つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

蝉のたそがれ

2008-08-07 04:28:15 | 俳句
きょうもクマゼミを筆頭にセミ時雨(しぐれ)がかまびすしい。

しかし夏を代表する昆虫のセミは大好きなので、我が俳句でも
多く取り上げている。

   海峡を 渦潮みんみん 鳴きあえる

これは会社の慰安旅行で四国に行ったときに詠んだものだ。
みんみんというのはミンミンゼミのことである。
それまでミンミンゼミは関東一円にしかいないと思っていたので
大合唱を四国で聴いたときには驚いてしまった。

   窓を打つ 蝉の前足 ひとこすり

飛んできた蝉がガラス窓に気づかずコツンと当たり、とっさに
前足でガラスをひとこすりしたのを見たのである。

   木を鳴かす にいにい蝉の 何処にいる

外国から来た人が蝉の鳴いている木を指差してあの鳴く木を
売ってくれと言ったそうな。

夏真っ盛りになると

    一枝を 蝉の殻殻 蝉殻殻

このように連なっているのを見たことがある。

さらに熱帯夜になると

    恋蝉の 真夜の一山 眠らせず

真夜中に聴いたセミ時雨である。

しかしやっぱり昆虫は命のたそがれを詠んだものが多い。

    あおむける うつぶせる 地の蝉時雨

今まであんなに激しく鳴いていたのが一匹一匹落ちてゆく。

    蝉の四肢 空搔きて聴く レクイエム

今死に行く蝉が仲間たちの声を葬送歌として聴いているのである。

    落蝉の 向けし指先 蹴り返す

やがて秋まで生き残った蝉は

    秋蝉の 寄る辺の爪に 胸を貸す

我が胸に止まったことがある。

こうして蝉の季節は終わりを告げるのである。

実は好きな蝉の声もあまり聴きたくない声もあるのだ。
それはつくつくぼうしなのである。

どうして?あんなかわいい声を、と思うかも知れないが
わたしもあの「つくつくぼーし!」と可愛く鳴く声は
好きなのだが、あの声が聴こえてきだすと、大好きな夏が
終わりを告げるのだ。

つくつくぼうしは秋の蝉なのである。今はまだつくつくぼうしの
声は聴いていない、しかしやがて蝉時雨の中にひっそりと
混じり始め、秋を連れてくるのである。

秋は寂しいよう…。

コメント
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