武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

064. 数 -Quantidade-

2018-11-25 | 独言(ひとりごと)

 今年も箱に入った鉛筆を日本から仕入れてきた。
 ごくありふれた昔ながらの深緑色に金文字の三菱鉛筆。安いし、これが僕には使い勝手が良い。1箱に12本、1ダースが入っている。それを2箱、2ダース分。
 当然のことだが鉛筆は1ダース、2ダースと数える。考えてみると日本で他にダース単位で数える物が少ないように思う。

 ポルトガルではセトゥーバルの名物料理「ショコフリット」(モンゴイカのから揚げ)を注文する場合、ウンドース(1ダース/2人前)、メイオドース(半ダース/1人前)という言い方をする。

 スーパーで買う鶏卵も1ダースか2ダースのパックに入って売られている。メルカドのばら売り卵でも1ダース幾らの値段だ。
 日本の卵は10個入りパックだ。と思っていたら、今年は何と8個入りのパックが登場していた。隣で買っていたおじさんも「値段を上げにくいから数を減らしたんやね。」と苦笑い。

 ポルトガルに限らず欧米にはまだまだダース単位で数える物が少なくない。
 秋、町角に登場する焼き栗は1人前12個をイエローページに包んでくれる。小さいから1個おまけで13個ということはないし、大きいから11個と言うこともない。大小取り混ぜ、必ず1人前は1ダースだ。イエローページの1枚を破って円錐状に丸めた中に、「ウン、ドイス、トゥレス、クワトロ、シンコ、セイス、セッテ、オイト、ノヴ、デス、オーンス、ドース。」と口ずさみながら放り込んでいく。
 落語の「時蕎麦」ではないが、数えている途中で時間を聞いてみても面白いかも知れない。
 「おっちゃん、今、何時?」
 「ケ・オーラシュ・サォン・アゴラ?セニョール」 [Que horas são agora? Sr.]

 フランスのエスカルゴ(カタツムリ)は1人前が半ダース。ガーリックバターを詰め込んで天火で香ばしく焼く。それ専用の6個分がくぼみのある器に出てくる。専用の掴む道具と専用のほじくる道具を駆使して頂く。もう1個食べたいと思っても、くぼみは6個しかない。増やしようもないし、減らしようもない。

 洋食器が6客1揃えなのに対して、和食器は5客1揃えだ。日本では6個、12個という数はどうもなじみにくいのかもしれない。10進法が良い。

 10進法なら単価計算がたやすい。暗算でできる。日本のスーパーの、卵の単価は一目瞭然だ。1パック198円の卵の単価は19円80銭。1ダース(12個)で1個の単価を出すには僕には電卓がいる。

 焼き栗の単価が幾らになるか考えながら食べるポルトガル人は恐らくいない。

 でも確か日本でも、瓶ビールのコンテナ箱は2ダース(24本)入りだ。缶ビールも1箱2ダース入りではなかったか?鉛筆以外にも1ダース、2ダースという単位は残っていたのだ。

 先日、宮崎での個展を終え、黄金週間のほとぼりがさめた頃、大阪の実家で8日間を過した。

 ポルトガルでは普段、晩酌に安いワインを飲む。ワインは1本、750ミリリットル。
 帰国時、宮崎では「霧島焼酎」を飲むのを楽しみにしている。焼酎は1升1,8リットル。
 大阪では大瓶の瓶ビールだ。父と差しむかえで飲むのが嬉しい。これが633ミリリットルで中途半端な分量だ。

 歩いて3分、今川を超えたすみれ橋のたもとに量販酒店が出来ている。何時も冷えたのが売られていて便利だ。

 大阪ではビールを飲むせいか、新陳代謝が盛んになり、毎朝早く5時頃には目が醒めた。
 蒸し暑い時季、朝の散歩は気持ちが良い。今川の中洲、漆堤公園での朝の体操にも参加した。その前後2~3時間も歩いた。万歩計を付けていたら相当の歩数を稼いでいた筈だが、以前に3個もの万歩計を壊している。どうも僕と万歩計は相性が良くないようだ。
 毎朝、桑津神社にお賽銭をあげにも立ち寄った。

 同級生の家なども探してみたが、殆どの表札が代っていた。
 母校桑津小学校の敷地内から最近《重要な遺跡が出土した》と校門のところに表示されてあった。あのあたりはどこを掘ってもちょっとした遺跡が出てくる様だ。歩くといろんな発見がある。

 漆堤公園の先にある白鷺公園にも行ってみた。小学生の時に夢中でローラースケートの練習をしたところだ。
 元々白鷺公園は田んぼや畑のど真ん中にあった不思議な公園で、戦前にはどこかの財閥の持ち物だったのか?広大な西洋式庭園風の公園で、その公園の中心部に噴水跡があった。水がなく、コンクリートの円形で、直径10メートル程の、からのプールの様な場所が僕の格好の練習場だった。練習して練習して、鉄の車輪が薄く磨り減ってしまっていた。ローラー(散弾)が車輪から飛び出し、前につんのめって転倒し右足首を複雑骨折してしまった。そんな思い出の公園だ。

 噴水跡は今はもう既になかった。
 そのあたりは高い金網に囲まれた野球場になっていて、本格的なユニホームに身を包んだ中高年が入り混じって早朝野球が始まろうとしていた。そこに若い母親に「早くしなさい!」などと叱咤され、中学生くらいの兄弟らしき少年が目をこすりながらのろのろとグラウンドに入っていった。数が足りなくて駆り出されたのかも知れない。僕も子供の頃はいつも駆り出された口だが、チームの足を引っ張るだけの存在に違いはなかった。でも彼ら兄弟は僕とは違って、いかにも戦力になりそうに見えた。

 先では2~30人の人達が扇状になってラジオ体操をやっている。僕も早速、最後列に加わった。ラジオ体操第1が終わって、リーダー役の人がラジカセを担いでどこかに行ってしまった。「えっ、第2はないの?物足りないな~」と思っていたら、間髪を入れずリーダーが入れ替わった。
 こんどは柔軟体操だ。
 ところがこれが10進法なのだ。
 体操は音楽と同じリズムで4拍子、8拍子が心地よいのだろうと思う。

 いち、にい、さん、し、ご、ろく、ひち、はち。にい、に、さん、し、ご、ろく、ひち、はち。さん、に、さん、し、ご、ろく、ひち、はち。しい、に、さん、し、ご、ろく、ひち、はち。とやるのが普通だろうと思う。

 ところが、このリーダーは1,2,3,4,5,6,7,8,9,10.とやる。その繰り返しだ。
 体操で10拍子はやりにくくはないのだろうか。2つに分けると5拍子、5拍子になる。体操は音楽と同じで4拍子、8拍子が良い。
 3拍子ならワルツで「アン、ドゥ、トロァ。アン、ドゥ、トロァ」などと数えれば、優雅な体操になるのかも知れないが、5拍子ではずっこけてしまう。
 いち、に、さん、しー、ごぉ。ろく、ひち、はち、くぅ、じゅう。まあ、出来なくはないが何だか字あまり的で、良く言えば前衛的だ。

 かつてジャズのデイブ・ブルーベックは5拍子を編み出して注目を浴びた。「テイク・ファイヴ」だ。歴史的名曲として後世にも残っている。

 でもテイク・ファイヴ(5拍子)で体操は馴染めない。僕は白鷺公園の柔軟体操で関節が外れそうになっていた。VIT

(この文は2008年7月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

 

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