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マイクロプラスチック

2021-03-06 | 日記

ヴァンデグローブ(ヨットでの単独無寄港世界一周レース)を完走し、先月16位でゴールインした白石康次郎氏の話題をテレビで聞いた。その中で白石氏がマイクロプラスチックの調査に協力するため、レースをしながら世界の海でサンプリングをしていたことを知った。マイクロプラスチックは5mm以下のプラスチックを指し、紫外線や風化で劣化したプラスチックごみが砕け小さな破片になったものがほとんどだという。

 日本でプラスチック使用が盛んになった高度成長の後半期、川や山野に捨てられても朽ちないプラスチックごみの増加が問題になったが、その頃は川や海岸に溜まっていくプラスチックごみが美観を損ねるという側面だった。小さく壊れて砂や土に埋もれ・紛れていくのはむしろ「目立たなくなって良かった」という、今思えば浅はかな理解でしかなかった。今や、小さく見えないプラスチックごみは、顕微鏡でしか確認できないほどの大きさ(小ささ)の文字通りマイクロプラスチックとなって、自然界に散らばっている。それは、自然に生きる生き物に取り込まれ、食べ物を経由して人間の口にも入っている可能性がある。

 よくマスコミで報道されるマイクロプラスチックは、まだかろうじて目に見えるミリ単位の大きさだ。それでも小さなものは砂粒と見分けがつかない。ウミガメがビニール袋を食べて胃の中がビニール袋で一杯だったということは、確かに十分にショッキングな映像だ。しかし、魚や貝の内臓に顕微鏡レベルのプラスチック粒子が溜まっていることまで想像しなければ、マイクロプラスチックの脅威と問題点は正確には理解されない。体内に取り込まれても分解できずに溜め込まれる微粒子としては、煤塵やディーゼル排気ガスなどに含まれる炭素粒子を思い起こす。

 肺に吸い込まれた炭素粒子を免疫系細胞が食べて掃除するが、体外には排出されず肺近くのリンパ節に大量に溜まっている。やがてそれらの中に、数ミクロンの大きさに摩耗したマイクロプラスチック粒子の塊を見つける時代が来るのだろうか。プラスチックの成分は様々で、集積すれば細胞の悪性腫瘍化を誘導するような物が含まれてないとも言い切れない。人間は半世紀のうちに厄介なものを創り出し、そして、その危険性を想像もしないままに世界中くまなく撒き散らしてしまったのだ。それは、人間が日々創り出し生活に用いている新規の化学物質(自然界には存在しなかった分子・化学物質)にも同様に当てはまる。すべてを調査・回収できないまでも、可能な限りそれらを回収していくことが、やがて自分たち自身の身を守る事につながっているはずである。