ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ホワイト・プラネット

2008年01月20日 | 映画レビュー
 わたしって動物もののドキュメンタリー映画が好きなんだとつくづく思う。「WATARIDORI」なんてDVDを買ってしまったしね。「ディープブルー」ももちろん劇場で見たし、これも劇場で見たかったのだけれど、残念ながらDVDで鑑賞。で、やっぱり劇場で見ればよかったと後悔。北極の空撮は迫力満点だし、音楽はフォークロア風だったり幻想的だったりしてなかなかよかったし、けれど淡々としすぎているものだからつい寝てしまう。劇場だと寝ないですんだのじゃなかろうか。地球温暖化の影響で北極の氷も減り、白熊の狩場が狭くなって生存の危機にあるといった話には軽い恐怖心も感じた。これは「アース」にあったシーンと重なる部分ですね、「アース」のほうが後から公開されているけど。「アース」が地球全体を描写の対象としたのに対して、本作はひたすら北極圏の動物たちを追う。

 海中の撮影などは寒いし暗くて怖そうなのに、どうやって撮ったのだろう、ひたすら被写体を追いかけていくカメラマンは偉い。とにかくカメラマンに敬意を表して。(レンタルDVD)


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LA PLANETE BLANCHE
フランス/カナダ、2006年、上映時間 83分
監督: ティエリー・ラコベール、ティエリー・ピアンタニーダ、製作: ジャン・ラバディほか、脚本: ティエリー・ピアンタニーダ、ステファン・ミリエール、音楽: ブリュノ・クーレ
ナレーション: ジャン=ルイ・エティエンヌ

ラッキーナンバー7

2008年01月20日 | 映画レビュー
 最近見たサスペンスものでは一番面白い。スタイリッシュな映像、凝ったストーリー、豪華な配役。やたら人が殺される凄惨な話なのに鑑賞後の気分は爽やか。

 空港の待合室で、若い男がプロの殺し屋(ブルース・ウィリス)に殺される。その手口がまた見事。そして場面はNYのマンションの一室に変わる。その部屋に住む友人に呼び出されたスレヴン(ジョシュ・ハートネット)は、やって来た借金取立てのヤクザたちに友人と間違われて拉致される。彼の言い訳は通用せず、ヤクザに脅されたスレヴンは借金のカタに対立するマフィアの親分の息子を殺すことを強要される…


 対立するマフィアの親分たちがまた渋い。一人がモーガン・フリーマン演じる「ボス」で、もう一人がベン・キングズレー演じる「ラビ」。つまり、黒人対ユダヤ人ということ。エスニック対立が戯画的に描かれていて、しかもそのエスニックがもちろんアメリカ社会では疎外されている者たちというステレオタイプを逆手に取った面白さがある。

 よくよく考えてみれば辻褄が合わないところはいくらでもあるわけで、だからツッコミたい人には格好の材料を提供するだろうけれど、この映画はすべての謎を最後にきれいに解いてくれるので観客に大いなるカタルシスをもたらす。

 スレヴンが恋する中国系女性を演じたルーシー・リューがいい感じで、愛らしく無邪気な女性をうまく演じている。しかし、彼女が医者には見えないんですけど…(笑) 

 非情の世界にも周到な計画にも綻びが出る。その綻びを生むのが愛と慈悲だ。この映画にはその甘さがある分、後味がいい。(レンタルDVD)(R-15)


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ラッキーナンバー7
LUCKY NUMBER SLEVIN
アメリカ、2006年、上映時間 111分
監督: ポール・マクギガン
製作総指揮: ジェーン・バークレイほか、脚本: ジェイソン・スマイロヴィック、音楽: J・ラルフ
出演: ジョシュ・ハートネット、ブルース・ウィリス、ルーシー・リュー、モーガン・フリーマン、ベン・キングズレー

もだえ

2008年01月20日 | 映画レビュー
 スパルタ教育に追い立てられる学生の青春の蹉跌を描いたベルイマン初脚本作。国際的にも評価されているようだが、今の日本の教育状況と懸け離れすぎているから内容が古くさく、魅力を感じない。ただし、これを教育問題に限定せず、青春の反抗と挫折というより広いテーマを扱っていると見ればそこそこいいかもしれない。

 上流階級の子弟が通う高校の最上級生たるヤンエーリクは、生徒たちから「カリギュラ」とあだ名される謹厳な教師にいじめられていた。カリギュラは生徒をいびることを無上の楽しみするような人物で、ヤンエーリクも卒業試験を落とされる恐れがあった。学校の前にある煙草屋の女店員ベルタに恋したヤンエーリクだったが、彼女は「あの男がやって来る! あいつにいたぶられるのが怖い」と恐れおののく。酒浸りの荒んだ生活をしていたベルタには秘密があったのだ。だが、その男のことを語りたがらないベルタだった…

 ドイツ表現主義風のおどろおどろしい場面もあり、それなりに怖がらせる描写にも力を入れているけれど、やはりこの時代の映画は端正だ。今なら淫猥な教師の変態ぶりをたっぷり描写しそうなところを、この当時はセリフだけですませてしまう。だから、妙にリアリティがなく、また、逆にそのリアリティのなさを補う大仰な演出があったりして、ちょっとどうかと今どきの観客としては思ってしまうのだ。

 ただ、これがハリウッド映画ならすっきり爽やかなハッピーエンドにするんだろうに、そうならないところがベルイマンの脚本だ。どう考えても理不尽なラストなのになぜか明るい空と明るい音楽。どうなっているの、これは。こういう皮肉な終わりかたがほんとうにベルイマンが求めたラストなのだろうか?

 脚本力よりも演出力に問題を感じた一作。

 1944年製作。戦争中にこういう「時局」に無関係な映画を作る余裕があったのだからスウェーデンというのは文化立国なのかも。(CATV)


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もだえ
HETS
スウェーデン、1944年、上映時間 105分
監督: アルフ・シェーベルイ、脚本: イングマール・ベルイマン
出演: スティーグ・イェレル、マイ・ゼッタリング、アルフ・ケリン、グンナール・ビョルンストランド