三陸地方は繰り返し津波に見舞われた土地だった。昨年の東日本大震災では、「釜石の奇跡」と言われた群馬大学の片田教授の指導する防災教育が注目を集めている。
三陸の人たちは「津波てんでんこ」と言い伝えてきた。それは一刻も早く逃げろ。他人のことも構わずに、てんでバラバラに逃げなさい。という意味だと言われている。
しかし「津波てんでんこ」は、家族の絆を断ち切るという事ではなく、家族の絆の上に信頼をのせた言葉だと片田教授は語っている。
津波の知らせを聞いて、子どもや親が心配で家に戻り、津波に呑まれた人がたくさんいる。教師に従って死んだ生徒もいる。行政の指定した避難所に向かったばかりに、亡くなった方もたくさんいる。
「津波てんでんこ」とは、家族も友人も、それぞれの判断できっと生き延びてくれる。だから自分のことだけを考えて逃げ延びよう。きっと生きて再開できると信じて・・・という信頼と期待の言葉だという。自分の子は逃げる子だ。そう信じているから親は安心して逃げられる。家族の信頼の絆が、あの「釜石の奇跡」を生んだのだと思う。
北海道で津波浸水予測図が発表された。しかし、これは想定にすぎない。片田教授は「想定を信じるな」と真っ先に子ども達に教えた。自然災害は想定を超えることもあるからだ。防災教育は子どもだけではなく地域で広く学んでいく必要があると思う。