GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「硫黄島からの手紙」

2008年03月01日 | Weblog
 アメリカ留学の経験を持ち、親米派でありながらアメリカを最も苦しめた指揮官として知られる知将・栗林忠道中将が家族に宛てた手紙をまとめた『「玉砕総指揮官」の絵手紙』を基に、本土防衛最後の砦として、死を覚悟しながらも一日でも長く島を守るために戦い続けた男たちの悲壮な最期を見つめる。主演は「ラスト サムライ」の渡辺謙、共演に人気グループ“嵐”の二宮和也。

「1945年2月19日にアメリカ海兵隊の上陸が開始され、3月26日に日本軍の組織的戦闘は終結した。日本軍は20,933名の守備兵力のうち20,129名が戦死した。アメリカ軍は戦死6,821名、戦傷21,865名の損害を受けた。太平洋戦争後期の島嶼防衛戦において、アメリカ軍地上部隊の損害が日本軍の損害を上回った唯一の戦闘であった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%AB%E9%BB%84%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84」

「父親たちの星条旗」でも感じたのですが、こんなにもリベラルに戦争を、人物を淡々と描いた映画があっただどうか? この「硫黄島からの手紙」は日本軍の硫黄島玉砕物語です。

 その日本の出来事をアメリカ人クリント・イーストウッドが製作・監督(製作にはスピルバーグ、ポール・ハギス、脚本にアイリス・山下、ポール・ハギス)した正にハリウッド映画。しかし、日本映画としてなんの違和感も感じさせない質の高さ、考証に正確さ。これは「ラスト・サムライ」や「SAYURI」を遙かに越えたアメリカ人が撮った最高の日本映画と云えるでしょう。この不思議な思いを多くの人に味わって欲しいと思います。

 この思いは映画の中で登場人物も味わう。日本軍が攻めてくる若い米国兵の胸を撃ち、その兵を洞窟の中に引きずり込んで看病するが息絶える。その米国兵の持っていた手紙を西竹一中佐が日本語で日本兵に読んで聞かせるシーンがある。手紙は母からの息子を思いやる内容で、日本の母と全く同じ思いであることを知り、「米英鬼畜」と教えられてきた軍の指導に、全員が誤りがあったことを知るのです。

 人間は何処にいようと、どんな言葉使ってようが、どんな色をしてようが、どんな宗教であとうと皆同じ人間であり、どの国の親も同じ辛い思いをして息子を戦場に送っている。

 このテーマは前作の「父親たちの星条旗」の骨格にもなっている。軍や政府や企業の組織によって、また職位によって、人々は様々な思惑が入り乱れ、最前線の若者達はその流れの中で翻弄されていく。しかし、すべてのしがらみを解き放ち、一人の平等な人間として捉えて見て欲しい。国同士の争いや民族紛争も、一人の平等な人間愛をベースにした視点で見られないものか。アメリカ人が作った映画、日本人が作った映画も登場する人は人類であることに変わりなく、言葉や宗教や民族がいかに異なろうと、親が子を思いやる気持ちに開きなどあろうはずがない。

 二宮和也の見事な自然な演技、日本人の心を捕らえるポール・ハギズ、アイリス・ヤマシタの脚本、ラストに流れる切ないピアノの響きは、様々なしがらみの中で愚かにもがく人間達を哀れんでいるように心に響いてくる。


 人種や言葉や宗教を初めて超越した映画人クリント・イーストウッドが全世界の観客に「人類はみな兄弟なんだよ」というとてつもない大きくて暖かいメッセージを送った、そんな映画です。本当によくぞ作ったという感謝の念で一杯です。

「父親たちの星条旗」90点
「硫黄島からの手紙」92点


PS:もし2本とも見ていなかったら、先に「硫黄島からの手紙」、
   そして「父親たちの星条旗」がいいと思います。


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