松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

まずは なりきってみるの/何かわかるかもしれない/ほらね なりきってみたら/はるか 世界は広がる     佐藤良成

2019-10-01 | インポート

どうして道は続いている?/確かめたくて道になる/どうして空は高いんだろう?/どうしてあの子泣いているの? まずは なりきってみるの/何かわかるかもしれない/ほらね なりきってみたら/はるか 世界は広がる  作詞作曲 佐藤良成

 

撮影 千田完治

10月のことばは、NHK・Eテレで、朝7時から15分間放映されている「シャキーン」という幼児番組で流れている歌の一節です(詳しく知りたい方は、ttps://www.nhk.or.jp/kids/shakiin/song/skn_83_haruka.htmlを見てください)。なんで、そんな番組を見ているかというと、ギックリ腰予防に6時25分からはじまる「テレビ体操」で、その日一日の準備体操をするわけです。続きで、Eテレを見続けるわけ。そうしたら、9月になって、スゴイ歌詞が流れているのに気がついた。タイトルは「はるかなる世界」というらしい。
 この番組のホームページによれば、シャキーンという変わったタイトルは、「子どもたちを “シャキーン!” と目覚めさせて、楽しい一日のスタートを切ってもらう知的エンターテインメント番組」から名づけたようです。
 こどもばかりか、老境にさしかかりつつある禅坊主も、この歌詞をきいてシャキーンとビックリしたのであります。どこでシャキーンとしたかというと、「まずは なりきってみるの/何かわかるかもしれない」は仏教でいう、「三昧」そのものではないか。
 特に禅では「無になりきれ」とか「公案と一枚になりきれ」とか、多用される言葉です。たとえば、国会図書館オンラインで「なりきる」を検索してみると、先頭にでてくる書籍は管宗信著『馬鹿になりきるの記』(日本実業出版社)です。管宗信さんというのは、臨済宗妙心寺派、神戸・祥龍寺のご住職だったかたです。  あるいは、伊藤古鑑著『禅の公案解説 なり切る修行』とか。鈴木大拙博士も書いていますね。「人間になりきる」(『大拙つれづれ草』読売新聞社)なんていうふうに。
 でも、禅や仏教だけでなくて、『できる社員になりきる技術』(ソフトバンク新書)なんていうのもあるから、今注目されているキーワードなのでしょう。
 だから、Eテレの幼児番組の挿入歌にもなっている(残念ながら、九月だけで十月には違う歌が流れているようです)。  結論です。昨今、「より添う」という言葉がよく聞かれます。でも、より添われるのが迷惑な場合もある。より添うだけでなくて、その人に「なりきって」みなければ、その人の気持ちは、わからない。この歌の作詞者には、そんな思いはないだろうか。作詞者になりきれないから、そのへんのことがわからないのです

(熊谷ではワールドカップ・ラグビーが三試合あります。冒頭に掲げた写真はその記念イベントで今月のことばとはあまり関連ありません) 


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