愚ダメ記、真誤付き、思い津記

日記?趣味?妄想?

コロナ禍の大学生

2021-03-18 | 日記

新型コロナ感染防止のために多くの大学の講義がオンライン化されていると聞く。さらに、キャンパス閉鎖により学生が大学キャンパスや図書館に入れない大学が多く、大学一年生では入学以来一度も大学キャンパスに入ったことがない学生もいるという。かなりショッキングな情報だ。しかし、テレビ番組で取り上げられるのは、そのような学生個々の例であり、大学新入生全体のどれくらいの学生がそのような状況に居るのか、同じ大学・学部・学科の学生同士が知り合う機会も無いという学生がどの程度いるのかについて調査したという情報はほどんどない。

 確かに、コロナ感染防止を考えると大学施設への完全に自由な立ち入りを認めることは出来ない状況だろう。しかし、いくつかの施設には感染防止対策を取りながら、制限された状況での立ち入りを認める方法はあるのではないかと思う。キャンパスに一度も入れないという例が報道される一方で、いくつかの大学でコロナ対策を取った上で学生食堂の利用を認めたり、キャンパスに立ち入る機会を設けたりしたという報道があったこともある。全体として、どのような状況なのか?ということが掴めない報道ばかりの上に、大学への学生の立ち入りがどこまでは可能じゃないか、という提案もない。もう一年近くが経過している中で、ただ「学生がかわいそう」で終始しているのでは、何の問題提起にも解決への提言にもならないと感じる。

 実際、実習系・実験系が必要となる学部では、かなり気を遣った感染防止対策を考え、制限された形で授業を行っていると聞いているし、大学の全ての施設が完全に閉鎖されているという印象を与える報道は如何なものかと思う。せめて図書館くらいは感染防止策を講じて利用できそうにも思うが、検温や手指消毒は可能としても、触れた本や開いたページをその都度消毒するのは面倒というより本を傷める可能性が高く非現実的。図書館への立ち入りを認めても、比較的自由なのは自習空間としての利用と一般図書の利用程度で、学術書籍へのアクセスは制限せざるを得ないかもしれない。ただし、電子書籍化されたテキストなどに大学内LANを経由でのアクセスが可能であれば、図書館や一部の講義室に自分のパソコンを持ち込んでの電子閲覧での利用は考えられる。

 「大学生がかわいそう」という報道を見て感じるのは、「友達が出来ない」「大学生になったと実感できない」という切り口が多く、感覚的・感傷的な説明しか出て来ないという点だ。片方で「我々の頃は、授業などサボって喫茶店で議論ばかりしていた」などという類のコメントが出ると、「最近の大学生は大学に面倒見てもらわないと友達も作れないのか」という意地悪な皮肉まで聞こえてきそうになる。確かに、大学側に学生(特に一年生)に対するコロナ禍ならではの臨機応変の対応が必要であると強く感じるが、それを問題として取上げる報道には、さらに問題の本質を突いた解決への提言を伴う報道にして欲しいと願う。コロナ禍が始まって1年が経つ、「分かりやすく、かわいそう」な一年生だけでなく、2年生以上がどう感じているのかも知りたいところだ。

 「小・中学校や高校は再開したのに、大学はなぜ開かれないのか」という学生側の疑問に対しても、ただ「大学の言い分」を載せるだけで報道機関としての意見も判断も示さないこともどうなのか。これまでは「10歳以下、10代の感染はごく少ない」「子供から大人への感染は起こりにくい」との判断の中で、当初の全国的休校状態が解除されたことは良く知られた事実である。それに対して大学生の年代は、感染増加の中心となっている20代を含んでいることが大きな原因の一つ。そして、大学生が自宅と大学の往復だけでなく(高校以下の生徒に比べて)遥かに大きな社会的活動範囲を持っていることが二つ目である。

 確かに、感染者が出た際の大学への批判とか風評被害とかも無いわけでは無いと思うが、その2つが大学生活の制限に関わる大きな理由であることに、報道機関の社会的役割として正面から向き合う姿勢が見られない。「小・中学校や高校は再開しているが、大学はなぜ開かれない?」という問いに、まるでその理由を知らないかの如く無言で居るのは、社会的責任を果たす気が無いと言えるのではないか? もし、新型コロナ変異ウイルスによる小・中・高の生徒への感染拡大の恐れが生じれば、間違いなくそれらの学校も閉鎖されるだろうと想像される。

 「大学生はかわいそう」の報道を見て感じるのは、大学生が抱えた問題を聞き取ることだけに終始せず、社会の責任ある報道機関としての意見や提言を示して欲しいということ。この期間を大学生として過ごしている大学も大学生も、コロナ禍終息後の急変が予想されている世界の中にあって、露呈した多くの問題点を克服しつつこの国を動かす重要なメンバーであるのだから。