ティーガーデン

大好きな紅茶を飲みながら、日々の生活で
咲いた花々(さまざまな素敵)をご紹介していきます。

八日目の蝉

2011年05月15日 22時37分41秒 | Movie・Book・TV
なぜ、私を誘拐したの?
なぜ、私だったの?


21年前の誘拐事件。
犯人は、父の愛人。
連れ去られたのは、私。
私はその人を本当の「母」だと信じて生きてきた。



今まで母親だと思っていた人は、自分を誘拐した犯人だった。
21年前に起こったある誘拐事件。
不実な男を愛し、子を宿すが、母となることが叶わない絶望の中で、男と妻との間に生まれた赤ん坊を連れ去った女、野々村希和子(永作博美)、その誘拐犯に愛情一杯に4年間育てられた女、秋山恵理菜(井上真央)。
実の両親の元に戻っても「ふつう」の生活は望めず、心を閉ざしたまま成長した恵理菜は、ある日自分が妊娠していることに気づく。
相手は希和子と同じ、家庭を持つ男だった。
封印していた過去と向き合い、かつて希和子と暮らした小豆島へと向かった恵理菜が見つけた衝撃の真実。
そして恵理菜の下した決断は・・・?



この作品は、直木賞作家、角田光代さんが手がけた初の長編サスペンス。
05年から読売新聞にて連載されていた作品。
2010年には、TVでもドラマ化され、壇レイさんが主役で放映されたそうです。


これは小説を読んだし、映画も観ました。
本屋さんで、小説の見出しを読んだだけで、強烈にひかれるものがあって・・・。
しかしその内容は、単なるサスペンスとは違って、色んなものを感じ取る事になりました。
そしてデイジーと引き込まれるように、公開2日目に映画を観に行きました。
小説を読んでいたので、より理解して観れました。

昔より涙もろくなった私ですが、鑑賞中に何度どれだけの涙を流したかわからないほど、泣いてしまいました。最後は涙が止まらなくて、どうしようかと思ったくらい。
そして帰宅後も思い出して泣けてきたのです。

そして読書日和の小説の記事を読んで、又思い出してしまい、泣けてきました。

それくらい、何かをたくさん感じてしまったのです。
色んな事を語っているストーリーです・・・。


小説は2部構成になっていて、1部では、野々村希和子の、薫を誘拐するところから逃亡・・・、そして逮捕されるまでが書かれています。
希和子中心の内容となっています。
2部では、大学生でアルバイトをしながら1人暮らしをしている恵理菜(薫)が中心の内容。希和子が逮捕された後から現在まで、どのような生き様をたどって来たか。そして、ひとつの命が自分の体の中に宿った今、過去をどのように受け止め、これから先どのように生きていくのか・・・、苦悩を抱えながら、1つの前向きな結論を見出していく。


最後は希和子にも恵理菜にも一筋の光を見たような形で終わるので、妙な安堵感はありましたが、全体的にすごく切ない内容です。



希和子の逃亡生活は奇跡的に4年も続いたわけですが、東京→名古屋→小豆島のどの逃亡先でも、女性に助けられていると言う特徴がありました。
登場する主な男性達は、希和子の相手にしろ、恵理菜の相手にしろ、身勝手で無責任な男性達と言う設定でした。
希和子は、亡き父の残してくれた財産等、多額のお金を持っていたのに、とある逃亡先エンジェルホームで、全額ホームに託してしまう形となって、それ以降の逃亡先では、ギリギリの生活となるのですが、それでも薫とどうか一日でも長く、一緒にいられますようにとただただ祈る思いで、愛情いっぱいで育てて行く。
貧困な生活だけど、小豆島の美しい自然をいっぱい薫に感じさせてあげる毎日で、薫は健やかに自然体で成長して行く。
周りからは、本当の親子にしか見えなかった・・・。



本当の両親の元に返された薫(=恵理菜)は、家族に、真から心許すことができず、そして、周囲の人からも「誘拐犯に育てられた子」と言う目で見られ、心を閉ざしたまま成長して行く。
何も罪のない子供なのに、本来なら普通に明るく育つはずだった子供だったのに、身勝手な大人達により数奇な運命をたどる事になった恵理菜の心の内を思うと、胸がひきさかれそうなくらい心が痛みました。

最近再放送していて、ちょっとしか見ていないけど、「マザー」とかも、大人の勝手により、子供の人生にものすごい影響があるなと思って見ていたんですよね。

エンジェルホームで恵理菜と姉妹のように育った千草もそんな大人の犠牲者。

数奇な幼少時代をたどってきた二人は心通じるものがあって、この再会が1歩を踏み出すきっかけになります。



ストーリーの最初から最後まで「がらんどう」と言う言葉が多く出てくるのが印象的でした。それは希和子の心がはりさけそうな叫びのように思えましたが、薫を育てる事により、大切な宝物を授かった思いで、一時がらんどうではなくなったかのように思えましたが、逮捕され、二度と薫と会うことができなくなり、本当に何も無くなりがらんどうになったと感じる。しかし、「がらんどうでも人は生きていける」と話の最後には思えるようになった希和子を感じてほっとしました。

希和子には、薫とすごした4年間の思い出が与えてくれた無数の宝物が残りました。
それだけで自分のこれからの一生を生きるのに十分だと希和子は思ったと思います。


一番映画のシーンで感動したのは、ある事によって、小豆島にいることが危険と察知した希和子は、薫を連れて、別の場所に逃げようとするのですが、その前に、最初で最後の家族写真を、写真館で撮影します。
このシーンは二度登場しますが、二度目は恵理菜の回想シーンとして登場します。
回想のシーンでは、撮影の直前に「私はもう何も要らない。薫にぜ~んぶあげる」と言うようなシーンがあります。
これを恵理菜が思い出すのです。



せつな過ぎ。
希和子はもう逃げ切れないだろうと心の片隅で感じていたような気がします。
そして薫との別れも近いと・・・。

このシーンは、映画の中で、かなり重要なシーンでした


一番感動したシーンは、写真館でのシーンですが、他に印象深かったシーン、たくさんありました。
その中で2つあげてみます。


エンジェルホームってとこから、危険を察知して逃げた時、夜に山道を2人で歩くのですが、その時、希和子は心身共に疲れていたと思うのですが、薫にはそんなそぶりを見せず、おんぶしてあげて、薫に「みあげてごらん、夜の星を」を歌ってあげるのね。
不思議な事に、夜道が怖くなくなるんですよね・・・。後に薫はこの歌が薫にとっての「星の歌」になるんですよね。

それと、逮捕され連行される時、この時のシーンも何度か出てきたのですが、「その子はまだ・・・(これに続く言葉あり。ネタバレするので秘密)」と、逮捕されたというのに、最後の最後まで、自分の事より薫の事を気遣い、薫を思う母でいたんですよね。



小説も映画も両方よかったと思います。
ここに書ききれない深いものがいっぱい感じられるお話です~

できれば映画は観た方が良いかなと。
私のおススメです・・・、ちょっと暗い感じもするけど・・・。


永作さんの演技はひときわ際立っていました。


あと小豆島の美しい風景は、懐かしい昭和の何かを感じさせてくれました~
村歌舞伎や夏祭等の行事も味があった~



*少々ネタバレ部分がある事をお許し下さい。



コメント (2)
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