つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

夏の声

2006-08-12 06:41:02 | ちょっとした出来事
私は九州に生まれ、名古屋に越して、東京へと出て行った。
それから20数年。再び名古屋へ、帰ることになったのだが、
それが丁度10月だった。

久々に踏む名古屋の地を味わいつつ、
扇橋という橋を渡りながらふと、川を覗くと、
割と澄んだ流れの中に、群れ泳ぐ魚が見えていた。

東京では、こんな光景はなかなか見ることはできなかったので、
嬉しかった。さらに嬉しかったのは、翌年の夏になって、熊蝉の声を
聞いた時である。

東京でも、蝉の声は聞くのだが、熊蝉の声は
まず、聞かない。名古屋で特に驚いたのは、並木道の並木で、
熊蝉が、「ワシワシ」と大鳴きしていたことである。

以前住んでいたときは、こんなに蝉が鳴いていたかなあ…
と、思うほど鳴いていた。

私は夏が大好きで、その夏の声である蝉の声は好きなのだ。
特に熊蝉は大好きで、東京で聞けなかった分、嬉しかったのである。

九州は、長崎生まれなのだが、長崎では熊蝉はよく鳴き、ミンミン蝉
は、鳴かない。だから、TVで、東京が舞台のドラマなどで、「ミ~ンミ~ン」
と、ミンミン蝉の声が入っていたときなど、「あれ、蝉のつもりか…」と
ヘタな音声位に思っていたのである。

逆に東京で、生まれ育った人は、熊蝉の声を不思議がるに違いない。
ところが、最新情報によると、12~3年前あたりから東京でも
熊蝉が、ちょこちょこ鳴き出しているという。どうも地球温暖化の
影響で、熊蝉が北上しているらしい。

蝉の声もよく聞いていると、一日でそれぞれの時間分担みたいなものが
あって、鳴いている。
まず、朝一でニイニイ蝉が、例の耳鳴りのような、声で「ジ~…」と鳴き出す。
続いて、熊蝉の登場だ、「ワシワシ」と昼頃まで鳴いている。
それからベルのような「ジリリリリ」の油蝉となり、
それぞれが時折り重なり合って、蝉時雨となる。

熱帯夜のときなど、真夜中でも、油蝉が泣き通したことがある。
それにしても、蝉のあの小さな体のどこから、町中に響くような
あんな声が出てくるのか、不思議でもあり、驚異でもある。
そのせいもあって、私の蝉の句は、多い。

恋蝉の真夜の一山眠らせず
木を鳴かすにいにい蝉の何処にいる
仰向けるうつ伏せる地の蝉時雨
蝉の四肢空掻きて聴くレクイエム
羽ばたきて水輪みのわの蝉時雨

短い命を体を振り絞って鳴く蝉こそ、夏にふさわしい存在だと思う。
今も蝉が眼を覚まして鳴き始めている。
夏を惜しむように…



コメント
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