松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

ふじの山 夢に見るこそ 果報なれ  路銀もいらず 草臥もせず  油煙斎永田貞柳

2022-01-01 | インポート

ふじの山 夢に見るこそ 果報(かほう)なれ 
路銀(ろぎん)もいらず
草臥(くたびれ)もせず  
   油煙斎永田貞柳(ゆえんさい ながた ていりゅう)

         佐藤和喜画

 正月のことばを何にしようか。ずいぶん迷いました。時季に応じた、言葉がすんなりと出てこないのは、不勉強と言われれば、その通りなのですが、正月は難しい。だから、過去の記録をみると、縁起が良さそうで、新らたなる誓いのような短歌や俳句が多くなってしまう。
 そうではなくて何かないかと探していたら、半日がすぎてしまう始末。そこで、エイッとばかりに、本棚の隅でホコリをかぶっていた、大岡信著『第三折々のうた』(岩波新書)をあけて、見つけたのが標題の狂歌です。
 朝日新聞朝刊第一面に、1979年から2007年まで、詩人の大岡信(1931~2017)さんの、6762回続いた連載が「折々のうた」。そのなかの、昭和58年正月のコラムと思われるのですが、正確な月日は不明。200字ほどの名人芸を、そのまま引用するのは新年早々エチケット違反でしょうか。ご容赦を。

〈『貞柳翁狂歌全集』所収。江戸を中心に栄えた天明狂歌の出現以前、元禄期の大坂で頭角を現し、天下の狂歌壇に名声をほしいままにした狂歌師。代々の菓子の老舗の生まれだが、父も俳人で狂歌を作り・叔父にも俳人がいた。弟は浄瑠璃作者の紀海音。これは「初夢」と題する狂歌。めでたい初夢は一富士・二鷹・三なすびとよくいわれる。さて、初夢で富士山を見るのはまったく果報な話だ、旅費もいらないし、第一くたびれもしない〉

 

 


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