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モーリシャスの重油流出事故

2021-03-22 | 日記

録画していた「モーリシャスの重油流出事故」の番組を見た。モーリシャスのサンゴ礁に日本の鉱石運搬船「わかしお」が座礁し、大量の重油が流れ出た事故とその後の記録だ。当時は新型コロナ感染防止の為にモーリシャスの空港が閉鎖され入国できなかったが、空港閉鎖が緩和された後で日本の記者が入って取材したという。したがって事故当時の様子は記者自身の取材ではなく、モーリシャスの当局や民間人が撮影した映像が使われていた。

 重油の大量流出事故と言えば日本海のナホトカ号遭難事故の際の様子が思い出される。重油が流れ着いた海岸で、人々が重油まみれになりながらが重油と海水や砂が混じった真っ黒い塊をドラム缶に汲み上げる作業が、映像に記録されていた。重油の流れをくい止めるオイルフェンスは、サトウキビのワラを使って人々が手作りで作ったという。何百人もの人がサトウキビ畑や海岸に集まり、列に並んでサトウキビのワラをネットで束ねて数百メートルものオイルフェンスを作っている映像も空から捉えられていた。彼らの多くは島全体から自主的に集まって来た人々だという。

「わかしお」の座礁は海岸から1kmくらいの所で非常に近く、作業に集まった人々からも良く見える距離だ。座礁した当初は船全体が見えていたが、巨大なタンカーのような船がサンゴ礁に乗り上げている姿はかなり異様。そこから流れ出る真っ黒い重油の帯が、インド洋の宝石とも呼ばれる青く透明な奇麗な湾一面に広がって行く光景を見て、涙が込み上げたという。世界遺産に登録された場所にも近かったという今回の座礁事故だが、コロナ感染防止による空港閉鎖ということもあり詳細な映像での報道が少なかった。特集を見て、あらためて事故がモーリシャスの人々に与えた衝撃と、事故の影響の重大さを知った。

 事故の原因は、船員の携帯電話に電波が届く距離まで近づこうとしたからだという。通常はモーリシャスから15kmくらい離れて通過するのが航路であり、座礁など起きるわけがないのだ。ところが今回の「わかしお」は、かなり前から通常の航路から離れてモーリシャスの島すれすれとでもいうような進路をとっていたらしい。さらに、モーリシャスの沿岸警備隊からの警告にも応答せず、そのまま座礁という結果になった。当然、船長たちは逮捕されたというが、近年ではGPSで船の位置が分かる装置もあるし、素人考えでは島の近くの地形なら海図でも確認できるのではと思うのに、運航の責任者たちはどうしてしまったのだろうか。

 表面上の重油を取り除いても、今回の事故の影響はまだ数年~十年以上残るという。世界的に貴重なマングローブ林が今後どうなっていくのか、日本からも調査隊が入って調査を続けるということだった。「わかしお」は真っ二つに折れて、船尾だけが砂に埋まって岸から見えていた。「もう事故は過去の事だ、日本の人達もこのモーリシャスの綺麗な海を見て喜んで欲しい、その笑顔を見るのが私たちは嬉しいのだ」と記者に語りかけた現地の人々の話を聞いていると、自分も是非一度訪れてみたいという気になる。新型コロナで観光収入が激減しているそうだが、新型コロナも重油事故も本当に「過去の出来事」となるよう、早く美しい海と活気が戻って来てほしいと思う。