大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道127

2008-10-10 18:51:46 | E,霧の狐道
 処置室の中年の看護婦さんが、俺に聞いた。

「 川に飛び込み?
 若いのに、飛び込みねぇ・・・?」

看護婦さんが俺の顔色を窺っている。
どうも、自殺と疑っているようだ。
 俺は右手を横に振りながら言った。

「 違う、違う、自殺じゃないよ。
 転がって来た鞠を避け損なって、橋からドボン・・・。」
「 あ、事故か・・・。
 何だ、そうか。
 やっぱりね。
 しぶとそうな顔をしてるから、変だとは思ったんだけど・・・。」

しぶとそうな顔は余計だとは思ったが、特に文句を言う気は無かった。
それよりも、俺は看護婦さんに言われたことで、橋での出来事を思い出していた。

“ そう言えば、あの鞠を持っていた女の子は何だったんだろう・・・?”

俺が黙って考えていると、看護婦さんが思い出したように言った。

「 あ、連れて来て貰ったお礼は言った?」
「 言った。」
「 そう、また改めて親御さんから、三人に礼を言って貰った方がいいわよ。」
「 うん、そうする。」
「 先ずは、親に電話ね。」

 看護婦さんは、処置室の横の扉から隣の部屋に電話を取りに行った。
俺が動き難いので、隣の部屋から電話を持って来る気だ。
看護婦さんに言われたけれど、“礼を親から言って貰う為に、爺さんの住所と電話番号をさっき聞いたんだよ”と思いながら・・・・・・、“?”と思った。

“ え、・・・・・、今、三人と言ったけど・・・・?”



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