ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

007/慰めの報酬

2009年02月15日 | 映画レビュー
 前作が感動的だったというのに、007は2作続けてシリアス路線ではもたないということがつくづくよくわかった。本作も、巻頭のカーチェイスと人間チェイス(このあたりは前作と同じ構成)こそわくわくと目を見張ったけれど、後半のアクションシーンではすっかり飽きてしまって寝てしまったではないか。

 脚本にポール・ハギスを参加させ、監督がマーク・フォースターだからいったいどんな社会派007になるのかと期待したが、話がやたらややこしくご都合主義が目についてあまり面白くない。「今や善人と悪人の区別がつかなくなった」とか「取引できる相手は悪人しかいない」といった台詞に「9.11後」を感じさせるし、エコ・ビジネスの胡散臭さを描くあたりも現代的だが、さりとて真面目路線で007の荒唐無稽なアクションを押し通そうとすると辛いものがある。リアリティを重視したという演出によって、これまでのシリーズでお約束だったボンドの新兵器が一切登場しない。しかし、それにもかかわらず、ボンドは不死身で、どれだけ銃弾が雨あられと降ってきても彼には当たらないし、車が潰れても骨折一つしない。悪の組織の動き方も話が飛びすぎて説明が全然辻褄合ってないし、今回のボンドガールの動きも変。リアリティを重視といいながら一方でありえない設定で無理をするから、奇妙な印象を受けてしまう。いっそ荒唐無稽なまま突っ走れば少々の飛躍もご都合主義も「ま、映画なんだから、そういうこともアリでしょ」と許せてしまうのに。

 ところで、巻頭のカーチェイスの場面はイタリアロケ。アストン・マーティンをアルファ・ロメオが追いかけるという重量感と高級感溢れるカーチェイスの場面では、思わず「アメ車を使ってやればいいのに、GMやフォードが喜ぶよ」と思ってしまった(デトロイトのゴーストタウンぶりを見て、ついつい同情心がわいてアメ車びいきになっています)。この目まぐるしいカーチェイス場面は編集がさぞや大変だったろうなぁと思う。

 前作の続きなので、必ず前作の復習をしておかないと話がさっぱりわかりません。恋人を亡くして傷心のボンドは可哀想で、思わず抱きしめてあげたくなる憂愁を漂わせています。そのあたりは女心をくすぐってい実にいいのだけれど…

 もうこの真面目で暗い路線は止めたほうがいい。次はすかっと爽快なボンドを見たい。ま、わたしとしてはダニエル・クレイグが好きだからとにかく彼が出てくれればそれでよしとしますが。

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007/慰めの報酬
QUANTUM OF SOLACE
イギリス/アメリカ、2008年、上映時間 106分
監督: マーク・フォースター、製作: マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ、原作: イアン・フレミング、脚本: ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス、音楽: デヴィッド・アーノルド
出演: ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジェマ・アータートン、イェスパー・クリステンセン、ジャンカルロ・ジャンニーニ、グレン・フォスター

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