拓也の心に、マリナ姫の声は伝わって来た。拓也が姿を見たからには、これまでの全ての記憶を消してしまうと話す。それは例え反対の気持ちがあろうとも、何かの折に言わないとも限らないからだ。これまでの出来事を思えば、お伽噺がそれを現わす。与ひょうもつうに覗くなといわれているのに機織り姿を見てしまうし、浦島太郎も乙姫からの玉手箱を開けたのだ。
宇宙人が地球人として暮らしていることが知られれば、マリナ姫の存在も探られるだろう。科学の発展は目覚ましいが、時として最悪の展開ももたらせるの。避けられることは計画の中に入れて、決して外に漏らしてはならないと言うのだった。時間を戻したことで修正し直し、同時に拓也の記憶も消さなければ。拓也は、難しいことは分らないまでもうなづいていた。
キャベツ畑に拓也はいた。おばあちゃんがキャベツに何やら話しかけて、畝を歩いていた。拓也は、お弁当を見せて大きな声で呼んだ。お弁当を持ってきたよ!お昼にしようよ。おばあちゃんが右手を上げて合図すると、拓也に向かって歩いて来る。物置小屋の外には、木で作ったテーブルと椅子があるのでお弁当を広げた。母さんが、毎朝きちんと作って置いてくれる。
拓也は、お結びを頬張りながら中に入っていた梅干しの種を取り出した。何かが頭の中でチカチカする、思い出そうとするのにまるで霧がかかったようになる。おばあちゃん、これってなんだか宇宙船に似てるね。梅干しがかい?拓也の想像力にはついていけないわ、こんなへんてこな宇宙船なんてあり…。そう言いながら、おばあちゃんは拓也から目を離さないでいる。
どうしたの?おばあちゃん、まるで宇宙船を見たような顔して。お前の頭の上に浮いていますよ、宇宙船は。拓也は言われて空を観て、ぎょっとした。うわぁぁぁぁぁぁぁ!な・何しに来たんだろ?僕は美味しくないよ、おばあちゃんも食べれないよしわくて。でも宇宙船・円盤からは誰も下りなかったし、拓也が腰を抜かす間もなく消えた。おばあちゃんも、一緒に。
拓也は覚えていることがある。その風景が広がると、とても懐かしくやさしい気持ちになれる。でもそこにいる筈なのが、誰なのかも何であったのかもはっきりとはしない。声がすることもあるし、燦然と輝く七色の光が溢れて来ることにも遭う。拓也はキャベツを作りながら、もしかしたらここに宇宙人が棲んでいたのかもと思う。拓也は青く広がる宙へと微笑んだ。完
キャベツ畑の宇宙人、長らくのお付き合いをありがとうございます。元の作品はもう少し長くて、原稿用紙に50枚~60枚程度です。当時は光瀬龍師が面白いと選評に書いてくれましたが、既に鬼籍です。書き直すにも時遅しですが、何かが後押しをしてくれました。ブロ友さんからの影響は計り知れずで、終了までお付き合い下さり感謝に堪えません。皆さん本当に有難う。
宇宙人が地球人として暮らしていることが知られれば、マリナ姫の存在も探られるだろう。科学の発展は目覚ましいが、時として最悪の展開ももたらせるの。避けられることは計画の中に入れて、決して外に漏らしてはならないと言うのだった。時間を戻したことで修正し直し、同時に拓也の記憶も消さなければ。拓也は、難しいことは分らないまでもうなづいていた。
キャベツ畑に拓也はいた。おばあちゃんがキャベツに何やら話しかけて、畝を歩いていた。拓也は、お弁当を見せて大きな声で呼んだ。お弁当を持ってきたよ!お昼にしようよ。おばあちゃんが右手を上げて合図すると、拓也に向かって歩いて来る。物置小屋の外には、木で作ったテーブルと椅子があるのでお弁当を広げた。母さんが、毎朝きちんと作って置いてくれる。
拓也は、お結びを頬張りながら中に入っていた梅干しの種を取り出した。何かが頭の中でチカチカする、思い出そうとするのにまるで霧がかかったようになる。おばあちゃん、これってなんだか宇宙船に似てるね。梅干しがかい?拓也の想像力にはついていけないわ、こんなへんてこな宇宙船なんてあり…。そう言いながら、おばあちゃんは拓也から目を離さないでいる。
どうしたの?おばあちゃん、まるで宇宙船を見たような顔して。お前の頭の上に浮いていますよ、宇宙船は。拓也は言われて空を観て、ぎょっとした。うわぁぁぁぁぁぁぁ!な・何しに来たんだろ?僕は美味しくないよ、おばあちゃんも食べれないよしわくて。でも宇宙船・円盤からは誰も下りなかったし、拓也が腰を抜かす間もなく消えた。おばあちゃんも、一緒に。
拓也は覚えていることがある。その風景が広がると、とても懐かしくやさしい気持ちになれる。でもそこにいる筈なのが、誰なのかも何であったのかもはっきりとはしない。声がすることもあるし、燦然と輝く七色の光が溢れて来ることにも遭う。拓也はキャベツを作りながら、もしかしたらここに宇宙人が棲んでいたのかもと思う。拓也は青く広がる宙へと微笑んだ。完
キャベツ畑の宇宙人、長らくのお付き合いをありがとうございます。元の作品はもう少し長くて、原稿用紙に50枚~60枚程度です。当時は光瀬龍師が面白いと選評に書いてくれましたが、既に鬼籍です。書き直すにも時遅しですが、何かが後押しをしてくれました。ブロ友さんからの影響は計り知れずで、終了までお付き合い下さり感謝に堪えません。皆さん本当に有難う。