先月は「箱入りワイン」というタイトルで書きましたが、早速、宮崎に住む友人から下記の様なメール(一部抜粋)が届きました。
< 今は、箱入りとは言わないで、紙パック入りの焼酎とか紙パックの牛乳と言いますね。プラスチックのはペットボトル入りお茶とか…日本語もいつの間にか言い方が変わっているので、大変ですよね。>
本当に時代と共に新しい物、新しい言葉が出てきます。
日本にずっとお住まいの場合はいつのまにか慣れてしまって、そういった物がいつ頃出現したのか案外と気が付かないのかも知れませんが、僕が未だ20歳の頃には紙パック入りの牛乳はありませんでした。牛乳は一合入りのガラス瓶と業務用の五合のガラス瓶入りでした。
1970年頃の話ですが、僕は丁度海外に行くためにお金をせっせと貯めていた時で、昼はガソリンスタンドで、夜は喫茶店でバーテンのアルバイトをしていました。
ガソリンスタンドでは僕はパンク修理が得意で、同僚たちはあまり好きではない仕事の様だったので僕が一手に引き受けていました。
オートキャンピング旅行ということも視野にありましたので、いずれは役に立つとも思っていました。そしてそれが現実になりました。4年間でヨーロッパを5万キロ走りましたが、幸か不幸かパンクは1度もしませんでした。
ポルトガルでクルマに乗り始めて12年になりますが、先日初めてパンクをしました。パンク修理でガソリンスタンドに行きましたが、その方法はかつてとは全く違っていて驚きました。いちいちタイヤを外さないでやってしまいます。そもそもチューブ自体がない様です。
喫茶店でもプリンが得意で、毎日12個のプリンを仕込んでいました。たぶん、今でも上手に作れると思いますが、材料は卵が6個に砂糖が何グラム、バニラ・エッセンス少々、そして牛乳が五合と覚えています。カラメルも砂糖を焦がして作っていました。
1971年からストックホルムに住むことになりました。レストランで皿洗いのアルバイトなどをしましたが、ストックホルムの牛乳は既に紙パック入りでした。僕が初めて見る紙パックの牛乳を開けるのに手間取っていると、スウェーデン人の若いコックは「こうするのだよ」と教えてくれたのを覚えています。
今では牛乳パックは資源ごみですので、解体して紐で一纏めにして出さなければなりませんが、解体するのも一仕事です。
スウェーデンでは文化の違いとして感じたこともいろいろでしたが、その頃日本では、喫茶店でコーヒーを注文すると、スプーンの上に角砂糖が2個乗せられてきました。今ではあまり角砂糖を出す喫茶店は少ないと思いますが、スプーンごとコーヒーの中に沈めるとシュワーと溶けるものです。
それがストックホルムでは角砂糖も少し平べったくて石のように硬くてなかなか溶けないものでした。1個づつ紙に包まれているのもあり、まるで砂糖菓子の様に見えましたが、かじると歯がもげそうになるほど硬いものでした。
ストックホルムの人はコーヒーをブラックで飲む人が多くて、僕もそれに習い、それ以来今でもブラックで飲んでいます。
あるレストランでコックをしていた時もあります。そのレストランのコック仲間は皆外国人ばかりで、シェフがギリシャ人のコンスタンティン、副シェフが亡命ポーランド人そしてオーストリア人と僕が日本人、それにポルトガル人も居ました。ルイスという名前で、小さく細くてひょうきんでコック仲間からは軽く見られていましたが、真っ黒い髪をポマードで決めてクラーク・ゲーブルを少し崩した様な面持ちで、アルバイトの若いスウェーデン人女性にはもてていました。朗らかでいつも笑っていましたが、笑うと歯並びが悪く、その歯にニコチンがこびり付いていて、何故女の子にもてていたのか未だに僕には判らない謎です。
そのルイスは休憩時間、コック仲間全員で座ってコーヒーを飲むのに皆の目の前でその硬い角砂糖を8個もカップの中に入れたりもしていました。スウェーデン語で「エン、トゥオ、トゥレ、フィーラ、フェム、セックス、フィーユ、オッタ…」とゆっくり数えながら入れていくのです。コック仲間からはひんしゅくを買います。コーヒーはカップからあふれてソーサーにこぼれ出ます。それでも構わずにかき回すのです。半分はひょうきんな冗談なのでしょうが、それを平気で飲み干します。ソーサーにこぼれたコーヒーももう一度カップに移して飲み干していました。
