シュンが地上に降り立った時だ。足をすくわれて叩きつけられるような強い揺れが襲った。地震だ!そうかこれだったんだ、だとしたらあそこに行かなくちゃ。再度翔けようとしたシュンは、直後に海の嘆きを聴いた。まるでシャチが踊り狂うような波が海岸を攫う。一瞬にして人影が消えた。否、そこに存在している生き物が残らず波に呑まれた。大地が瘧のように震えていた。
裕美は、シュンの見ている景色を同時に感じていた。阿鼻狂乱だった。津波に連れ去られ、深い底へと沈んでいく家が人がある。シュンは必死で防いでいるが、時間は止まらず待ってもくれないだろうことも知っている。だがエネルギーを使い果たしても、救える命があるのも分かっていた。弱音を吐くのは嫌だったし、今までの訓練を無駄にはできない。シュンの身体が輝いた。
裕美は、声もたてずに泣いていた。シュン速水シュン、あたしをおいて行かないで。涙が裕美の頬から耳に伝わり落ちる。あなたが好きだった、それを告げることも適わないのね。裕美は時空を翔けていけば、遭える可能性を心に刻んだ。そうよ、チャンネルをハートに合わせておこう。未来には遭えなくとも必ずめぐりあうのよ。裕美は、その思いを胸に密やかに瞼を閉じた。
裕美は、青い空を見上げる時に見知らぬ人を視ることがある。丸い顔で左頬にえくぼのある、メガネをかけた人だ。その顔を見る度に、胸がキュンとなるのはなぜだろう。裕美の、心の片隅で星が瞬く。おいで、その声も忘れていない。記憶の断片が途切れとぎれに流れるが、とても大切なことが思いだせないでいる。裕美は、新しい時へと翔け続けている。あの声を探しながら。
福島県で起きた原発事故は、被害が甚大となって10年経過しても元には戻っていない。家を家族を失い、形は造られていても心の奥底までは遠く及ばない。これがシュンの計画であるのか、裕美が指示されたことであったのかは定かではない。あの時に時空が歪んで起きた事故かも知れずだが、その真相は誰も分からない。神の他は。原発の再稼働は、膨大なエネルギーを要する。
裕美は、シュンの見ている景色を同時に感じていた。阿鼻狂乱だった。津波に連れ去られ、深い底へと沈んでいく家が人がある。シュンは必死で防いでいるが、時間は止まらず待ってもくれないだろうことも知っている。だがエネルギーを使い果たしても、救える命があるのも分かっていた。弱音を吐くのは嫌だったし、今までの訓練を無駄にはできない。シュンの身体が輝いた。
裕美は、声もたてずに泣いていた。シュン速水シュン、あたしをおいて行かないで。涙が裕美の頬から耳に伝わり落ちる。あなたが好きだった、それを告げることも適わないのね。裕美は時空を翔けていけば、遭える可能性を心に刻んだ。そうよ、チャンネルをハートに合わせておこう。未来には遭えなくとも必ずめぐりあうのよ。裕美は、その思いを胸に密やかに瞼を閉じた。
裕美は、青い空を見上げる時に見知らぬ人を視ることがある。丸い顔で左頬にえくぼのある、メガネをかけた人だ。その顔を見る度に、胸がキュンとなるのはなぜだろう。裕美の、心の片隅で星が瞬く。おいで、その声も忘れていない。記憶の断片が途切れとぎれに流れるが、とても大切なことが思いだせないでいる。裕美は、新しい時へと翔け続けている。あの声を探しながら。
福島県で起きた原発事故は、被害が甚大となって10年経過しても元には戻っていない。家を家族を失い、形は造られていても心の奥底までは遠く及ばない。これがシュンの計画であるのか、裕美が指示されたことであったのかは定かではない。あの時に時空が歪んで起きた事故かも知れずだが、その真相は誰も分からない。神の他は。原発の再稼働は、膨大なエネルギーを要する。