「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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三郎さんの昔話・・・へそ(臍)

2010-11-26 | 三郎さんの昔話

へそ(臍)

 へそは人が誕生した時、母の胎盤と胎児が、ほその緒で繋がっていたそれを断ち切った跡である。
 誰でもへそはお腹の真ん中にぽつんと有るが、成長するに従って格別に関心がない。用がないから忘れているのかなあ?
 あの人はへそ繰り貯めちゅう、まっことつましゅうて結構なこと。つい、いらんこと言うたけ、へそ曲げた、しゃんしもた。へそは腹の真で、人の根性を表現しちょる。
A「おまんはへそを大事にしよるかよ」
B「格別どうとも思うちょらんが」
A「へそは人の生まれてきた元じゃけ、それにお母あと一番繋がりの深い所じゃけ、風呂に入ったら石鹸つけて指でくりくりと奇麗に洗うて大事にしいや」
B「清潔にするのはえいけんど、どうしてそんなに大事にせにゃいかんが」
A「へそを奇麗にするのは親孝行の始まりぜよ、へそをろくに洗いもせず黒いへそくそなど溜めてみい、お母あが泣くぞ、おまんはまだお母あがあるけ、ええけんど、亡うなってみい」
B「お母あが亡うなったら、へそとどう関係があるの?」
A「大ありよ、昔の人がよう言うた、お母あが死んだら見ることはできんが、お母あに逢いとうなったらへそを見てみいと、風呂で奇麗に洗うて手鏡でへそを写してみいや、じいっとお母あが見えてくる。『おまんは短気なのが難じゃ、気長うして真面目に働かにゃいかん、女房子供が育たんぜよ』とか、
『おまんはちっくと酒を飲み過ぎる、ちっくと控えにゃ体に悪い』とか、『おまんは体がちっくと弱いけ、うんと気をつけよ』と、へそはお母あになって神霊で伝わってくるぞ」
B「へそはなかなか馬鹿にできんのうし」
A「人のへその恰好はいろいろと形が違うが、一番出来のえいのは、下から少し押し上げて朝日の出る出世形、出べそはほその緒を切り放した時、親が恋しゅうて泣いた人情形、ひょっとこのお面のようにひん曲がったへそは出来がようない、気をつけにゃいかん」
B「まっこと、へそもいろいろと形が違うのうし」
A「人の顔が違うばあへそも違うけ、へそで易を見たら本体当たると言うけんどねや」
A「横柄な男しなら、へそを出して見てもらう者もおるかもしれんが、女ごしゃ恥ずかしゅうてへそ出して、見てやじゃ言う者はおりゃせんぞ」
A「その通りよ、へそは人の一番大事な腹の真しんじゃけ、大切々々」
 へそがおかしゅうて、ハッハッハーァと笑いよる。

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