つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

凄絶な戦い

2021-06-10 04:32:43 | ちょっとした出来事
いつもの公園へ散歩に出掛けた。

公園を間近にした頃、子供の泣き声が聞こえてきた。

それもけっこう激しく泣いていて、何かを訴えて
いる風なのだ。

見ると、公園の入り口に通じる道路に、ベッタリと
座り込んで泣いている4〜5才くらいの男の子だ。
 
母親が見当たらないなあと見渡せば、その30メートル
ほど先に母親らしき人が、時折り、チラとこちらを
振り返りつつ、知らん顔を決め込むように立っていた。

子供はなおも激しく泣いていて、よく聴いていると、
「抱っこ抱っこ!」と抱っこをせがんでいるようだ。

母は、これを許すと、あの抱っこ抱っこ攻撃に屈して
しまい、何かにつけ「抱っこ!」という必殺技を出される
ことになる。

これは、母と子の凄絶なる戦いなのではないだろうか
と思った。

母は、屈するものかと、知らん顔を貫いている。

すると、さすがに子供がじれたか、スックと立った
のである。

オッ降参か、と思いきやまたドンと座り込んで、
泣きながらの「抱っこ抱っこ!」の波状攻撃を開始
したのだ。

私は心情的に、母親の味方に着いて、「負けちゃダメだよ!」
と、心中エールを送ったのだった。

しかし、こちらは無関係の散歩者なので、あからさまに
戦況を眺めている訳にもいかず、チラ見をしつつ、公園の
周りを一巡り。

しばし、視界から親子が消えてしまったのである。

一巡りし終わると、またあの親子が視野に入ってくる
ころだが、やはり、あの戦いは気になって仕方がない。

はてさて、あの親子の意地を掛けた凄絶な戦いは
いかなる結末を迎えたのか、はたまた、続行中なのか…

見るとはなしに視線を送ると、先ずは母親が見え、
その手に子供が手を引かれ、テクテクと歩いて
いるではないか。

子供の表情までは分からなかったが、抱っこではなく、
歩きとなると、どうやら軍配は母親に上がったようだ。

何となく、こちらもホッとしてチラ見のエールを
送ると、母親はちょっと「お騒がせしました」の
声無き声のはにかみ笑いを返したのだった。

空はスッキリと晴れ渡り、時折りツバメの旋回が
我が帰りの頭上をかすめ飛んで行くのだった。





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