ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

アース EARTH

2008年01月17日 | 映画レビュー
 「ディープ・ブルー」と同じスタッフで二番煎じをやろうという企画。NHKとBBC共同製作の「プラネット・アース」の映像を映画用に編集した作品。前作とほとんど同じようなつくりなので、前作のファンにはそれなりに満足が得られる一方で、新鮮味がないと感じる部分もあり、良くも悪くもシリーズ第2作、というもの。ベルリンフィルの演奏も心地よく、あまりに気持ちよすぎて寝てしまう恐れもあるけれど、動物好きにはたまらない一作でしょう。

 テーマは「環境破壊への警鐘を鳴らす」こと。それゆえ、地球温暖化の犠牲種として最も象徴的な北極の白熊がオープニングとエンド映像に使われている。白熊が狩りをするために乗る北極の氷がどんどん解けて減っていき、彼らの猟場が減少して絶滅の危機に瀕している。このままでは2050年には北極熊は絶滅するといわれている。

 砂漠を延々何週間も飲まず食わずで旅をする象の群れや、ヒマラヤ山脈を越える渡り鳥など、動物達の忍耐力には限界がないかのようだが、確実に環境変化が彼らの旅を困難なものに変えている。映像で繰り返しそのことが描かれ、わたしたちは地球環境の危機をそこから感じとる。

 誰も見たこともない秘境の動物の実態や、誰も撮ったことのない場面、誰も撮れなかった高さや角度で捉えた映像は確かに素晴らしい。そしてほんの数秒の撮影のために何ヶ月もかけたというクルーの忍耐力には頭が下がる。映像も素晴らしいが、これは撮影の裏話を知ってこそ驚嘆すべき映画だ。限界の高度からの撮影のために低酸素症に陥り白目をむいたカメラマンや、極寒の地での撮影のために瞼がカメラに張り付いてしまうといった苦労話は尽きない。

 しかししかし、だからこそ思うことがあるのだが、そこまでしてなぜ「秘境の動物たち」を見る必要があるのだろう? なぜ動物と人間の世界の距離を隔てたままにしないのか? 彼らをそうっとしておいてやることはできないのか? いや、もはやそれは不可能なことなのだろう。既に人間の開発の手はどこまでも伸び、動物達には安住の地は残り少ない。動物達が安住できない地球は遅かれ早かれ人間達も安住できなくなるだろう。

 動物の生態も興味深いが、この映画が捉えたタイガの大森林地帯の空撮や大瀑布を垂直に捉えた迫力ある映像は必見の上にも必見。これこそ映画館で見る映画です。

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EARTH、ドイツ/イギリス 、2007年、上映時間 96分
監督: アラステア・フォザーギル、マーク・リンフィールド、製作: アリックス・ティドマーシュ、ソフォクレス・タシオリス、脚本: デヴィッド・アッテンボローほか、音楽: ジョージ・フェントン
ナレーション(日本語版): 渡辺謙