子どもの頃には幼稚園しかなく、小学校に上がる前一年間だけで朝に行き昼食前に帰宅した。眠い目を擦り起きて着替え、朝ご飯などかき込むので遊戯や遊び処ではなく親も気忙しいばかり野良仕事の途中から帰る。
田舎の事情は行政に倣えと通わせるものの、本人の意思は無視。家で時間を気にせず、自由に遊ぶのとは違いルールに従わさせられるのが殊更に苦痛。祖母の後をくっ付いてなら、危険な時は傍に居てるので安心。
鎌や茅で指を切ると、腰に下げての袋から塩を出して拭いを裂いて縛る。悪戯の堪えない孫への小言もなく、好きなことができた。集団生活の意味はなんだろう?窮屈で退屈極まる規則に縛られて、息苦しいばかり。
四季の旬を探知しており、藪に筍が出て掘るのも残しておく数と予定を立てていた。自然への感謝を忘れない行為、すまんのぉ・援けてくれるかを物云わぬであろう相手に呟やき命は人間だけのものではないが口癖。
十薬・蓬・きらん草・黄肌・桔梗・芍薬・イタドリ・木通、何れも粗末に扱わず保管していた。辣韭や梅は無論、時期をたのんでの収穫としていた。自然からの恩恵を、感謝にて戴くなら旬を逃さないのが鉄則とも。
祖母が生きてゐれば齢百三十歳、時は待たぬから悠久の刻を抗わずであろうか。無駄な事象なく、工夫しての暮らしを思いだしては偲ぶ也。兄も妹も、そんなことして何にと鼻でせせら笑い買えばいいと嘯くばかり。
庭の彩りに、釣鐘草・ベルフラワー・芍薬の薄桃が数輪咲くを愉しめる。フェンスの外、野茨が咲きし自然からの恩恵能われる。ポリゴナム勢い増し種も発芽、夏への扉開くなり。