松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

戒語(慎むべきことば)  良寛

2015-11-04 | インポート

老人のくどき   若いもののむだ話   はやりことば      良寛『はちすの露』より

今月のことばは、良寛(1758~1831)の言葉です。良寛の滅後に貞心尼が編集して、天保6年(1835)にまとめた『はちすの露』の末尾に収録されていると、奈良康明編『仏教名言辞典』(東京書籍刊)が教えてくれました。
戒語と呼ばれる九十二カ条の戒めのうちの
三っつです。他には「人に物くれぬさきになになにやろうという。くれてのち人にその事をかたる」なんていうのもあります。
ところで、あの白洲正子さんが良寛の書を手にいれようと苦心したけれど、良寛の書いた有名な「天上大風」を見て、「あれが手に入らないならば、他はいらないわ」と言ったとか言わなかったとかいうエピソードをどこがて読んだけれど、どこで読んだか思い出せなくて、少し探しましたが不明です。
「天上大風」ってご存じの方もおおいでしょうが、良寛が子どもに「たこ揚げをする紙に何か書いてちょうだい」と頼まれて書いたという4文字です。
それが二百年以上たった現在でも残っていて、珍重されている。ということは、どういうことか。
もしかしたら良寛に字を頼んだ子どもは、たこ揚げなどしなかったのではないか。越後の柏崎の海風でたこ揚げなどしたら、破れるし田んぼに落ちたら汚れてしまう。だれか大人に頼まれて、凧の字だと良寛さんにうそをついて染筆を頼んだのではないか。あるいは、大人が字をみて横取りしたか。
良寛さんは無名で清貧な坊主というイメージだけど、越後界隈では、生前から良い歌と良い字をかく立派な坊主として著名だったにちがいありません。だから、かなりの数の書や書簡が残っている。
さて、少し前にあるご婦人から、良寛さんの手紙の拓本をいただきました。それが冒頭の写真です。「いんきんたむし再発致候間萬能効一貝御恵投度下候 以上」。良寛さんが医師に薬を催促した手紙で、故榊莫山先生が絶賛した一幅だといいます。いくら紙が貴重品だった時代とはいえ、こんな手紙までも残っている、というのはやはり、柏崎周辺の農民も町民も良寛さんの良さをきちんと理解して、大事にしたのではないだろうか。
いいね。そういう坊主って。私などは……。良寛さんの戒語の中には、「言葉の多き、話の長き」はダメヨ、というのもありますから、このへんで。

 

 


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