ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

「マルクスと息子たち 」

2004年10月30日 | 読書
 あれ、デリダにしてはえらく読みやすいじゃないの。なんておもしろいんだ! 訳がいいのかな? と思いながら読み始めたのはいいけれど、果てしなく続く前書きのような文章の連続に嫌気がさし、「いったいいつになったら本論に入るんや?!」とぼやき始めたころ、いつの間にか本論になっているのだ。

 あ、やっぱりデリダは偉いなぁと思っているうちに、「あれ? そんな結論? へ? 結論はどこ? デリダ先生ともあろうお方が、もっとすごーいことを書いてないの?」で終わるのである。

 というわけで、よかったのか悪かったのはよくわからない本なのだ。

 華麗な技巧を凝らした修辞の果てに得られた結論が、「今日では階級を同定するのはほとんど不可能だし、そんな漠たるものに自己を同化できるような人はいない」とか「革命のための組織は必要だが、それは国家・党といった従来の組織形態を目指さない」とかいった、誰でも思いつくようなことだとしたら、この偉大な哲学者の本を読む値打ちはどこにあるのか?

 そもそも、本書は『マルクスの亡霊』に対する批判への応答なのだ。『マルクスの亡霊』を読まずに本書を読むのはいかにも苦痛であり隔靴掻痒の感は否めない。
 『マルクスの亡霊』の日本語訳を待ってから本書を読むべきであった。

 しかし、ここで打ち捨ててはいけない。捨てる神あれば拾う神あり。

 巻末訳者解説、これが簡にして要をえた内容となっており、たいへんわかりやすく、お奨め。
 ただ、最後までわかりにくくて宿題として残ったのは、以下の点。これからもう少し勉強してみよう。

*憑在論と存在論 憑在論は存在論に先行する(訳者解説 200p)

 まあしかし、哲学・思想というのは実践して初めて意味をもつと思うので、これらの思考のあざなえる縄をどのように生き方に反映させていくのか、こそが大事だと思う。


◆今後の必読文献

『マルクスの亡霊』(未刊)
『革命的な、あまりに革命的な』絓秀実著 作品社 2003年
『デリダ』高橋哲哉著 講談社(現代思想の冒険者たちSelect)
「政治と友愛と」デリダへのインタビュー 『批評空間』第Ⅱ期第9,10号 1996年
『友愛のポリティックス』デリダ著 みすず書房 2003年
 

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