議決権行使の機会確保という意味では,大会社か否かで別異に取り扱う必要はない。
イ 書面投票制度が義務づけられる株式会社は,招集通知を電磁的方法で受領することを承諾した株主に対しては,原則,議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供すれば足りるとされた。もっとも,その場合でも,株主の請求ある場合は書面の交付を要する(同第301条第2項)。
ウ 書面投票と電磁的方法での投票が重複行使された場合の取扱,議決権行使を受け付ける期間等につき,あらかじめ合理的な定めを設けることができることになろう(同第298条第1項第5号)。それらは,議決権行使書面等に記載・記録することを要する(同第299条第4項)。
6 決議要件の加重
ア 合併等の対価が柔軟化されたが(法案第753条第1項第8号等,同附則第4号),それが譲渡制限株式等である場合は,通常の合併承認等の決議に係る株主総会の決議要件よりも厳しい決議要件が課されることとなった(同第309条第3項第2号・3号)。
イ 法律に定める株主総会の決議要件を,定款によって加重することが可能とされた(同第309条第2項,同第341条)。
7 「取締役会設置会社」以外の会社に関する特例
「取締役会設置会社」以外の会社については,以下の項目につき特例が設けられている。
ア 株主総会の招集の通知期限(法案第299条第1項)
イ 株主総会の招集の通知方法(同第299条第2項)
ウ 株主総会の招集通知の記載事項(同第299条第4項)
エ 株主総会の招集通知の添付書類(同第437条)
オ 株主の議題提案権(同第303条)
カ 株主の議決権の不統一行使(同第313条第1項・第2項)
1 株主総会
株主総会は,会社法案においても,株式会社の必要的機関とされている。
会社の所有者は出資者たる株主である。とすれば,少なくとも,会社の基本的事項に関する意思決定は株主によって行われなければならない。結局,その会社がどのような機関設計をするかにかかわらず,株主を構成員とする株主総会は必ず置くことになる。
もっとも,会社法下では,現行以上に様々な規模・態様の株式会社の存在が考えられる。そこで,会社法案は,様々な場面で,類型ごとに異なる規律を用意している。株主総会についても然りである。
会社法案が株主総会について設定したメルクマールは,「取締役会設置会社(会社法案第2条第7号)か否か」である。
商法及び会社法案における,株主総会の権限に関する基本的な規定は,以下のとおり。
商法第230条ノ10 総会ハ本法又ハ定款ニ定ムル事項ニ限リ決議ヲ為スコトヲ得
会社法案第295条 株主総会は,この法律に規定する事項及び株式会社の組織,運営,管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず,取締役会設置会社においては,株主総会は,この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り,決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について,取締役,執行役,取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは,その効力を有しない。
商法は,昭和25年の取締役会制度の導入にあたり,上記のように株主総会の権限を縮小した。
会社法案では,株主総会は,原則,万能の機関であり,取締役会設置会社においては権限が制限される,という規定ぶりになっている。この点,先ずは押さえておきたい。
2 株主提案権
株主提案権は,総会会日の8週間前までに書面ないし電磁的方法で請求しなければならないが,この行使期限は定款で緩和(ex 「4週間まで」)できることとなった(会社法案第303条第2項。以下,法案とする)。行使機会の拡大という意味で,株主の利益になる改正である。
3 株主総会の招集地
現在,株主総会の招集地は,定款に別段の定めがある場合を除き,本店の所在地又は隣接地となっている(商法第233条)。会社法案では,この招集地に関する制限が廃止された。株主の総会参加の便宜等を考えての改正であろう。
招集地が,株主の議決権行使を困難ならしめるような地である場合は,取締役の対第三者責任(同第429条),株主総会の決議不存在確認の訴え(同第830条)の問題にもなるように思われる。
4 総会検査役
ア 総会検査役制度は,株主総会の招集手続及び決議方法につき調査させるため,総会に先立ち,検査役選任を裁判所に請求できるという制度である。会社法案では,請求権者に会社が加えられた(法案第306条第1項)。重要議題に係る総会,混乱が予想される総会での利用が考えられる。
イ 裁判所は,検査役の報告を受け,必要があると認めるときは,総会招集命令あるいは株主に対する調査内容の通知命令の全部又は一部を命じなければならないとされた(同第307条)。
総会招集命令については,時間・コストの面での問題が指摘されていた。調査内容の通知命令は,より簡易な方法で調査結果を株主に開示しようというものだ。これを契機に,株主から株主総会の招集請求がなされることがあろう(同第297条)。総会の決議取消の訴えの提起もありうる(同第831条第1条第1号)。
なお,業務財産調査検査役制度についても,同様の改正が行われた(同第358条,同第359条)。
5 書面投票・電子投票
ア 書面投票制度が義務づけられる株式会社は,大会社(法案第2条第6号)という条件が外され,単に「議決権を有する株主数が1,000人以上の会社」とされた(同第298条第2項)。
なるほど,株主の議決権行使の機会確保という意味では,大会社か否かで別異に取り扱う必要はない。
イ 書面投票制度が義務づけられる株式会社は,招集通知を電磁的方法で受領することを承諾した株主に対しては,原則,議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供すれば足りるとされた。もっとも,その場合でも,株主の請求ある場合は書面の交付を要する(同第301条第2項)。
ウ 書面投票と電磁的方法での投票が重複行使された場合の取扱,議決権行使を受け付ける期間等につき,あらかじめ合理的な定めを設けることができることになろう(同第298条第1項第5号)。それらは,議決権行使書面等に記載・記録することを要する(同第299条第4項)。
6 決議要件の加重
ア 合併等の対価が柔軟化されたが(法案第753条第1項第8号等,同附則第4号),それが譲渡制限株式等である場合は,通常の合併承認等の決議に係る株主総会の決議要件よりも厳しい決議要件が課されることとなった(同第309条第3項第2号・3号)。
イ 法律に定める株主総会の決議要件を,定款によって加重することが可能とされた(同第309条第2項,同第341条)。
7 「取締役会設置会社」以外の会社に関する特例
「取締役会設置会社」以外の会社については,以下の項目につき特例が設けられている。
ア 株主総会の招集の通知期限(法案第299条第1項)
イ 株主総会の招集の通知方法(同第299条第2項)
ウ 株主総会の招集通知の記載事項(同第299条第4項)
エ 株主総会の招集通知の添付書類(同第437条)
オ 株主の議題提案権(同第303条)
カ 株主の議決権の不統一行使(同第313条第1項・第2項)