松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

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雲をおひ(追い) 雨を衣に きる人は   大灯国師

2019-06-01 | インポート

雲をおひ(追い) 雨を衣に きる人は はるばる(晴るぱる)空に はだか(裸)にぞなる

 

撮影 千田完治

六月です。梅雨です。でも、今年は雨がふる季節になるのでしょうか。昨日(5月27日)の熊谷の最高気温は36.2度でした。
 大雨はこまるけれど、良い加減にふってくれないと。そこで、雨にちなんだ祖師方の和歌をひとつ。大徳寺を開創した大灯国師(宗峰妙超、一二八二~一三三七)の道歌です。ところで、和歌と道歌はどうちがうのか。広辞苑によれば、「仏教や心学の精神を詠んだ教訓歌」とあります。つまり「坊さんがつくった、説教臭くて、あまりおもしろくない歌」と説明しているようなもの。でも、「雲雨衣(うんうえ)」と題した、この歌はおもしろい。

雲をおひ(追い) 雨を衣に きる人は はるばる(晴るぱる)空に はだか(裸)にぞなる 

 江戸時代になつて、潮音道海(1628~1695)が編集した『大灯国師養牛軽吟歌』に収められている歌だといいます。
 この歌の前には、「雨中旅行」と題した、「蓑はなし 其の儘(まま)ぬれて行(ゆく)程(ほど)に 旅の衣に 雨を社(こそ)ふれ」という句も並んでいるといいます。「いいます」と書くからには、孫引きです。奈良康明編著『仏教名言辞典』(東京書籍)で、西村恵信先生が解説しているのをみつけました。
 句の意味は旅の途中で通り雨がふってきたが蓑はない。そのまま歩いていると、雨を着て歩いているようだ。といった意味でしょうか。
 雨と蓑は対です。「対」の字を使った熟語に、敵対とか対抗があります。雨を避けるために蓑をつければ、雨に対抗して敵対することになります。それほどの雨ではないから「濡れていこう」。濡れてみたら、自然とひとつになって晴れ晴れとした、という気分です。
 そんな気分は禅をきわめた人の境涯だ、なんてあきらめないでください。日常でもみられる光景です。
 筆者が住職する寺の門前を、男子高の生徒が朝晩自転車で突っ走っていきます。そう言えば、彼らが傘をさしているのを見たことがない。雨に濡れるのは若者の特権なのだろうか。いや、大徳寺開山さまのように、たまには天地とひとつになって濡れてみよう。幼かったころの気分を取り戻すことができるかもしれません。
 今年の梅雨。去年のような暴雨ではなくて、良い加減の雨で、田んぼも水を貯えて、豊作になりますよう(ついでに、よい酒米も沢山できますように!)と願う。

追伸  『大灯国師養牛軽吟歌』は平野宗浄著『大灯禅の探求』(教育新社)に全歌の註があるようですが、当然のことながら、古書店でしか手に入らない。それが結構なお値段するので、買おうか、どうしようか、迷っています。

 

 

 

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