GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「英国人のユーモア」

2013年02月16日 | Weblog

 大学2年生の頃、英国のスコットランドで2泊3日でホームステイしたことがある。たった一人だけで老夫婦宅に泊まった。最初は私の拙い英語が伝わるだろうか、と心配したが取り越し苦労に終わった。こちらの意志はちゃんと伝わることに私は自信をつけ、レストランチェーンに就職してからも外人が来店された時一度も困ったことはなかった。自分でマニアル化した英語で、すべて事足りたのだ。スコットランドでの2泊3日は私にとって生涯の宝物となった。

 最初の海外旅行先は以前から歴史とユーモアがある英国と決めていた。「Like a rolling stone」は米ビルボード誌では2位にもランクされたボブ・ディランの名曲だ。ことわざに「転がる石はコケをつけない」とあるが、米国と英国では意味が反対になる。米国では「コケをつけないからいつも新鮮」、英国では「コケがつかない金もたまらない」この差が私が英国を選んだ理由だ。ユーモアがあるかないか、この差は国家としての年齢の差といえる。

米国の「コケが付かない=新鮮」は、青春時代の17歳の発想。
英国の「コケ=金」は、人生が何たるかがわかっている60歳の知恵。

 私の英国好きは高校生の頃沢山読んだ英国小説に起因している。吉川英治、司馬遼太郎、山本周五が私の大教授陣なら、コナン・ドイル、アガサ・クリスティから始まり、エラリー・クイーンとモーリス・ルブランと続いた推理作家陣は中高生の先生陣と言える。(エラリーは米国人、モールスはフランス人だが、幼い私は二人とも英国人と勘違いしていたように思う。一番のお好みはM・ルブランのルパンシリーズ)

      

   ルパンが住んでいた『奇巌城』

 スコットランドやウエールズには小高い丘の上に商業化されていない城跡が幾つも残っている。そんな城跡を訪れた観光客が帰りがけに地元の人たちを遭遇。観光客は彼等と挨拶をしようとしたとき、つまずいて転びそうになった。すると地元の人が笑顔でこう云った。

「あれ、上のパブ、もう開いてたの?」

これが英国人のユーモアだ。思わず手を叩きたくなる。

 英国社会ではユーモアがとても重要視されているようだ。無論、日本でもユーモアのある人は好まれるが、ユーモアの価値観はまるで違うように思えてならない。英国人にとって気のきいたユーモアを言えるということは、日本人にとって敬語をきちんと使えることと同じくらい重要なことのようだ。無論、なんでもジョークを言えばよいというものではない。アメリカ的なストレートジョークはむしろ蔑まれるし、吉本のようなベタなギャグは禁句と云える。

 英国のユーモアとは、恋や子育て、金稼ぎや金遣いをし尽くし、短い人生で何が大切だったかを達観したような心の余裕から生まれたウィットに富んだ皮肉を含んだ言葉ではないか。

 今年、還暦を迎えるが、こんな素敵なユーモアを持つ人物には辿り着けそうもない。「形決まれば自ずと心決まる」と思い、何とか姿・形からとここまで来たが、まだまだ茨の道が続きそうだ。

 



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