大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

日々の恐怖 11月1日 曰く付き物件の日常(9)

2021-11-01 19:44:48 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 11月1日 曰く付き物件の日常(9)




(11)退去日

 荷物をまとめている間も衰弱していて、引越し業者に支えられて辛うじて立てた。
家を出るとき、業者が言った。

「 あの、まだ玄関、誰かいませんでした・・・?」
「 いません。
いるはずないです。
一人暮らしです。
開けますか?」
「 いえ・・・、そうですか、ですよね。」
「 単身引越しで、来てますんで。」
「 朝、お電話の時、にぎやかだったので・・・・。」

余裕がなくて、キレ気味に話してしまった。
 部屋を最後に出るときにまで、誰かいる感覚があった。
幻覚じゃなかった。
笑った。
電話の時ってなんだよ。

 住人は入れ替わりが激しく、毎年何人か引っ越していた気がする。
確かに、即死するような曰く付きではない。
ではないが、人が住めるのだろうか?
 その日、自宅のそばの踏切を久しぶりに渡った。
比較的新しい卒塔婆が加わり、並んでいた。
電柱にはいつも事故証言募集が貼られていたのに、同じ踏切でたくさん事故があるということに、俺は何故か気付かなかった。
 ここ数年の事故のことも。
半年ほど前の事故のことも。
 思い返せばタイミングに心当たりは多い。
そもそも物件下見の時さえ。
 事故物件サイトで見たバツ印と踏切事故の記憶を重ねると、近所は真っ赤だ。
これだけ起こっていれば、お札一枚で3ヶ月保っただけマシだったのかもしれない。
ゴキブリホイホイだって、中身がいっぱいになったら意味が無い。
 人身事故が多発している駅の踏切。
そのすぐ近くに住んでいると理解したのは、退去した日のことだった。

 入居前には、近くの踏切や噂などもよく調べることをオススメしたい。
幽霊なんて見たこと無いって人はいるでしょう。
自分もそうでした。
 パソコンもスマホもある時代に、幽霊なんかいるわけがないと思いたい。
いや、でも、あれは幽霊だったかどうかは、今でも俺にはわからない。
ただ実感としてあるのは、大なり小なり曰く付き物件は確かに存在するし、何らかの悪影響は確実にあるということだ。
 怪我や災難を、全てを曰く付き物件のせいにするつもりはありません。
運が悪かったんでしょう。
 ですが、俺は聞きたい。
どこまでが気のせいだったのか?
 和菓子職人さんには悪いが、餡子入りの和菓子は何故か今でも美味しいと思えない。
あの時だけは何よりも美味しいと感じたのに。
 俺が好きなのはカスタードだ。
今川焼きのクリームは好きだ。
変わったことといえば、和菓子のきんつばが好きになったことくらいだ。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日々の恐怖 10月27日 ... | トップ | 日々の恐怖 11月10日 溜息 »
最新の画像もっと見る

B,日々の恐怖」カテゴリの最新記事