日々の恐怖 7月21日 飲食店の紹介の仕事(3)
とある地下街の和食店。
ここも長く続く繁盛してる店だ。
撮影メニューが多く、個室もない店舗で人の出入りがアイドルタイムでもそこそこあるから、
” 何処で撮影すんのかな?”
と思ってたら、厨房から降りられる地下室があるってことで、そこでやることになった。
厨房に入口ってなんだそれと思いながら、人1人強通れるくらいの階段を降りていくと、
蛍光灯一本の薄暗い空間だ。
「 こんなのあるんですね?」
と聞くと、どういう経緯で出来たのか知らんが地下街がオープンする前からあって、
元々別の所有者が別の用途で使っていたものを、場所がちょうど上だからってんで
つなげてもらったとか。
” そんなことあるのか?”
と正直思った。
場所で言うとB4くらいになって、インフラ設備との兼ね合いもあるだろうし。
壁もちゃんとしたコンクリートではなく、でこぼこで地下室っていうより地下壕。
和食店なのでワインセラーがあるわけでもなく、業務用の冷凍庫と使わなくなった
古い机や椅子が置いてある以外、何もない殺風景な穴蔵だった。
ロケーション的にあまりよくないけど他に場所もないし、照明増やしてとりあえず撮影開始した。
店長が料理を下に運んで来てチェック、撮影、上に引くの流れ。
始めて30分くらい経った頃かな、時々変な音がするのに気づく。
機械音にも聞こえるし、人が「あ~」とか「う~」とか言ってるようにも聞こえる。
” 冷凍庫?”
と思ったけど、発生源が違うし、トーンが途中で変わるのでたぶん違う。
奥の何もないところから微かに聞こえてくる。
” まあいいや。”
とスルーしてパシャパシャ撮ってたら、突然耳元で、
「 あつい。」
って低い男の声がした。
正確には、
「 ヴァツォイ(ぼそっ)。」
みたいな感じ。
なんだなんだと周り見ても、店長と自分以外いない(この時は助手くんいなかった)。
で再開すると、またあ~う~聞こえてくる。
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