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日々の恐怖 8月9日 タクシー(1)

2018-08-09 19:23:48 | B,日々の恐怖







  日々の恐怖 8月9日 タクシー(1)







 真由美さんは、新宿から私鉄で一時間ほどのところに住んでいる。
その日は連続していた残業が終わり、土曜日の休日出勤という事もあって、同僚と深夜まで飲んで終電で帰る事になった。
 真由美さんの通っている駅前には普段からタクシーが少なく、深夜近くなるとタクシー待ちの列が出来ている事が多い。
いつも利用してるバスの最終は早く、この一週間ほどは帰宅時間が遅くて、毎晩タクシーを利用していた。
 覚悟して駅前に行くと、珍しくタクシー待ちの列が無い。
中年の女性が一人立っているだけだ。

“ そうか、今日は土曜日だっけ・・。”

ホッとしてタクシー乗り場へ向かおうとすると、階段を駆け降りてくる足音が聞こえ、真由美さんを追い越して、サラリーマン風の男が中年女性の後ろに並んだ。
 あっけにとられると同時に、少しムッとしたが、

“ まあ二人だけだしそんなに待たずにすぐにタクシーに乗れるだろう・・・。”

真由美さんは男の後ろに並んだ。
 程なく一台のタクシーがやって来て中年女性を運んで行った。

“ よし、あと二台だ・・・。”

 一台目が去って15分も待った頃、後ろで駅の階段のシャッターが大きな音を立てて閉った。
振り向くと、駅員が点検しながら事務所へ入って行く。

“ 私がタクシー待ちしてる間に、電気が消えたりするのだろうか?
駅員さんとか居なくなるのだろうか?”

携帯で自宅に連絡した真由美さんがそんな事を考えていると、タクシーのヘッドライトが見えた。
 やって来たタクシーにサラリーマンが乗り込む。
駅前から遠ざかるタクシーを見送りながら、真由美さんはふと思った。

“ このタクシーが来るのに20分。
普段より待ち時間が長いな・・・。”

いつもはもう少しタクシーの回転数は早くなかっただろうか。

“ 最初のタクシーが黒で、今のタクシーも黒。
いつもは白いタクシーも居なかったかな?
休日なので、まさか一台のタクシーで使い回し?”

 20分程経つとタクシーがやって来た。
黒のタクシーだった。
やはり、一台きりで営業していたのだろう。















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