灯台もと暗し。
言葉通りのことがつい最近ありました。
あこがれの赤い実との嬉しい出会いをもたらしてくれた、「もと暗し」です。
少年は、書物の世界を逍遥することで、見知らぬ世界のことを学びます。
年間を通して温暖な気候に恵まれた地、四国西南部の宇和島で生まれ育った少年には、どうしても出会えない植物がありました。
寒い地域に生育する植物たちです。
白く煙るように咲くリンゴの花
まっすぐに伸びたポプラの並木
皮がむけるという白樺の木
浜茄子の花と赤い実
いちはやく春を告げるコブシの花
香りの層が漂うリラの花
歌に歌われた水芭蕉の花・・・
ざっと思い出すだけでもこんなにあります。
東京で生活するようになったことで、少年の日に夢想していたものとの出会いを果たしていきました。
東北の地を旅したことでほとんどのものには出会えましたが、長年叶わないものもありました。
そのひとつに「スグリ」があります。
少年とスグリとの出会いは、名前の最後にeが付く女の子の話が最初です。
腹心の友と森の秘密の場所にスグリを摘みに行くとか、その実でジャムやケーキを作るといった話には、悲しいかな、どうしても実感が持てませんでした。
外国の話だし、雪の積もる地方のことだし、少年を取り巻く世界とはまったく違うのだから、しょうがないこととは思いましたが、以来小さな赤い実には、あこがれを持っておりました。
日本語らしくない響きをもった「スグリ」は、魔法の言葉のように焼きつきました。
スグリとの出会いは、日常の場で唐突にやってきました。
花屋の店頭で、初めての出会いをしました。
枝物の花材として、小さな赤い実を付けたスグリがバケツに立てられていたんです。
20年くらい前になるのかな・・・
「これって、スグリですか?」と、考えもしないで口をついて出た言葉に、自分で驚いてしまいました。
何十年も忘れていたスグリという単語が、使い慣れた日常語のようにすんなり出てきたものですからね。
画像などでも見たことはなかったのですが、何故だか見た瞬間にわかりました。
不思議な出会いでした。
その後も季節になると、花屋で見かかることはあったのですが・・・
それがなんとです、goro’sが入っているビルの前、有名なおでん屋さんの軒先の植栽のなかに、この赤い実があったのです。
店の前とはいっても、この通りは滅多に通りませんのでね、赤い実が目に飛び込んできたときには、興奮しましたよ。
道行く人には聞こえなかったはずですが、快哉をあげておりました。
店に取って返し、カメラに収めたのがこの写真です。
ルビーに例えられる、透明感のある小さな可愛い赤い実です。
葉の陰にぶら下がっておりました。
すぐ側にあったシアワセに、しばし浸ってしまいました。
これで楽しみがまたひとつ増えましたよ。
そうです。
來春は、スグリの花がみられることになりそうです。
PanPan、最近全く収穫なしです。うー、そろそろ赤い実パワーが必要な時期なのにー。
来年の春、楽しみですね。
そう、最後にeのつく女の子の料理集、持っているので何か作ってみようかな?彼女の想像の世界は昔からの憧れでした。
わかりますよ。
こちらも、伊達に彼女と付き合ってませんからね。
腹心は、匂いでわかるのです。
赤い実、まだまだありますよ。
すぐアップします。