2007-0422-yis142
待つものと分かっていてもあきが来て
思いがけない嬉しいお越し 悠山人
○和泉式部集、詠む。
○詞書は、「大宰帥敦道(だざいのそちあつみち)のみこ、仲たえけるころ、秋つかた、おもひいでて、ものして侍りしに」。(振りかな依拠本のまま) 前出、私の和泉式部現代詠は、「夢よりもはかなき」を一つの契機にしたが、日記はその為尊の死を悲しむところから、始まる。すぐに続けて、彼の実弟の敦道が、大宰府帥(長官)として下向する話が綴られる。秋になって、突然和泉を訪ねて来たのに、驚いた、というのである。この来訪を、「喜悦の情を表したもの」とするのが通説、と頭注は紹介する。なお、日記本文での歌は、次の通り。
待たましも かばかりこそは あらましか
思ひもかけぬ けふの夕暮れ
¶もの(物)す=多義語であるが、ここでは「来訪する」。英語は、仏語よりは独語と親縁であることは、ご承知のとおり。例えば to come, zu kommen は、「行く、来る」の、一見相反する両義があって、学習初心者を戸惑わせるが、実は古日本語の「物す」も、この英独両語と全く同じように使われていたのである。英独ぺらぺらの日本人でも、案外知らない人が多い。
□和142:まつとても かばかりこそは あらましか
おもひもかけぬ あきのゆふぐれ
□悠142:まつものと わかっていても あきがきて
おもいがけない うれしいおこし
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