大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道173

2009-01-10 19:25:00 | E,霧の狐道
鞠は、山本爺のベッドの下に転がって行った。

「 あれっ、何処かで見たような気がする・・・。」

病室の扉の開く音がする。

“ ぎィ~っ。”

俺は、扉を見た。

「 ん・・・?」

扉の隙間から、通路の弱い光が差し込んでいる。

“ ぎィ~っ。”

誰も入っては来なかったが、扉は閉まった。
俺は、肘で体を起こして扉を見ていた。

“ 誰も、入って来なかったけど・・・・。”

その時、突然、後ろから声がした。

「 おにいちゃん、あそぼ。」

俺は、驚いて振り返った。

“ ゲッ!女の子!”

俺のベッドと田中爺のベッドの間の通路に女の子が立っていた。
五歳くらいで着物を着ている。

“ この着物は、橋で出会った女の子・・・・。”

女の子はおかっぱ頭で白く透き通った端正な顔をしていた。
俺はこの場を取り繕って辛うじて答えた。

「 えっと、今、足は痛いし肩が折れて動けないから、また、今度ね!」
「 ふ~ん、じゃ、お爺ちゃんとあそぼ。」



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