頃は花金のPM6時ごろ…。
久々に、友人F氏と飲もうと約束の地へ向かうべく、
電車待ちをしていたときだった。
ホームで何気なく線路上を見ていると、
上り電車と下り電車が行き交う線路の間に
一輪の花が咲いていた。
花の名前はわからなかったが、ヒメジョウオンの
ような、白っぽく小さな花で、葉っぱを4~5枚付け、
30センチ弱程の高さで、ひっそり咲いていた。
「あ~あ、あんなところに…」と驚いて見つめた。
もちろん、コンクリートやアスファルトの
ヒビの隙間から花が咲いているのを
見たことはある。
しかし、その場所はあまりにも過酷では
ないかと思ったのだ。
上下の電車が、すぐそばをのべつ行き交うので、
その騒音、振動をまともに受けなければならない。
見ていると、風圧で行き交いの度に揺れている。
これが、1日に何度繰り返されるのだろう…。
しかも、周りには雑草すら無くて、ポツリと
一輪だけ咲いているのだ。
騒音、振動に加え、孤独の三重苦のストレス地獄である。
正直、自分だったらとても…と、しみじみ思ってしまった。
「なんという強さだ…。」
真夏のゆうべに見た一輪の名もわからなき
花は、飄然と立つ雄姿に見えた。
電車が来て乗った後も、その雄姿は
我が胸中に咲いたままだった。