IKEAの「フラットパック」のシステムが素晴らしい。日本では見あたりません。若いカップルやヤングファミリーが客層の80%以上を占めるように思います。私たちのような年配者だけのお客とはほとんど遭遇しませんでした。定年して一年後の昨年3月、オープンした9階建ての大きな特養老人ホームに勤め始めた私は、同じような棚や食器棚、ゴミ箱などたくさんの家具を組み立てました。こんなことは今までほとんどしたことがありませんでした。大きな棚だと女性の腕力ではとてもむりだろうと思えるようなものもありました。組み立て費を本体価格のの20%というのも頷けます。
共稼ぎの二人が休みにIKEAに行って家具を購入する。
「フラットパック(分解された商品は、できるかぎり薄く小さい梱包をされており、車のトランクに積んで簡単に持ち帰ることができる)」を車に積んで持ち帰って来る。
二人でああの、こうの、といいながら組み立て始める。
そのうち彼女は食事の支度を始め、彼は電動ドライバー(これは必ず必要)片手に悪戦苦闘し続ける。
夜は深まり、だんだんと棚の全容が明らかになっていく。
そして、ついに完成して、ビールいや、ワインで乾杯する。
そんな家具は子供が増えるたびに数が増えいく。
数々の傷や落書きを加えながら、
その家具たちは家族の宝物になっていく。
28歳の秋、名古屋で私は結婚しましたが、そのとき近くにIKEAがあれば、きっとフラットパックのまま持ち帰って二人で悪戦苦闘しながら組み立てたに違いありません。IKEA鶴浜で目を輝かしている何十組かの若いカップルと遭遇したとき、こんなことが頭に浮かんでいました。そして心の何処かが切なってくるのを止められませんでした。