ストックホルム随一の百貨店の側にあるレストランでしたから、昼時には戦争の忙しさで、豚のフィレ肉などはあらかじめ焼いておいて注文に応じて何種類かのソースをかけて効率よく出すと言うのがその店のやりかたでした。
ルイスは忙しくて食事の時間が取れない時などはパンにその焼いた肉を挟んで旨そうに立ち食いをしていましたが、まさに今ポルトガルで、僕たちが好んで食べている「ビッファナス」そのものだったのです。あの時ルイスは多分、ポルトガルの郷愁を味わっていたのかも知れません。8個は入れ過ぎですが…。
もう何十年も前の思い出ですが、僕はそのルイスの生れたポルトガルに今住んでいるのです。
ポルトガルのコーヒーは殆どがエスプレッソですが、小さなデミタスカップに半分程の極濃いコーヒーです。それにポルトガル人たちはグラニュー糖の紙袋を振り、端っこを無造作に破りたっぷりの砂糖を入れます。多分、どろっとしたものになるのでしょう。
これも日本では紙袋入り砂糖とは言わないでペットシュガーと言いますが、ポルトガルでは [Pacotes de Açucar] パコテシュ・デ・アスカー、直訳すると小包砂糖です。英語では[Sugar Packets ]。そもそもペットボトルとかペットシュガーというのは恐らく海外では通じない和製英語なのかも知れません。ペット・フードなら通じますが…。 そう言えば、昔、ドリス・デイのティチャーズ・ペットという歌がありました。映画にもなりました。軽快な歌で今も耳に残っています。
今、日本でもコーヒーの砂糖は紙袋入り、ペットシュガーが主流だろうと思います。かつてアメリカでは殆どがガラス容器入りでステンレスの特殊な蓋が付いていて、一度傾けるとスプーン1杯分の砂糖が出る仕組みのものでした。アメリカ映画には今もよく出てきます。一時は日本でもたまに見かけましたが今はどうなっているのでしょう。
ストックホルムでも今、コーヒーの砂糖はどのように変わっているのかは知りませんが、ポルトガルでは殆どが紙袋入りです。
紙袋の中に恐らく10グラム程のグラニュー糖が入っているのでしょう。日本との違いは、その紙袋のデザインが様々でポルトガル人のコレクター心理を誘います。
以前、ポルトガル語のマリア・ルイス先生が砂糖紙袋のコレクションをしているとのことを書きましたが。その後、蚤の市でもそんなコレクションの交換をしている人をみました。郵便切手もありますが、コインは相変わらずの人気の様です。その他、ロゴ入りコーヒーカップとかサッカーグッズ、或いはお菓子のおまけ、などあらゆる物がコレクションの対象になっています。
砂糖紙袋のコレクションと言っても砂糖は目立たない穴を開けて出してしまいます。それを名刺入れの様なファイルブックに保存して楽しんでいる様です。希少なものもあるのでしょう。僕もコレクションをするつもりもありませんでしたが、カフェでコーヒーを注文すると必ず砂糖袋が1つ付いてきます。ブラックで飲むのでそのまま残すことになります。捨ててしまうのも勿体ないので持ち帰ることにしました。それがいつのまにか溜まっています。中味はマーマレードを作るときに使います。
今回はその砂糖紙袋(ペットシュガーの空き袋)の写真集です。
甘いお菓子ばかりのコレクション
左側上からガンジー、バスコ・ダ・ガマ、ペッソア、アインシュタイン、右はデルタ・コーヒー80周年そして何かのイヴェント
地方限定のデザインも
ホテル専用もあります
世界遺産など名所の写真も
モデルの写真や可愛いイラストも
文字だけのシンプルな物から写真やイラストを使った凝ったものまで
表のデザインが同じでも裏が違っているのもあります
同じように見えても微妙に違い幾つかのバリエーションがあったり
上はリスボンのスケッチ下は文章が全部違います
色違いもあります
コーヒーメーカーが同じカメロでもいろいろあります
同じに見えても少しづつ違います
少数派ですがスティック型もあります
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