ふみこ、白兎と玉兎に付いて行けば迷わんでな。祖母は、二兎に腰を屈めて頼んでいる。ふみこは寝起きのリョウの手をしっかり握り、駆けだした兎の後を追う。お宮に向かうのが分かったものの、ふみこの周りから景色が消え不安が満ち潮のように迫る。ふみこ、どうしたの?リョウのあどけない顔が見えた。
ふみこははっとした。おばあちゃんは、迷うなと言ったわと気を取り直した。リョウさん、心配せんでええよこの兎が案内してくれるんじゃから。お宮の石段に行き着いた途端、白兎と玉兎はお互いの手を交差させた。すると丸い空間が現れて来てのに、ふみこはリョウと手を繋いだままでその中に足を入れた。
空間は何だかぼやけていて、捉えどころのない綿菓子のように思えた。白兎と玉兎の、いつの間にか前方を翔けていくのが見えた。その速いこと、ふみこはリョウと一緒なので小走りにしかなれない。それなのに息が苦しいこともなく、リョウの重さも感じられないのは不思議だった。と・がくんと前に倒れた。
あ!ふみこの観たこともない建物が目の前に広がっていた。ここはどこなの?リョウが叫ぶ、ここは僕のお屋敷だよ。リョウさんの家なのか、でも誰もいないよ。いるよ、父上も母上もあそこにおいでだ。ふみこは前方の建物へと続く路に一体何羽の兎なのか?と眺めたが、両脇に行儀よく並んで耳を垂れてる。
ここは月世界だよ、ふみこは月を知らないの。ぽかんと口を開けたままのふみこは、返すことばもない。月は知っているが、こんな世界があるものとは分かろうもない。まわれ右をしかけるふみこの手を、今度はリョウがきつく握る。ふみこ、逃げないでよ。ふふん、行けばいいんでしょう逃げたりはせんわよ。
ふみこははっとした。おばあちゃんは、迷うなと言ったわと気を取り直した。リョウさん、心配せんでええよこの兎が案内してくれるんじゃから。お宮の石段に行き着いた途端、白兎と玉兎はお互いの手を交差させた。すると丸い空間が現れて来てのに、ふみこはリョウと手を繋いだままでその中に足を入れた。
空間は何だかぼやけていて、捉えどころのない綿菓子のように思えた。白兎と玉兎の、いつの間にか前方を翔けていくのが見えた。その速いこと、ふみこはリョウと一緒なので小走りにしかなれない。それなのに息が苦しいこともなく、リョウの重さも感じられないのは不思議だった。と・がくんと前に倒れた。
あ!ふみこの観たこともない建物が目の前に広がっていた。ここはどこなの?リョウが叫ぶ、ここは僕のお屋敷だよ。リョウさんの家なのか、でも誰もいないよ。いるよ、父上も母上もあそこにおいでだ。ふみこは前方の建物へと続く路に一体何羽の兎なのか?と眺めたが、両脇に行儀よく並んで耳を垂れてる。
ここは月世界だよ、ふみこは月を知らないの。ぽかんと口を開けたままのふみこは、返すことばもない。月は知っているが、こんな世界があるものとは分かろうもない。まわれ右をしかけるふみこの手を、今度はリョウがきつく握る。ふみこ、逃げないでよ。ふふん、行けばいいんでしょう逃げたりはせんわよ。